夢を吐いた日
夢とは、私の妄想の成れの果てで、心に埋もれた欲や願望の映写機みたいなものだと思っていた。あるいは、目を閉じて、運が良ければ行ける小旅行。色とりどりの、大きな大きな、味のしない綿飴のような。結局は何も残らないのだが、なんだか、ああ、面白かったなあ、なんて耽ることのできるもの。
恋人のあなたを壊す夢を見た時、初めて私は、その夢を「なかったこと」にしたいと思った。忘れるのでもなく、諦めるでもなく、そのものが存在しなかったことにする。
私は夢を吐き出した。
起こったことを全て、転がっているスケッチブックに殴り書きながら、その時の情景や心情を言葉にして絶えず吐き続ける。だんだんと思い出せなくなって、そこで、ええと、と次に詰まり始めたところで、その紙を燃やす。煙草を一本吸って、ザッツ・ライフを小声で歌う。そのままもう一度、薬を飲んで線香を焚いて、寝る準備をし、曲が二周したあたりでもう一度夢の世界へ行く。
どうか、次こそは、ショートケーキのような美しい夢が味わえますように。
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