同期と富永さんと話す。

5月20日の休日。

自主練習をした。

屋内練習場で

ストレッチを入念にやって、

素振りをする。

午前中は素振りをずっとしていた。

昼ご飯を食べようと屋内練習場を出ようとすると

入れ違いに同期のドラフト6位の中条 まさる、が屋内練習場に入ってきた。


「おはよう柊、朝から練習してて偉いね」中条が言った。

「そっちも今から練習するの」僕が言った。

「そうなんだよ、最近素振りを増やして今は打撃重視で練習してるんだ」

「僕は今から昼ごはんだから、頑張って」僕が言った。

「昼ごはん終わったらちょっと打撃練習付き合ってくれない」中条が言った。

「いいよ」僕が言った。


食堂で料理を食べた後

室内練習場に行って、中条まさるの素振りを見ていた。

「別に普通だね。トスバッティングしよう」僕が言った。

「わかった」

僕が中条にトスをして、中条がボールを打つ。

しっかり腰を使って打てていた。

20分ぐらいやって休憩をした。

「自分のバッティングどうだった。」中条が聞いてくる。

「気になる点は特になかったけど」僕が言った。

「そっか」中条が言った。


中条は打撃の成績が落ちていて、悩んでいるのだろう。

「池田コーチとかに聞いてみたら、あのコーチ、アドバイス的確だから」僕が言った。

「わかったそうしてみる」中条が言った。

「休日誰かと遊ばないの」僕が聞いてみる。

「友達がみんな社会人なんだよね。最近会っていない」

「会っといたほうがいいよ。」僕が言った。

「来週会うことにする」中条が言った。

「昨日、村上と横浜ゴールデンウルフズの1軍の試合を見に行ったんだ。」僕が言った。

「そうなの、今、横浜ゴールデンウルフズ何位なんだろう」中条が言った。

「それで、観に行くと1塁側の観客席が横浜の青一色だったんだ。すごかったよ」

「最近のプロ野球って人気が出てるみたいだからね」

「中条も一度、試合を観に行った方がいいぞ、モチベーションになるから」

「そうだね。観に行ってみるよ」


そのあと、2人でバッティング練習をして別れた。

室内練習場にいると今度は、富永さんがやってきた。

2軍にいた時に練習の仕方を教わった人で

基本セカンドを守っている。

2軍の在籍期間が長い。

「練習熱心だね、柊」富永さんが言った。

「体、動かしたくなってちょっと練習していました。」僕が言う。

「ちょっと、守備練習してみる?」

「いいんですか。」

「ノック打つから取ってね」

富永さんがバットをもってくる。

僕はグローブをもって離れた場所で構える。

富永さんがバットでボールを打ち、僕が取る。

投げることはしないで、そこらへんに転がす。

だいたい10球ぐらい球を取った後

厳しい打球が来た。横っ飛びをして取る

「おお、うまいじゃん柊」富永さんに言われた。

つぎつぎと僕が届くか届かないかの位置にボールを打ち

僕はだんだん疲れてきて足が上がらなくなった。

最後の1球を取ると僕は疲れて座り込んだ。

「よく取ったよ。柊。柊はやっぱり守備が上手い」富永が言った。

「そうですか」僕が言った。

「ショートって守備能力の方が求められるんだ、もちろんバッティングもいいに越したことはないんだけどね」富永が言った。

「守備は確かに、自分上手いかもしれないですけど。自分の感覚的にバッティングで

プロの世界に入ってきたと思うんで」僕が言った。

「柊はバッティングセンスもあるかもしれないけど、やっぱり守備が堅実な守備してるね」

「あまりエラーはしない方ですけど」

「もっと守備を鍛えたら、守備要員で1軍に上がれるかもよ。けど、柊はバッティングを伸ばした方がいいかもね」

「じゃあ、守備もがんばりますし、バッティングもがんばります」僕が言った。

「うん、頑張って」富永さんが言った。

「チョコあるますけどいります。」

「食べるたべる」

村上と観戦に行ったとき、食べるのを忘れていて持っていたのだった。

「たぶん、柊は一度1軍に上がっても大丈夫だと思うよ」富永さんが言った。

「それはどうしてですか」僕は疑問に思って聞いた。

「自分は1軍に上がったとき、守備のミスで失点したことがあるんだ

そっから調子がくるって打撃も打てなくなって2軍に戻された。

いまでも、後悔してるよ。チャンスを逃したってね」

「そうなんですね。」

「1軍で試合すると緊張感が違うんだ。柊は1軍に上がった時は普通にプレーすればいい」

「わかりました。」

富永さんは苦労して今、2軍にいるんだろうなと思った。

僕はまだ、2軍で出場できていることに満足してはいけないなと思った。

1軍に上がることをめざして、試合に臨まないとなと改めて思った。

それに安藤に先に越されているのが悔しい。

守備も打撃も頑張ろうと思った。


富永さんが用事があると屋内練習場を出た後

同期のドラフト7位の住田と会った。

カート大会で最終的に最下位になった人だ。

住田は倉田と仲がよく、2軍の練習でもよくバッテリーを組んでいる。

「柊は村上といないの?」住田は言った。

「今日、村上は出かけてる」僕は言った。

「いつも柊と村上ってくっついてるから仲いいなと思って」

「まあね、こないだ横浜スタジアムに行って観戦してきたんだ」

「へぇ、横浜ゴールデンウルフズはどうだった」住田が言った。

「中日キャットファイアーズに勝ったんだけどその内容がすごいんだよ」僕が言った。

「その内容って言うのは」住田が言った。

「4回ぐらいに高見さんが2ランホームランを打った後、

6回裏に安藤がタイムリー2ベースヒットを打って

3点とって決勝打」僕が言った。

「また、安藤が打ったんだ。しかも、前回安藤が初打席初ホームラン打った時も

高見さんも活躍してたよね」住田が言った。

「だよね。高見さんと安藤がお立ち台に上がってたよ。」僕が言った。

「安藤まだ1軍で頑張ってるんだもんな。もうすぐ1軍に行って3週間たつんじゃない。」住田が言った。

「もう安藤は遠くに行ってしまったのかもな」僕が言った。

「そろそろ、2軍で登板したいんだけど、まだ決まってないみたい」住田が言った。

「同期の外村はちゃっかり2軍で初登板果たしてたよ」

「まだ1年目だから、焦らないけど。早めに登板したい」

「倉田とバッテリー組むなら、倉田が実践で使えるようになるまで待たないとね」

「そっちの問題もあったのか」住田が落胆する。

「まあ、安藤が異常すぎるんだ。気楽にやろう」僕が言った。

住田と話した後、ぼくは食堂に行った。


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