第11話カレン・ラセンダム
カレンはかつて浮浪孤児だった。生きるのに苦しく、食べるもの、着るものすら選べない。そして親の顔も知らない。
そんなカレンが住んでいたのはキースター王国王都にひっそりとあるスラム街だった。
ある日カレンは盗みに失敗する。すると、商人たちに捕まり袋叩きにされた。
そんな時彼女を助けた者がいた。
見たところ魔導士か。男はあっという間に殴り掛かってきた男達を雷撃魔法で撃退した。
カレンは噂とその人物をすり合わせて考えた。
この人は12聖魔導士第4席次ユーゼ・ライトニングなのかな。
「ひどい目にあっていたね。立てるかい?」ユーゼはとても親切な印象に思える。
カレンはユーゼに乞う。「私を弟子にしてください!」
幸いカレンの魔力適正はかなりのものだった。
そして、今から3年前にユーゼから独立し、ついに12聖魔導士の席次を埋めた。現在カレンは第9席次、ドルスは第11席次、キーナは第12席次だ。
「へえー。カレンさんも大変な時期があったんですね。レッズさんのファンになったきっかけは何なんですか?」
「そうね。ある時レッズさんの噂を聞いてね。まだ彼が戦士長だった時の話よ。若いのにとんでもない強さの赤い剣士がいるって。それでね。私酒場で酔って仕事の愚痴を言ったりして、泣いていたら、酒場のマスターが一杯のお酒をサービスしてくれたの。でもそれは、たまたま同じ店にいたレッズさんからのって知ったのよ。その時からあの凛々しい横顔を意識していたわ。でも声を掛けそびれちゃったのよね。それから彼の英雄譚を聞くのは楽しみだったわ。」
「むむ。レッズさんも隅に置けない人だったってことが良くわかりました。」とキーナは少し不満そうにでもどこか自慢げにカレンの惚気話を聞いているのだった。
旅行から帰宅に向かう時が来た。各々荷物の整理は済ませている。
「私とドルスはまだ任務があるので、ここでレッズさんたちとはお別れです。」
「皆さん。道中お気をつけて。」ドルスだ。
「はい。カレンさん。ドルスさん。今回は本当に楽しかったです。」レッズは笑顔でそう言う。
「また行きましょうね。レッズさん。キーナちゃん。」カレンも優しい笑みを浮かべて別れた。
「はい!」キーナも元気よく返事した。
レッズ、キーナ、クレイツは帰路につく。
しかし、予想もしない展開がカレン達を追い詰める。
それは、レッズ達とカレン達が別れてしばらくのことだった。
カレンは異変に気づく。
「誰かいるわ。気をつけて。」
二人は果たしてどうなるのか。
カレン達に危機が迫っていることも露知らず。レッズ達はロワネイアに着こうとしている。
レッズにとってゼネスの発言は気がかりではある。しかし、キーナやカレン達のおかげで気分は晴れていた。
現在カレンとドルスは七賢人達の命に従いグリス王国に向かうとレッズ達は聞かされていた。どうやらグリスが派閥同士で争っていて、それをなだめに行くのが主な任務らしいが。
12聖魔導士は国家間にも顔が効く。いくらグリスの王国貴族でも無下にはできないだろう。
しかし、レッズ達はカレン達に忍び寄る暗い影の存在を知らないのであった。
レッズとクレイツはロワネイアに到着するとまずグレスと顔を合わせた。案の定次のお仕事だ。
「帰ってきたようだな。喜べ、また秘宝に関する情報が出た。」
「おおそうか。」レッズは特別驚く様子でもなく頷いた。
「なんだか。貴様の反応が薄いが....まあいい。白の秘宝カーマランクス。」
「なるほどな。白の秘宝か。」
「ああ。ここキースターの西にあるケレス海のさらに奥にあるキャラル島の闘技大会の優勝賞品にカーマランクスが埋めこまれているそうだ。俗にいうチャンピオンベルトだな。まあつまりあれだ。あれは世界中の猛者中の猛者が集まる大会だ。だからちょっと世界一になってこい。」
グレスの言葉にクレイツが爆笑する。
「ちょちょっと戦士長それはあんまりにも可笑しいですよ。あはははは!」
グレスはちょっと頬を赤らめる。これが俗に言うギャップ萌えというやつだろうか。レッズは少し嫉妬した。だって、女子人気高いし、顔だって悪くないし。
そんなことはさておき最後に「クレイツ。貴様も同伴しろ。」と言われ、クレイツはげっそりしていたのだが。
そんなこんなで今回の旅はレッズの護衛にクレイツ、そして、12聖魔導士のカミラ、さらに同じく、レーンバルが同伴することになった。
ちなみにカミラは第3席次で超が付くほど一流の魔導士なのだそうだ。レーンバルはキーナより若い天才肌で第6席次を務める。
さあ準備は万端というところである。
キースターの北にある北大陸の西端まで行き、キャラル島行きの船に乗る方法もあるが今回はキースターから出る船で向かう。
一行は船の中で自己紹介をすることになった。
「レッズ・ガイアです。訳あってグレスという男の助手みたいなことをやってます。」
「クレイツです。キースターに勤める騎士であります。こっちのレッズさんとは長い付き合いです。よろしく。」
カミラは少年であるレーンバルに目配せをした。14くらいに見える少年は少し眠そうにしかし、丁寧に挨拶する。
「12聖魔導士が1人レーンバル・ユナイトです。以後お見知り置きを。」なんとも綺麗な礼だ。
そしてもう見た目がそう言ってるというか出るとこが出て綺麗なお姉さんも挨拶する。
「同じくカミラ・ユナイトです。こちらのレーンバルは歳の離れた弟です。可愛がってあげてくださいね。あと、私も、ふふ冗談ですよ。」
それは優雅でありとても個性的な挨拶であった。
クレイツは鼻の下を少し伸ばしたが、カミラの視線はレッズの方に向いていて、クレイツは悔しがったのだった。
一方カレン達の方の状況は芳しくなかった。何と相手は超厄災級と言われる五大魔人ミネスと相対していたのだ。
カレン達にはレッズ級の理不尽な個が欠けている。状況は悪い。
「わざわざ赤髪のレッズがいないところを狙って良かったわ。」
「なるほど。」カレンは自分たちを確実に仕留めに来ていることを確信した。
「出でよダークデーモン」
流石は五大魔人。簡単にとんでもないものを出してくる。
カレンとドルスは合同魔法を行なった。
「出でよミカエル!!」
これが今のカレンとドルスにとって最大の対抗手段だ。
しかし、そう甘くはなかった。
ダークデーモンをミネスはもう一体召喚した。
「魔力量が馬鹿げている!」ドルスは歯軋りする。
ダークデーモン二体がミカエルを剣戟で追い詰める。じわじわ、じわじわと。
ミカエルは敗れ、天界に消えた。
ダークデーモンがそれぞれ2人を襲う。防御が間に合わない。まずい!だがそのとき。
ダークデーモンの前に双剣の片割れがそれぞれ地面に突き刺さったのだった。
「おやあ、なんかすごいことになってるな。で、君らは12聖魔導士かなんかかい?」
白髪の男がカレン達の後ろに音もなく立っていた。
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