第10話決着

 ゼネスにレッズの全力の攻撃は命中した。ゼネスは最期に問う。


 「あなた。一体その剣をどこで手に入れたのです。」


 今にも死に行きそうな顔だ。


 「王国戦士長になった時王から授かった。」


 「そうでしたか。」


 その時。レッズの左目にあの紋章が半分欠けた状態で宿った。そして、すぐに消えた。


 「まさか。はは。そういうことでしたか。道理で強いわけですよ。」


 レッズにはその言葉の意味がいまひとつわからなかった。


 「貴様何か知っているのか?」


 「お教えする義務はありません。ふふ。ではさようならレッズ。」


 と言うとゼネスは朽ち果てた。


 そこからはそれ程難しくなかった。


 クレイツは王国戦士長候補になるほどでグレスに次いだ実力者だ。手負いだったゲーチスにトドメの一撃を放つ。


 「この名刀風凪で決める!おりゃあああああああああ!」


 それは、ゲーチスを盾に引き裂いた。


 「馬鹿な!赤髪でもない相手に遅れを取るなど!」


 ゲーチスは無残にも灰となった。


 後は、カレン達だ。


 カレン達も決め手となる攻撃を放っていた。


 後はトドメだ。


 「ドルス!合同魔法よ。」


 「了解です。」


 二人は唱える。ダークデーモンに向かって。


 「それは天の恵み。それは大地の囁き。それは我の前にきたる。今ここに顕現せよ。天使長ミカエル!」


 天使が爆誕した。

 

 天使の剣がダークデーモンを何度も切り裂き、細切れにした。


 「これは驚いた。ミカエルを召喚するとは。」クレイツの声だ。


 しかし、ダークデーモンが抵抗する。


 ダークデーモンは暗黒の魔剣を取り出し、ミカエルに斬りかかった。


 対してミカエルは聖剣を取り出す。


 常人なら目に見えない斬撃の嵐となったが、制したのは、


 ミカエルだった。こうして、今回の戦いは幕を引いた。


 しかし、この戦いでレッズは自分のルーツに疑問を抱くことになるのであった。


 






 ゲーチスの懐から黄の秘宝を回収できた。


 一行はロワネイアに戻ることとなり、今回の任務は成功といった形だ。


 クレイツが腕を上げていたこともあり、魔人族の脅威を今回はなんとか防いだ。


 だがしかし、ゼネスを倒せたからといって油断は禁物だ。


 本当はまだゼネスに遺恨が残っているが、もうこの世にいないのではどうしようもなかった。


 






 キーナはレッズの帰りをまだかとまだかとずっと楽しみにしていた。


 レッズならきっと秘宝を持って帰ってくる。そう信じて。


 そして、レッズ達が帰ってきて彼は期待に応えてくれたのだった。


 しかし、誤算がある。


 妙にレッズとカレンの距離が近い気がするのだ。


 キーナは女の勘で、「あの二人出来てるかも...。」と思うのだった。そしてその予感は知っての通り的中していた。


 他にも気になることがある。


 レッズはゼネスを倒したと言っていた。その際にゼネスと話した内容をキーナにだけレッズは聞かせていたのだ。それはキーナにとって良くない可能性が頭をよぎるのだったが、それは一旦心の隅に置いておくことにした。


 







 レッズはグレスに報告に向かった。


 「援軍に助けられた。ありがとなグレス。後、秘宝は手に入ったし、ゼネス並びにゲーチスという魔人の討伐に成功した。」


 「援軍は貴様の役に立ったか。ならいい。秘宝のことは聞いている。あと例の魔人。倒せたのだな。」


 「ああ。何とかな。この剣もなんか特別な力があるのかもな。」


 そうレッズが言うと、グレスが一瞬だけ目を細めた気がしたが、レッズは気にしないことにした。


 レッズはグレスから報奨金をいつものようにもらった。


 「今のところ他の秘宝や鍵の在りかはわかっていない。しばらくは休みだ。好きに過ごせ。」


 「ああ。好きにさせてもらうさ。」とレッズは後ろ向きで手を振り去っていった。


 「あの剣やはり...。」グレスにとっての懸念が一つ増えていたのだった。






 しばらく暇をもらったので旅行にでも行こうかという話になった。それをどこからか聞きつけたのか、キーナだけでなくカレンやクレイツまでも参加したいと言い出した。


 キーナは少し不満そうだったが、レッズが宥めたので仕方なく承諾していた。そこにドルスも加わり、大所帯での移動になった。


 レッズ達の家があるラビリントから南西に位置するビッスという温泉街がある。今回の目的地はそこになった。


 ビッスまでは馬車で移動した。早朝に出発したので夜には着くだろう。


 ビッスに着くまでにロレサーヌという街に寄った。ロレサーヌは酒の名産地なので、夜のために買いためておいた。


 そして、一行はやっとビッスにたどり着いた。


 あらかじめ予約しておいた宿でさっそく温泉に浸かることにしよう。そう思い、男性陣と女性陣は二手に分かれた。


 女性陣の方の空気はあまり良いとは言えなかった。キーナがカレンにこう問う。


 「カレンさん。レッズさんに気がありますよね?」


 「どうしたの急に。」としかし、まんざらでもない様子だ。


 「とぼけるなんて...私にはわかるんです。ごまかせませんよ!」


 「はあ、そうね。それは違ってないわ。」キーナがしつこく迫るのでカレンは折れた。


 「確かに。私はレッズさんのことを慕っているわ。でもね、彼にはもう心の奥にある人がいるかもしれない。そう考えると少し怖いわね。」カレンはそれでも微笑んで見せた。


 「レッズさんにそんな人が...」キーナは可愛らしく動転していた。


 「それがあなたかもしれないって言ってるのよ。」ぼそっとカレンがこぼした言葉をキーナは聞き逃すのだった。


 一方で、男性陣は盛り上がっていた。


 「誰のナニが一番デカいか!!」いきなり最悪のテーマを酒に酔ったクレイツが掲げた。


 「おれだおれだおれだーーーー!」あの寡黙なドルスまでも暴れ出した。


 レッズが恐る恐る酒の度数を見ると、89%だと!


 そりゃ皆おかしくなっても仕方ないか。


 レッズは一杯いただくとそこからの記憶はなかった。


 そして、しばらく女性陣に冷ややかな目で見られたのだった。






 風呂からあがってすぐに遅めの夕食だった。


 キーナは誰があんな高純度の酒を用意していたか気づいていた。


 おそらく犯人はカレンだろう。レッズに自分を襲わせるためにそこまでするのか大人の女性の怖さとは裏腹に男性陣は無邪気なものに見えた。


 あの屈強の戦士たちが酒の力でこうも素を見ることになるとキーナから出るのは意外という一言だ。


 今回は戦いの疲れを癒すのが最優先だろう。


 五大魔人だけでなく他の魔人たちも復活し始めている。ましてや脅威はそれだけではないかもしれない。


 しかし、今だけは忘れよう。キーナもなんだかんだこのレッズと仲間のいる空間を気に入っている。守るんだ。俺が。私が。


 各々そうこの光景を見て、そう誓うのだった。






 そして、就寝の時間だ。男性と女性で部屋分けされ、カレンとキーナは再び二人きりになった。


 そういえば、カレンさんってどうやって12聖魔導士になったんですか?聞いても大丈夫です?


 「そうね、少し昔話をしましょうか。」











 


 


 





 


 

 

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