第24話 新たな始まり

次のライブを成功させてから数週間が経った。SOS団のアイドルユニット「SOSスターズ」の活動は順調に進んでいる。ハルヒは毎日新しいアイデアを持ち込み、ステージやパフォーマンスの計画を次々と打ち立てている。彼女のエネルギーは無限に見えるが、どこか落ち着きを見せ始めた気がする。


ある日の放課後、俺たちは部室に集まっていた。今日は特に大きなイベントもなく、静かな一日になるだろうと思っていたが、ハルヒがそれを許すはずもなかった。彼女は何かを考えているようで、窓の外をじっと見つめている。


「ハルヒ、また新しいことでも思いついたのか?」俺は呆れたように声をかけた。


「うん、そうなのよ。」ハルヒはふと笑みを浮かべて、俺たちに向き直った。「次にやるべきことが見えてきたわ。」


その言葉に、俺は嫌な予感を覚えながらも、問い返さずにはいられなかった。「また何か無茶なことを考えてるんじゃないだろうな?」


「無茶なんかじゃないわ。むしろ、次はもっと大きな目標よ。」ハルヒは自信満々に言い放った。


「もっと大きな目標?」朝比奈さんが不安そうな顔を浮かべて尋ねた。「ライブはすごく大きな成功だったのに、まだ何かやりたいことがあるんですか?」


「もちろんよ!」ハルヒは即座に答えた。「ライブも成功したけど、私はまだ満足してないの。アイドル活動をもっと広げて、さらに世界を面白くするつもりよ!」


俺は思わずため息をついた。「お前、まだ懲りてないんだな。」


「懲りるわけないじゃない!」ハルヒはその言葉に少し怒ったような表情を見せたが、すぐに笑顔に戻った。「私たちはまだ始まったばかりなんだから、これからもっともっと大きなことをやっていくんだから!」


そのハルヒの笑顔に、俺は少し安心した。以前の迷いや不安は完全に吹き飛んで、彼女は再び自分の夢に向かって進み始めている。彼女は結局、自分の「面白い世界」を追い求め続けることを決意したのだ。


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その後、ハルヒは新しいプロジェクトを提案してきた。今度の目標は「全国ツアー」だった。


「全国ツアー!?」俺は驚いて声を上げた。「お前、本気で言ってるのか?」


「もちろんよ!」ハルヒはキラキラと目を輝かせながら答えた。「私たちが町中だけじゃなく、全国に名前を広める時が来たのよ! だから、全国各地を回って、もっとたくさんの人に私たちのパフォーマンスを見てもらうの!」


「いやいや、簡単に言うけど、そんなに簡単にできるもんじゃないぞ。ライブ会場を押さえるだけでも大変だし、資金だって必要だ。それに、全国を回るってことは移動も大変なんだぞ?」俺は現実的な問題を次々と指摘したが、ハルヒは一切動じない。


「そんなの、なんとかなるわよ!」ハルヒはあっさりと言い放つ。「私たちには古泉くんのプロモーション力があるんだから、すぐに会場もスポンサーも見つけられるわ!」


古泉はいつものように穏やかな笑顔を浮かべ、「ええ、もちろん協力させていただきます」とすんなり受け入れた。


「お前、本当にできるのか?」俺は疑いの目を向けたが、古泉は微笑みを崩さず「すでにいくつかの地方で興味を持っているライブハウスがあるようです。少し交渉すれば、全国ツアーも実現可能かと。」と自信を見せた。


「やれやれ、どうやら本当にやる気らしいな…」俺は再びため息をついたが、どこかでハルヒの計画がうまくいく気がしていた。


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その後、全国ツアーの計画が本格的に進み始めた。ハルヒはその準備に全力を注ぎ、メンバー全員がそれぞれの役割を果たすために忙しくなった。長門は新曲の制作に取り掛かり、朝比奈さんは各ステージごとの衣装デザインを進め、古泉はプロモーション活動に精を出していた。


そんな中で、俺はというと、ハルヒのマネージャーとして彼女をサポートしながら、次のステージの計画を手伝っていた。


「キョン、次の会場はここよ。」ハルヒは俺に地図を広げ、次に回る予定のライブハウスを指差した。「ここは地方の小さな会場だけど、ステージは大きいし、観客も多く集まるはずよ。」


「そりゃあいいけど、これ本当に全国全部回るつもりなのか?」俺は地図に広がる全国の会場一覧を見て、驚きを隠せなかった。


「もちろん! 全国中で私たちの名前を広めて、それが終わったら次は…」ハルヒはそこで一瞬言葉を切り、満面の笑みを浮かべた。「世界に行くのよ!」


「…世界!?」俺は驚いて声を上げた。「お前、冗談だろ?」


「冗談なもんですか!」ハルヒはまるで当然のことのように言い放った。「私たちが世界を面白くするためには、世界中に私たちのパフォーマンスを見せなきゃ意味がないでしょ?」


「いやいや、話が飛躍しすぎだろう…」俺は頭を抱えながら呟いたが、ハルヒは一切聞く耳を持たない。彼女の中ではすでに「世界デビュー」が次の目標になっているようだ。


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それから数週間後、俺たちは最初の地方ライブを迎えた。ハルヒが企画した全国ツアーの第一歩だ。会場は地方都市にある大きなライブハウスで、予想以上に多くの観客が集まっていた。


「よし、今日も最高のステージにするわよ!」ハルヒは楽屋でメンバーたちに声をかけ、全員の士気を高めていた。


俺はステージ裏でその様子を見守りながら、ハルヒの成長を感じていた。彼女はいつも自信満々で突っ走っていたが、今はその自信の裏に確かな実力と計画性が伴っている。最初は無謀に見えた彼女のアイドルプロジェクトも、今ではしっかりとした形になり、全国ツアーという大きな目標に向かって進んでいるのだ。


「やれやれ、すっかり板についたもんだな。」俺は心の中でそう思いながら、ハルヒの姿を見つめた。


そして、ついにステージの幕が上がり、ハルヒたちのパフォーマンスが始まった。


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ライブが終わると、ハルヒはステージ裏で少し疲れた様子を見せたが、それでも満足げな表情を浮かべていた。


「どうだった? 今日のステージも最高だったでしょ?」ハルヒは息を切らしながらも、誇らしげに言った。


「ああ、確かに最高だったよ。お前、本当にやるじゃないか。」俺は軽く笑いながら答えた。


「でしょ? でも、これはまだ序章よ。次はもっと大きなステージで、もっとたくさんの人に見てもらうんだから!」ハルヒは再び未来を見据えたように、力強く宣言した。


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こうして、涼宮ハルヒのアイドルプロジェクトは、ますます加速していくことになった。彼女は次々と新しい目標を打ち立て、それに向かって全力で突き進んでいく。彼女が目指す「面白い世界」はまだまだ続いている。


「次はどこへ行くんだ、ハルヒ?」俺は心の中でそう問いかけながら、彼女と共に次のステージへと向かって歩き始めた。

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