第30話 予期せぬトラブル

ライブ当日、会場入りしてからの一連の準備は順調に進んでいた。バンドメンバーはリハーサルに集中し、凛もハルヒの要望に応えるべく、紙吹雪とバルーンの演出の最終確認を行っていた。古泉はメディアとの打ち合わせに向かい、朝比奈さんは楽屋で衣装の最終チェックをしていた。長門は黙々と機材の確認をし、何か異常がないか注意深く監視している。


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「よし、リハーサルは完璧だな。」

キョンがそう呟いたとき、ステージ裏で何やらスタッフたちが慌ただしく動き回っているのが目に入った。ハルヒもすぐに気づき、スタッフの一人に駆け寄った。


「どうしたの?」

ハルヒの問いに、スタッフは困惑した表情で答えた。


「実は…、バルーンの手配に少し問題が起きまして…。契約していた業者が急にキャンセルを申し出てきたんです。理由はまだわかりませんが、このままではバルーンの演出が…」

その話を聞いたハルヒの表情が一瞬険しくなった。


「何よそれ!こんな大事な日に…。」

彼女は悔しそうに唇を噛んだが、すぐに切り替えて凛の方を振り返った。


「凛、どうにかならないの?他の手段を考えなきゃ!」

ハルヒの声には焦りが見える。凛は一瞬だけ考え込んだが、すぐに冷静な表情を取り戻した。


「バルーンの代わりに何か別の演出を取り入れることはできます。ただ、時間がないので手配にかかる時間や現場の状況を考慮しないといけません。」

彼女は真剣な表情で言いながら、スマートフォンを取り出して何かを調べ始めた。


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その様子を見ていたキョンは、今が自分の出番だと直感した。


「ハルヒ、凛が代替案を考えてくれるのは間違いない。ただ、俺たちもできることをやろう。何かアイデアがあれば全員で出し合うんだ。」

キョンの言葉に、メンバーたちもそれぞれの頭を巡らせ始めた。


「例えば、照明やレーザーを使って演出を派手にするとか。紙吹雪の色やタイミングを変えることで、もっとインパクトを出すことはできないかな?」

古泉が提案を投げかける。長門も静かに頷きながら、既に自分の中で調整プランを練っているようだ。


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「紙吹雪なら色を変えてダンスの振り付けとシンクロさせることもできるかもね。」

朝比奈さんも意見を出す。彼女の一言が、ハルヒの表情を一気に明るくした。


「それよ!バルーンがなくても、もっとすごい演出を作り出せるわ!」

ハルヒは再びエネルギーを取り戻し、目を輝かせた。


「凛、お願い!紙吹雪の色とタイミングを変えることと、照明の調整を手配してくれない?」

ハルヒの勢いに押されつつも、凛は冷静に頷いた。


「承知しました。照明の担当スタッフと連携してすぐに準備します。紙吹雪の色も変更しておきますので、ステージの振り付けと合わせておいてください。」

彼女の迅速な対応に、キョンは再び感心した。


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ライブ開始までの時間は刻一刻と迫っていた。しかし、メンバー全員の士気が下がることはなかった。むしろトラブルに直面したことで、一層チームの結束が強まっているようだった。


「俺たちなら乗り越えられる。絶対に最高のライブにしてみせる。」

キョンはそう自分に言い聞かせ、ステージに向かって歩き出した。


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ライブの開始を告げる鐘の音が響く。その瞬間、ステージ裏にいた全員が同じ方向を見つめ、深く息を吸い込んだ。そして、いよいよショーが幕を開ける。

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