第13話大会初日

 さあ大会当日になった。


 レッズの初戦は簡単なものだった。と言ってもレッズは世界最強クラスの戦士であるのでそうなるのも必然だが。


 クレイツの方もレッズに鍛え上げられただけあって圧勝という形に終わる。


 初戦はこんな感じかと二人とも感覚を掴んだ。


 ちなみにカミラ、レーンバル、昨夜の女性ベネットは観覧席で応援していた。


 なんかカミラとベネットは仲良くなっている。


 大会初日を終え、レッズ達はまた宿に戻った。


 レッズがカミラから聞いた内容はこうだ。


 もう時期新たな厄災が降ってくる。レッズは選択を間違えれば大切な者を失うことになるという内容だった。


 それを聞いてからどことなくカミラと気まずく、レッズは次の日も試合だというのに、夜道を散歩していた。


 レッズの大切な人といっても、キーナだけではない。


 クレイツや兄弟子レント、そのほかに憎たらしいがグレスもレッズはその中に入れているほどだった。


 レッズはまた恐怖を覚えている。


 大切な者をまた失ってしまうのかどうなのか。


 レッズは金髪の少女と一夜を共にしたこれまた大切な女性を頭に浮かべていたのだった。


 






 大会2日目になる。


 今度もレッズは楽勝と言っていいほど快勝を遂げるが心は満たされない。


 しかし、クレイツの方が苦戦していた。


 事前にクレイツから桃色の髪の女戦士のことは小耳に挟んでいたが、クレイツなら大丈夫だと思い、棄権させなかった。


 レッズはクレイツの強さと彼自身を信じている。


 だから、この時は思いもよらなかった。予想を斜め上に行く展開が赤髪の戦士達に待ち受けているのだった。


 








 その頃、カレン達は魔人族の地図を探すレントと共にグレスの指示を仰ぎながら任務を遂行しているのだった。


 レースト共和国北西にあるゲレトン神殿にカレン達は到着する。


 そして、神殿はというと。


 破壊されていた。魔人族に先を越されたのだ。


 さらに、カレン達を驚愕させる事実を知ることになる。


 レントは神殿だったものから発せられるエネルギーを見逃さなかった。


 レントは神殿の残骸からとある羽を見つける。


 「もしかすると、人類の脅威は魔人族だけではないかもな。」


 「レントさんそれって一体。」






 クレイツは桃髪の女に苦戦を強いられていた。


 「ほう。こんなものか。赤髪の戦士の弟子というのも。」


 「姉ちゃん。あんまり俺と風凪を舐めるのは得策じゃないぜ。」


 そして、クレイツは愛刀を抜く。クレイツのサーベルナイフのような愛刀風凪に王宮剣術は相性抜群だ。


 今度こそ容赦なくクレイツは桃髪の選手に猛攻する。突いて捌いて、両者拮抗した強さだ。


 「ほうやるじゃないか。だが、私の目的は貴様の命。本気を出すぞ。」


 「姉ちゃんには俺はやれねえよ。」


 すると、フードを被った女戦士に違和感をレッズは思えた。


 なぜ、フードを被り、顔を隠す?まさか!


 「クレイツー!!!!!!!!」


 レッズは観客席から大声で叫んだ。カミラだけは動揺していなかったが。


 レッズの予想はある程度的中する。


 女戦士は持ち前の槍を天に構え、唱え始めた。


 「ああ天高き、その姿さえ知られざるものよ。今ここにその紛うことなき姿を見せよ。」


 そこに現れたのは、ペガサスロードだ。


 大天使にしか許されない聖獣を召喚したのだ。


 そして、「蹂躙せよ。」


 ペガサスロードの砲撃がクレイツを襲い、クレイツはそれを間一発避ける。


 しかし、観客席が大きく被害を受けた。


 「クレイツ逃げろーー!!!!!!!」


 レッズの判断は早かった。


 「賢明な判断をするのだな大剣のレッズ。だがもういいだろう。」


 そして、桃髪の戦士は言う。「私は天使族の使いだ。警告をする。魔人王レーネストの復活も棒読みの段階。しかし、我らは魔人族に与するわけではない。といっても我らもお前達人類の味方とはなるまい。天魔対戦の後の我々の扱いは知っておろうか?魔人族と結託せずとも、貴様らの行い次第では滅ぼすことも厭わん。それではな。」


 翼を生やした天使は天高くその姿をくらました。


 「クレイツ!無事か!」


 「ええ。レッズさん。なんとか。しかし、厄介な勢力が増えましたね。」


 「ああ、まさか生き残りがいたなんて。」


 レッズはまた頭を抱えていたのだった。


 レーンバルが少し不安そうな目で見ている。仕方のないことだ。まだ彼は幼いと言えるかもしれないから。


 カミラは「大丈夫よ。レーンバル。お姉ちゃん達がいるから。」


 その言葉にレーンバルは頷き、いつもの眠そうな目に戻るのだった。






 レントは語る。「大昔の天魔対戦に敗れ、地上に堕ちた天使族は人間の奴隷となるものもいたらしい。それくらい虐げられることになったんだ。そして、天の加護を失いやがて絶滅したとされたんだけどね。やはり、復活を遂げて人間に恨みを持っている。だが、本当に恐ろしいのは、」


 「恐ろしいのは?」


 「いや、今は目の前の敵に集中だ。北の奥の奥に大きな魔人族領土がある。俺はいずれレッズ達や仲間を連れて乗りこむつもりだった。だけど最後の秘宝と鍵は恐らくもう魔人族の手にある可能性がある。」


 「では、どうするのですか?」


 「遅かれ早かれ魔人族は人間の領土に侵攻してくるだろう。その時を迎え撃つほかない。後は、魔人の始祖である魔人王を倒さなくては。」


 「なるほど。」


 カレンとドルスは考え込む。


 そして、レントは続ける。「だけど、この神殿を壊したのは天使族の可能性が高い、天使族の長に一度俺は会いに行く。交渉に行ってパープルキーを取り戻すつもりだ。」


 「でも交渉材料は?」


 「天使族の秘宝。三種の神器は知っているかい?あれは今魔人族に魔素により汚染され、魔人族の伝説の武具として伝わっている。それを取り返すのに協力するんだ。レッズの大剣なんかもその一つなんだけどね。だが、レッズの力は必要不可欠だ。まだ返すわけにはいかないな。」というと、レントは朗らかに笑って見せた。


 レントはさらに続ける。「俺たちがまず最優先にするのは天使族との同盟、そして、赤の秘宝ケレイルフォークスだ。」








 クレイツはレッズが何か不安を抱えている様子で心配していた。


 「あんなレッズさんを見るのは久しぶりだ。


 大会はレッズとクレイツが決勝でぶつかり、なんと、クレイツの勝利に終わった。


 強さならレッズは人間において頂点に置かれる。そんな存在がだ。


 レッズの動揺は計り知れない。チャンピオンベルトを手にしたクレイツは早速帰ることをレッズに促した。


 「キーナちゃんも待ってることでしょうし、帰りましょうレッズさん。」


 「ああ、そうだキーナだ。帰らなくては...」


 スポンサー枠だった男は試合に出ずに棄権したが、何者だったのか。など、レッズは考えを巡らせていた。キーナやカレンを害する存在ではないかなど疑心暗鬼になっている。


 それでもレッズと仲間達の戦いは止まってくれない。

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