第12話謎の助っ人

 白髪の男は結果としてカレン達を助けた。ならばミネスは彼にも矛先を向けるのは道理だろう。


 「貴様何奴よ。」ミネスは鋭い目で男を睨みつける。


 「俺か?俺はレント。双剣のレントなんて呼ばれたりもする。」


 「なるほど。名は聞いたことがある。英雄級の戦士の一人か。六英雄とも言うかな?大剣のレッズ、聖剣のグレス、弓使いゼノ、わらわが会ったことがあるのはそのくらいよ。」


 「へえ。レッズてのは俺の弟弟子でな。あいつ強くなってるかなー?」


 「レッズさんのお知り合いなんですか?」カレンは驚きを隠せない。


 「ああそうさ。ということは君も顔見知りなんだね。まあそれもここを切り抜けてからさ。」


 と言うとレントは真剣な眼差しでミネスに眼光を飛ばす。


 ミネスは諦めたように「赤髪がいないなら良かったんだけどあなたがいても厄介ね。」と言い残し、どこからともなく消えた。


 「レントさん。この度は危ないところを助けていただきありがとうございました。」


 「いいのさ。皆無事だしね。それにしても魔人、ましてや五大魔人ミネスに目をつけられてるってことは秘宝集めをしているのかい?」


 「ええ。まったくその通りです。」ドルスが答える。


 「そうか。じゃあしばらく共に行動しないかい?俺の目的は魔人族領の地図なんだけど。」


 「レントさんがいるなら百人力です!」とカレンは心底安心した様子だった。


 「まだ死ねないもの。」とカレンは一人こぼしていた。








 そのころレッズ達はキャラル島に到着しようとしていた。


 レッズはピンピンだが、クレイツは船酔いでへとへとになっているようだ。


 入島手続きを終え、早速キャラル闘技大会にエントリーした。


 「さて、用も済みましたし、腹ごしらえでもしませんか?」レッズが皆を何気ない様子で誘った。






 レッズ達はとある飲食店に入った。さすが武闘家の集まる街というわけか活気が違う。


 しかし、歴戦の猛者であるレッズやクレイツ達も引けを取らない。


 店の雰囲気を確認しても、堂々と入店した。


 「龍の鱗亭ですか。世界各地にある名店の一つと聞きました。」カミラはワクワクしてそうに見える。


 「ここには絶品グルメがあると聞いて、少しお高いですが、経費も出ますし。」レッズは少しばかりケチなきらいがあるかもしれない。


 「お姉様。僕羊のシチューで。」


 「じゃあ私はワイバーンのステーキにしましょう。」


 「じゃあわたくしめはワニのカレーといきやしょうかね。」クレイツがそう言い、レッズと同じものを頼んだ。


 頼んだ料理が並び、しばらくするとカミラに言い寄る男が現れた。


 「なあ、姉ちゃん。俺と遊ばないかい?お酒ご馳走するよ。」


 それを聞いたカミラは席を立ち、男のいるカウンター席まで付いて行った。


 レッズは簡単にあしらうだろうと思っていたため、意外だったが止めに入ろうとすると、


 「レッズさん。心配ないよ。」とレーンバルが赤髪の剣士に言う。


 もうしばらくすると男の方から悲鳴が上がった。


 「姉ちゃん。もう勘弁してくれ。お代が払えなくなっちまう。」


 カミラは男の金で飲み食いしまくるとこう言った。


 「あら。私はお高いのよ。」


 カミラのたくましさにレッズは呆れて笑ったのだった。





 店を出るころには斜陽が差し込んでいた。


 一行はグレスの指定した宿に向かう。


 それにしてもだ。レッズはカミラの食いっぷり、飲みっぷりには驚かされたが、レーンバルはいつも彼女はカモを見つけてはああいう展開になると教えてくれた。


 女とは怖い生き物だとレッズは思った。


 カミラが何か言いたげにレッズの方をじろっと見るが赤い剣士は気づかないふりをする。


 そうこうしているうちに目的地に着いた。


 レッズ達は部屋わりに目を疑うことになる。


 「俺とカミラさんが同室!?」


 「ええ。私がそう申請しましたから。」


 レッズとクレイツが呆れたように目を合わせる。


 「いけませんか?」


 カミラはその美しい銀髪を撫でながら上目遣いでレッズにそう言う。


 レッズは思った。これは世の男達を惑わせるわけだと。


 そう嘆願されるとレッズも弱く最後には承諾してしまった。


 クレイツなんて直ぐ説得されてちょろいものだとカミラに思わせたのは内緒である。


 





 クレイツとレーンバルは同室なので一緒に風呂に入った。


 なんとこの温泉。混浴らしい。


 クレイツはドキドキしていた。レーンバルは相変わらず眠そうだ。


 さあ明日に備えて、疲れを癒すか。とレッズも温泉に入ってきた。


 最後にカミラがやってくる。


 ちなみに明日から始まる大会にはレッズとクレイツが参加する。


 カミラとレーンバルはあくまでレッズ達の護衛と大会に怪しいものが参加していないか監視、といったところだ。


 湯に十分浸かり、体を洗い始めたレッズはまたしてもカミラに惑わされる。


 「レッズさん。お背中お流しします。」


 クレイツはその光景に目を剥いた。


 レッズも動揺している。


 そして、何食わぬ顔でカミラはレッズの背中を流し始めた。


 タオル越しでも伝わるくらいに豊満な体型をしているカミラを見ているとクレイツなんて鼻血が出そうなほどだ。


 そんな中、一人浴場に入ってくるものがいた。


 見た感じ、武闘家という感じだが、傷だらけの身体に豊満な胸を持っている。


 クレイツは女性に話しかける。


 「もしかしてお姉さんも闘技大会に出られるんで?」


 女性は答える。


 「ええ、まあね。あんたもそうっぽいってあんた結構可愛い顔してるじゃん?どうこの後私と晩酌でも。」


 クレイツは初めての逆ナンに会い驚いていた。そして、返事はもちろん。


 「俺なんぞで良ければ喜んで。」


 「決まりね。301号室に後でいらっしゃい。」 


 レーンバルはいつも通り眠そうだった。





 レッズ達は明日に備えて早めに電気を消すことにした。


 「レッズさん。私ね。昔から人の運命が見えることがあるの。」


 「それはもしかして未来視の類では?かなりのレアものですよ。」レッズはそう問う。


 「そんないいものじゃありませんよ。この能力のおかげで昔から苦労してるんですから。」少しカミラがむくれた。


 しまった。機嫌を損ねてしまったと思ったレッズは本題に入ろうとする。


 「もしかして、俺と同室にされた理由って。」


 「ええ、一つはレッズさんを籠絡するため。もう一つは申し上げにくいですけど...」


 「何でしょうか?」


 「このままだとあなたの親しい人が死にます。」








 クレイツは酔っていたが、冷静だった。


 女性と楽しく呑んでいたが、情報収集も怠らない。


 「お姉さんはこの島に詳しかったんですよね?何かこいつ怪しいなっていう大会参加者はいましたか?」


 「そうさねえ。見慣れない顔ならあったかもね。桃色の髪をした女戦士なんだけどね。ここ最近現れてまだ無敗を喫しているらしいよ。」


 クレイツは心にメモする。


 「後、スポンサー枠でゼルクスとかいう奴もトーナメントの途中から参加してくるね。」


 一応注意だな。


 「それくらいだね。常連の私でも知らない顔は。」


 しかし、その正体不明の存在がレッズ達の命運をわける。


 

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