第29話 新たな冒険の始まり

ライブが成功してから数日後、俺たちは次のライブ会場へ向かうために再びバスに乗っていた。全国ツアーはまだ始まったばかりだが、今まで以上に大きな目標がハルヒの頭の中で渦巻いているようだった。次のステージもさらに盛り上げようと、ハルヒは終始エネルギッシュに話している。


「ねえ、キョン!次はもっと大規模な演出を取り入れようと思うの。例えば、ステージの上から大量の紙吹雪を降らせたり、観客の上に大きなバルーンを飛ばしたり!どう?面白そうでしょ?」

ハルヒは目を輝かせながら、新しいアイデアを俺にぶつけてきた。


「おいおい、そんなこと本当にできるのか?紙吹雪にバルーンって、また無茶なことを言い出したな…」

俺は半ば呆れながらも、ハルヒの情熱には逆らえないことを知っていた。


「できるわよ!凛がいればなんとかなるんだから!」

ハルヒは後部座席に座っている凛を指差し、自信満々に言った。


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凛は笑顔を浮かべて、少しだけ肩をすくめた。


「確かに、紙吹雪とバルーンくらいなら何とか手配できるかもしれませんね。ただ…バルーンを飛ばすには天井の高さも考えないといけないですし、紙吹雪が散らばりすぎると後で掃除が大変になりますよ。」

彼女の冷静なアドバイスに、ハルヒも少しだけ考え込んだようだ。


「なるほどね。でも、それくらいの問題ならすぐに解決できるでしょ!」

ハルヒはすぐに切り替えて、ますます乗り気になっている。


「さすが、ハルヒ。凛が冷静に問題点を指摘してくれてるのに、それすらもポジティブに変えるんだな。」

俺は小さくため息をつきつつ、凛の落ち着いた対応に感心した。


「凛が一緒にいてくれるから、私たちは何でもできるのよ!」

ハルヒは嬉しそうに言い放ち、再び新しいアイデアを考え始めた。


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バスの中では、古泉が次のライブのプロモーション戦略について話していた。彼はいつもの微笑みを浮かべながら、SNSでの話題作りやメディア露出のタイミングを考えているようだった。


「次の会場は比較的大きな都市なので、少しだけプロモーションに力を入れましょう。地方のメディアにも協力をお願いしておきました。これで観客の数もさらに増えるでしょう。」

古泉は冷静にそう言い、長門もリハーサルのセットリストを確認しながら頷いていた。


「ふぅ、何だかんだでうまくいってるみたいだな。」

俺は隣でノートを広げている朝比奈さんに目を向けた。彼女は次のステージ用の衣装デザインを確認していた。


「みくるちゃん、その衣装、すごく似合いそうだね。」

俺がそう言うと、朝比奈さんは嬉しそうに顔を赤らめた。


「ありがとうございます。でも…やっぱり緊張しちゃいますね。次の会場はもっと大きいですし、失敗しないように頑張らなくちゃ。」

彼女は少し不安そうだったが、それでも新しい挑戦に向けて前向きな気持ちを持っているようだった。


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そんな中、ハルヒが再び声を張り上げた。


「さあ、みんな!次の会場に着いたらすぐに準備を始めるわよ!凛、あなたもすぐに動けるようにしてね!」

ハルヒは凛に向かって指示を出したが、凛は冷静に頷いて答えた。


「もちろんです。今回も全力でサポートさせていただきます。」

彼女の声には、自信と決意が感じられた。裏方として支えることに誇りを持っている凛は、今回のライブでも大きな役割を果たすだろう。


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次のライブ会場に近づくにつれて、バスの中の雰囲気も次第に高揚していった。俺たちSOSスターズは、新たな挑戦に向けて一歩一歩前進している。そして凛という新たな仲間を得たことで、俺たちのチームはさらに強固なものになった。


「次のライブもきっと成功するさ。」

俺は窓の外を見ながら、自分にそう言い聞かせた。


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こうして、新たな冒険がまた始まろうとしていた。

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