53話
ベンチに戻ると小久保さんがいた。
「ナイス、満塁ホームラン」小久保さんが言った。
「一番集中できた打席でした。」僕が言った。
「柊の満塁ホームランで6対6だよ」小久保が言った。
「これで、勝てる可能性が上がりましたね」
「柊、本当に最高のホームランだったよ。
打った瞬間、ベンチみんなが立ち上がってたよ」
「打った球を覚えていないんです。ボールが来たので、勝手に体が動いて
フルスイングしたような感覚なんです」僕が言った。
「それはすごいな。なにか覚醒したんじゃないか。柊が打った球は
ストレートだよ」小久保さんが言った。
「打席に立った時、2軍にいたときに小久保さんが助言をしたことを思い出して
打席にたったんです。『柊はバッティングセンスがあるから気楽に構えろ』って助言です」
「ああ、そんなことを言った覚えがあるな。お前が2軍で打率が1割台になって打ててない時に、硬くなってたから言ったんだ」
「そのおかげで、力まずに振ることができたんだと思います」僕が言った。
「あの時助言しておいてよかったわ」小久保が言った。
6対6の同点で
5回裏
1アウトランナー無しで
8番バッターの黒岡がショートゴロで倒れて
9番バッターの早坂が三振で
3アウトチェンジ
6回表、
守備になったので、
僕はショートの守備につく。
ピッチャーは早坂さん。
福岡チーターズの攻撃
2番足立からの打順
足立が左打席に入る。
初球、アウトコースのスプリットを
流し打ちした。
打球は3塁ベースの方向に強い打球がゴロで転がる。
サードの橋本さんが飛び込んでキャッチした後、
即座に体を起こして1塁に投げてアウト
ファインプレーがでた。
その後は凡退で
3アウトチェンジとなる。
6回、7回、8回は両チーム点が入らずに
リリーフ陣が持ちこたえる。
回は9回に入って、時計も9時を回っている。
観客は帰らずに試合の行方を見るようだ。
9回表、福岡チーターズの攻撃
4番秋元からの打順
右打席に秋元が入る。
ピッチャーは、抑えの守護神 横山
初球、ストレート155kmを投げた。
バッターの秋山は見逃してストライク
2球目、インコースにツーシームを投げた
それも見逃してストライク
2ストライクから
2球ともストレートがボール球となって
2ボール2ストライク
膝下のチェンジアップをバッターの秋元が
振ろうとするが、球が遅くタイミングがずれる
秋元がバットを振るのを遅らせてなんとかボールを当てる。
打球はショートにボテボテのゴロで転がった。
僕はショートを守っていて
深い位置で守っていたため、急いで前に行ってボールを
取ろうと足を前に動かすが、サードの橋本さんが走ってボールを取って
ファーストでアウトになった。
僕は助かったと思い
「ナイス、守備です」橋本さんに声をかける
「あの打球だったらサード取れるから」橋本さんがいった。
もし、橋本さんが取ってくれてなかったら
僕は深い位置で守っていたため、急いで前に出てボールを取ってファーストに投げていてもセーフになっただろう。
1アウトランナー無しで
5番 森野
左打席に入る。
ピッチャーの早坂が1球目を投げた。
チェンジアップを打って打球はセンター方向にフライになる。
センターの佐伯さんがボールを取って
アウトとなる。
2アウトランナー無しで
6番近岡が、チェンジアップを空振り三振で
横山が福岡チーターズの打者を3者凡退に抑えた。
Side 横浜の観客席
「9回か。今日は勝てるかな」会社員の緒方が言った。
「同点で9回か、せっかく新人の柊って選手が満塁ホームラン打ったのに負けたんじゃかわいそうだから、ここでサヨナラを決めてほしい」会社の同僚である田宮が言った。
「横浜の先発ピッチャーの恩田が5回6失点か、突然、制球が乱れて
フォアボールを出し始めたからね」緒方が言った。
「相手のピッチャー池崎が結構横浜打線抑えていたけど
5回裏に捕まっちゃったよな」田宮が言った。
「6対2でリードしてて1アウト満塁だったら先発のピッチャー池崎は変えて正解だったと思うけど。中継ぎのサウスポーの坂梨に変えてまさか、柊にホームラン打たれるとは思わなかっただろうな」緒方が言った。
「安藤が1軍で頑張ってるし、今年のルーキーは結構いいんじゃないか」田宮が言った。
「柊って選手そんなに話題になってなかったよな。横浜ゴールデンウルフズは去年のドラフト会議で外れ1位の安藤がイケメンで話題になっていたよね。」緒方が言った。
「安藤って大学野球で日本大学野球選手権で優勝していたよな。」
「なんで外れ1位なんだろうね」
「この回、3番橋本からの攻撃か」
「一発打ってほしいよな。」
9回裏が始まり。
3番、橋本からの打順
ピッチャーは伊達
福岡チーターズの抑えである。
橋本が左打席に立つ。
初球、インコースのストレートをバッターの橋本がカットしてファウル。
2球目、アウトローのスライダー橋本が打った。
打球はセカンドゴロでアウトとなる。
「橋本だめだったか」田宮が言った。
「次は、4番の高見だから1発あるよ」緒方が言った。
「ホームラン、ホームラン高見」田宮が言った。
「僕たち、1塁側の席で見てるけど、外野席の応援すごいよね」緒方が言った。
「あそこに入る勇気はないな」田宮が言った。
4番高見が右打席に入る。
初球、アウトコースのストレート151kmを見逃してストライク
1ストライクで
2球目、スライダーをインローに投げる
高見は腕をたたんで打った。
打球はレフトに上がるが、飛距離はでずに
レフト近岡が取ってレフトフライ。
2アウトランナー無しとなる。
「もう2アウトか。この回は点取れないか」田宮が言う。
「松田って今年ホームラン5本だったよね」緒方が言う。
「ここでホームラン打ってくれたらいいんだけど」田宮が言う。
5番 松田が右打席に入る。
ピッチャーは変わらず伊達
初球、150kmのストレートを空振りする。
そこから、ボール球のフォークボールを見逃して
1ボール1ストライク
3球目、高めに外れて
2ボール1ストライク
4球目のスライダーをカットしてファウル
2ボール2ストライクとなった。
5球目真ん中高めのボール球を松田がフルスイングした。
打球は、レフト方向に大きく飛んだ。
「松田打った。行け行け行け」田宮が立ち上がって言う。
「入った。ホームランだ。サヨナラホームランだよ」緒方が言った。
緒方は、田宮と一緒になってハイタッチをした。
「今年の横浜ゴールデンウルフズは強いぞ」田宮が言った。
「そうだね。逆転勝ちが増えてきてる」緒方が言った。
「それにしても、今日の試合は面白かったんな」
「満塁ホームランとサヨナラホームランが見れたからね」
「松田良く打ったよ。あんなボール球を振って」
「普通、見逃すよね」緒方が言った。
「また、球場に行こうかな」田宮がいた。
「うん、また行こう」
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