第22話

次の日4月16日の試合

代打で出場となった。

8回0アウト1塁の場面。

相手ピッチャーは、左投げのサウスポー

僕は、右打席に立って、昨日した素振りを思い出し、気合を入れる。

左投手の左手から投げられたボールは、変化しながら、キャッチャーミットにおさまった。

見逃しのストライクである。

それから、ストライクとボールが3つ先行して、

3ボール2ストライク、

僕は、相手のスライダーに狙いを定める。

5球目、ストレートが来たと思いスイングするが、ボールが自分に近づいて行くうちに、

「しまった。」と思ったが遅かった。ボールはバットの下を通過した。

落ちるフォークボールに僕は体勢を崩されて、三振に倒れた。

打席に戻るときに、「まあ、次頑張れよ」と小久保さんが言った。

「はい」と僕は返事をする。

試合は、終わって、3対2で勝ったが。自分に精一杯で喜べなかった。


次の日も、その次の日も代打で出されたが打てなかった。4月18日

寮で、休憩していると。電話が鳴った。

「はいもしもし」と僕は言った。

「柊くん。前村だよ、明日、暇」と前村さんが言った。

「うん、空いているけど。」

「ボウリング行こうよ」

「いいよ」と僕は言った。

「柊くん、最近の調子はどうなの」

「全然だめだよ、ヒットが打てなくなって」

「思い詰めたらだめだよ、きっと大丈夫だから」

「うん、心配してくれてありがとう」

「明日楽しみにしているから。」

電話を切って、自分の情けなさに悔しさがでる。

前村さんに心配かけてしまった。

ほんとだったら、ヒットをたくさん打って、結構活躍しているんだって言えるのに

僕は、ベットに寝転がって、ねることにした 。



4月19日、前村さんとボウリングデートである。

横浜の近くのボウリング場で待ち合わせ。

僕は電車で向かっている途中、「プロ野球選手ですよね」と横浜ゴールデンウルフズのファンに声かけられるかと期待していたが、全く声をかけられなかった。

まあ、2軍だし、誰も知らないですよね。とそう思った。

ボウリング場につくと、前村さんが白いワンピース姿で待っていた。

「柊さん、おはよう、今日は寝れた」と前村さんが言った。

「うん、寝れたよ」と僕は答える。

「じゃあ、ボウリングしよう」

「おけ」

僕達は受付をして、25番のレールに移動した。

靴はレンタルシューズである。


「柊さん手加減してよ、力強いんだから」

「手加減したら面白くなくなるよ」

「じゃあ、ほどほどで」

前村さんが、最初に投げた。

9kgのおもりのボウリングが、まっすぐにすすんで、ピンを8本たおした。

2投目は、左側に集まったピンをうまくカーブさせて倒した。

スペアである。

「おお、前村さん、うまいじゃん」

「でしょ、柊さんこのゲームで負けたら昼ごはんおごりで。」

「まあ、いいけど」と僕は言った。

僕はボウリングに自信があった。なんて言ってもプロ野球選手なので、肩が強い

1投目を投げる。うまくカーブがかかったボールは、レーンの右端から、中央へと移動して、ストライクを取った。時速27kmのボールに、自分でも速いなと思った。

「うわ、ずるだよずる。球速で、ストライクとったようなもんじゃん」と前村さんが言う。

「球速も実力のうちだからね」と僕は言う。


2フレーム目、前村さんは気合を入れて投げた。

少しカーブを掛けたボールはピンの中央にあたって、9本のピンを倒した。

「あー惜しかった。」と前村さんは言う

「スペア狙えるよ」と僕は言った。

2投目、右端のピンを、シュート回転のボールで倒した。

スペアである。

「おお、おめでとう」と僕は言った。

「なんか、今日調子いいかも」と前村さんは言った。


2フレーム目の2番手の僕は、

1投目と同じように投げたが、カーブしすぎて、左側に行ってしまい、

ピンが、4本しか倒せなかった。

2投目も投げたが、ピンに当たらず間を抜けた。

ここから、僕は調子をおとしていき、前村さんは登り調子で、

スコア180対、135で負けた。

「やったー、柊さんに勝った。今日の昼飯おごりね」と前村さんはよころんでいた。」

「まあ、昼代だったらだすよ」と僕は言った。

「プロ野球選手が女の子に負けて恥ずかしくないんですか」

「ボウリング素人だから、」

「私、ボウリング得意なんです。」

「180は、すごいよ。レベルが高い」と僕は言う。

「でしょでしょ、私すごいんだから」


昼飯は、僕のおごりとなって、ハンバーガーを2人で食べた。

前村さんのワンピース姿可愛いなと見とれていたら

「柊さん、何にやにやしているんですか。ちょっとにやにやした顔しないでください」と前村さんに言われた。

「いや、ごめんごめん、見とれちゃって」

「もう、しっかりしてください」

僕は、1個目のハンバーガーを食べ終えた。

「最近、野球漬けだったから、誘ってくれてうれしいよ」

「私も柊さんと一緒に入れて楽しいです」

「最近、全然打てないからリフレッシュになったよ」

「私、野球のことは分からないけど、柊さんなら大丈夫な気がします」

「どうして」

「だって、かっこいいから」と前村さんは言った。

僕は、びっくりして顔が赤くなった。

「冗談ですよ。ちょっと言ってみただけです」

なんだ、冗談かとちょっとしょんぼりした。

僕達は、ハンバーガー屋で別れた。

寮に戻って、トレーニングをした。


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