第6話 ローブの女
――リエナが落ち着いたところで、改めて話をすることにした。
「師匠がまさか、若返るなんて……」
「『万能薬』とはよく言ったものだ。肉体を若返らせる――言葉にすれば単純だが、病も治癒するというよりは消滅させる、といったところか」
「……師匠の若い頃って、こんな感じだったんですね」
ルヴェンの方をじっと見ながら、リエナは言う。
未だに信じられないものを見る様子だった。
「そもそも、お前が持ってきた薬を飲んだ結果だが」
「の、飲んでくれたことは、その、ありがたいと思ってます。でも、こんな風になるとは思わなくて……」
「まあ、私もお前が騙されただけだと思っていたからな。それで――この薬のことはどこで知った?」
「……へ?」
「――商人から盗んだんだろう? その情報源はどこだ、と聞いているんだ」
ルヴェンが問いかけると、リエナは視線を逸らし、
「えっと、それは……」
何やら言葉を濁した。
ルヴェンは小さく溜め息を吐くと、ベッドに腰掛ける。
「師匠……? 何を――にゃああああっ!?」
瞬間、リエナが大きな声を上げた。
ルヴェンはするりとベッドの中に手を滑らせると、器用にリエナの尻尾を掴み、刺激する。
「さっさと言え」
「ちょ、尻尾はダメですって! そこは敏感――んあっ」
「白状すればやめてやる」
「あっ、い、言いますっ! 言いますから……やめ――」
ルヴェンはリエナが詳細を全て言い終えるまで、尻尾を握っていた。
――獣人の弱点の一つ、と言えるだろう。
敏感であるが故に、その尻尾は危機察知の能力にも優れているという。
だが、ルヴェンは主にリエナに対するお仕置きとして利用していた。
ここ最近は、そんなことをする気力もなかったのだが。
「――なるほど、つまり怪しいローブの女から、商人が悪事に手を染めていることと、『万能薬』を入手したことを聞いた、と」
「ひゃ、ひゃい……そう、れす……」
リエナがベッドの上で息を切らしながら、脱力した様子で答える。
その女から、口止めまでされていたというわけだ。
依然、ルヴェンは尻尾を握ったままに、
「随分とリスクのあることをしたな。相手の罠だとは考えなかったのか?」
「そ、それは、考えましたよ? でも、師匠を助けることの方が優先で……あ、あと尻尾はそろそろ離してもらっても――ひんっ」
「まず、その女のおかしいところは、『万能薬』を何故、お前が必要としていることを知っていたか、だ。捜しているところを見られたのか?」
「い、一応、色んなところで聞いて回ってました、けど……っ」
「そうか――では、その女の行方を追ってみるとするか」
ルヴェンの身体に起こった変化を知るのなら、リエナが会ったという女に話を聞くのが手っ取り早いだろう。
ようやく、ルヴェンはリエナの尻尾を手放して、立ち上がる。
「準備しろ。そろそろお前も動けるだろう」
「……師匠のせいでもう動けそうにない、です」
「なら、もう少しマッサージしてやろうか?」
「――っ! すぐに支度しますっ」
リエナは勢いよく立ち上がり、慌てて準備を始めた。
解毒も上手くいったようで、問題もなさそうだ。
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