第17話
僕は、取り残されて気まずいなと思っていると、前村さんが話しかけてくれた。
「看護師ってどう思いますか。」と前村さんが少し上目遣いで見てくる。
「いや、大変な仕事だと思いますよ。僕、血を見ることできないんで。」
「柊さん、血が嫌いなんですか。」
「まあ、そうなんです」
「私、看護師なんで、野球でけがしたら、見てあげますよ」と前村さんは言う。
「え、ほんとですか。けがしたらお願いします」と僕は言った。
プロ野球には、トレーナがいるので大丈夫なのだが、それは言わなかった。
「私、地元が広島なんです。大学の時に上京して、一人暮らしです。」
「僕は、寮にはいっているんだ。横の2人も僕と同じ寮だよ」
「看護師って大変なんですよ、患者さんの面倒をみないといけないし、
お医者さんと意思疎通しないといけないし。」
「そうなんですね」
「夜勤だって多いし、ミスできないし」
「うん、大変そうだなと思うよ」と人の身の上話を聞くのは好きではないので僕はそっけなく返した。
「人間関係のトラブルだってあります」
僕はどの職場でもあるだろうと思い。
「そうですよね」と適当に返す。
「こないだだって、患者さんが背中が痛いと言って大変だったんですから」
「それは大変だ」とまた適当にかえした。
「本当に大変そうだなと思っています?野球選手なんて野球やっていれば、給料もらえますもんね。」と僕の対応に怒ったのか攻撃してくる。
僕はむっとして「看護師だって、患者さんの面倒みるだけじゃん」と僕はバカにした。
「うわ、さっきの大変そうだなってうわべだけの言葉だったんですね。」
「いや、それは馬鹿にされたからで」
「野球選手ってお金持ちでいいですよね」
「看護師だって、お医者さんに色目つかえば、お金持ちの妻になれるじゃん」
と僕達は2人罵倒していた。
「野球選手だって、可愛い子はびらかして、妻にしているよね。
なんでアナウンサーの人が多いと思う?」
「いや、それはアナウンサーが賢いからじゃない。」
「可愛いからですよ、アナウンサーは可愛い人がおおいんです。」
「いやいや、賢い人を妻にしている人が多いんだ。」
「モデルの人もプロ野球選手の結婚相手に多いんですよ」
「それはだね」と返答に困っていると
「ほら、やっぱり、可愛い人が多いからだ」
と前村が、勢いよく言う。
「看護師だって、医者と結婚しているじゃないか」
と僕は反論する。
「それは、お金を持っているからですよ、野球選手みたいに可愛いから結婚するのとわけが違うんです。生活面で楽になれるから結婚するんです。」
「お金目当てじゃないか。」
「お金目当てで何が悪いんですか、プロ野球選手なんて、可愛い子目当てじゃん。
そっちの方が最低です。」
「そりゃあ、可愛い人の方がうれしいじゃん。」
「まさか、柊さんって可愛い子目当てで合コンにきたんですか。
自分の欲求丸出しですね」
と前村に馬鹿にされた。
僕は、実際そうなので何も言い返せなかった。
「うわ、男の人って、金持っていれば、何でも手に入ると思っているんですね。
そうはいきませんから」と前村は言った。
「柊さんってちょこちょこ私の胸を見てきますよね。
変態なんですね」と攻められて意気消沈していた。
「柊さんって口下手ですよね。私喧嘩では負けませんよ」
「そういえば、沖縄に行ったお土産で買ったお菓子があるんだ」
「わあ、ほんとですか、欲しいです。」
「はい、クッキー5個入り」
「ありがとうございます。」と前村さんは受け取った。
「じゃあ、喧嘩は一時休戦で」
「しょうがないですね。このお菓子に免じて許してあげましょう」と前村さんは言った。
少し、上下関係ができたようだが、見ないふりをしよう。
それから普通に仲良くなり。
「海で、海水から塩をとったんですが、めちゃくちゃしょっぱかったんですよ」
「それは塩だからね」
「海でビーチやった時なんて転んで大変だったんですから。」
「いいな、僕もビーチいきたい」
「結構ナンパされて大変だったんですから」
「それは大変だね」
「海でスイカ割りしたんですけど、全然当たんなかったです」
「いいね、スイカ割りしたことないからしてみたい」
「え、スイカ割りしたことないんですか、もったいないですよ」
「スイカは食べたことあるんだけどね」
「それは、そうですよ」
と僕達は仲良くなり連絡先を交換した。
「やったー、柊さんのラインゲットした」と嬉しそうに言った。
さっきまでの喧嘩はなんだったのかと思い、それはそれで可愛いなと思ってしまった。
隣の2人の男もうまくいったようで、仲良く話していた。
鈴村が、「では、合コンは解散ということで、会計は俺たちでします」
と言って、解散になった。
「柊さん、連絡してくださいね、待ってますよ」
と前村さんに言われた。
僕は、そういわれて、うれしい気持ちになった。
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