第18話 SOS団プロダクション設立

翌日、俺たちはいつものように部室に集まったが、昨日とは違ってハルヒのテンションは更に高まっていた。机の上には分厚いノートやら資料やらが広げられており、その横には何か得体の知れない図が描かれたホワイトボードまで登場している。


「さて、今日から本格的に始めるわよ! 涼宮ハルヒのアイドルプロジェクト、スタートよ!」


ハルヒは腕を組み、自信満々の笑みを浮かべて部室の中央に立っていた。お前、そのテンションで本当に進めるつもりなのかよ、と心の中でツッコミを入れつつ、俺はあきらめのため息をついた。


「おいハルヒ、どうするつもりなんだ? 昨日言ったこと、全部本気でやるつもりなのか?」


「当然でしょ! 計画はすでに完璧に立ててあるわ。今日からみんなでプロジェクトを進めるわよ!」


ハルヒはそう言うと、手に持っていたホワイトボードのマーカーでボードに大きく「SOSプロダクション」と書き込んだ。その文字を見た瞬間、俺の頭の中にはただ「やれやれ」という言葉しか浮かばなかった。


「まずは、みんなに役割を割り振るわ。これから私がトップアイドルになるために、みんなにはそれぞれの分野でサポートしてもらうから、しっかり仕事をこなすように!」


ハルヒの言葉に、全員が無言で頷くしかなかった。いつものことだが、彼女がこう言い出した以上、もう誰にも止められない。だから、俺たちはただ従うしかないんだ。


---


「まず、キョン! あんたは私のマネージャーよ!」


ハルヒがまっすぐに俺を見て指名してきた。いや、昨日も言ったけど、俺がなんでお前のマネージャーなんだ?


「マネージャーって、俺に何をやれって言うんだよ。スケジュール管理とか、お前のわがままを全部聞けってことか?」


「もちろんよ! あんたは私の一番近くで支えてもらわないと困るのよ。スケジュール管理も、マスコミ対応も、プロデューサーとの交渉も全部あんたがやるの!」


「プロデューサーとの交渉って…まだ誰もプロデューサーなんかいないだろ。お前が決めたことだけで話が進んでるんだぞ?」


「大丈夫! 私がオーディションに受かれば、すぐに見つかるわよ!」ハルヒは自信満々に答えるが、俺の不安はますます膨らむばかりだ。


「はあ、わかったよ…結局、俺がやるしかないんだろ。」


「そうよ、キョン! あんたならできるわ!」


ハルヒのこのポジティブすぎる信頼に、俺はただ肩をすくめて頷いた。いつものことだが、こうなった以上、やるしかない。


---


「次は長門有希! あんたは作詞作曲担当よ! 天才的な頭脳を持つあんたなら、素晴らしい曲を作れるに違いないわ!」


ハルヒは長門の方を見て宣言するが、長門は相変わらず無表情のまま、本を読んでいる。作詞作曲なんて、どう考えても簡単じゃないだろう。そもそも、長門が音楽を作る姿なんて想像できない。


「大丈夫なのか、長門?」俺は不安を口にしてしまったが、長門は静かに目を上げ、淡々と答えた。


「問題ない。」


その一言で、ハルヒは満足したようだ。「ほらね、キョン! 長門ならやれるわ!」


「いや、本当に大丈夫なのか…」俺はさらに不安になったが、長門が「問題ない」と言う以上、もう何も言えなかった。


---


「次は古泉くん! あんたはプロモーション担当よ。あんたのスマートな見た目と交渉術で、私を大々的に宣伝してちょうだい!」


古泉はハルヒの言葉に微笑みを浮かべながら、「もちろん喜んでお引き受けします」と、まるでそれが当然であるかのように答えた。


「具体的に何をするつもりなんだ?」俺が問いかけると、古泉は笑顔で答えた。


「そうですね。まずはSNSやブログを活用して、涼宮さんの知名度を高めるところから始めましょう。その後は、彼女の個性を最大限に引き出すインタビューやメディア露出を増やしていくのが効果的かと。」


「お前、妙に具体的だな…」俺は驚きながらも、古泉の手腕にはちょっと期待してしまう。


「ええ、こういった活動は私の得意分野ですからね。心配しないでください。」古泉は自信たっぷりに答えた。


---


「そして、最後はみくるちゃん!」


ハルヒは朝比奈さんの方に向かい、優しく微笑みながら言った。「みくるちゃんは、私のステージ衣装をデザインしてもらうわ!」


「えっ、わたしですか? そんなの無理です、私にはそんな才能ありません…」朝比奈さんは困ったように慌てるが、ハルヒはそんな彼女の言葉を一切聞き流す。


「大丈夫よ、みくるちゃん! あんたのセンスならきっと素敵な衣装ができるわ! それに、可愛いみくるちゃんが作った衣装なら、絶対に話題になるわよ!」


「そ、そんな…わたし、本当にできるんでしょうか…?」朝比奈さんは不安そうに呟いたが、ハルヒは「大丈夫よ!」と自信たっぷりに断言してしまった。


---


こうして、ハルヒによる「SOSプロダクション」の役割分担が無事に(?)完了した。


俺はマネージャー、長門は作詞作曲、古泉はプロモーション担当、朝比奈さんは衣装デザイン。これまで経験したことのない分野で、俺たちはこれから涼宮ハルヒのアイドル活動を支えることになる。


「よし、これでみんなの役割は決まったわね! あとは私がオーディションに受かれば、すぐにデビューできるわ!」


ハルヒは自信に満ちた表情で宣言し、俺たちはそれに無言で頷くしかなかった。


「いや、でもさ、本当にうまくいくのか?」俺は心の中でつぶやいたが、ハルヒの勢いに逆らうことはできなかった。何せ彼女の頭の中では、すでに自分がトップアイドルになっているのだから。


---


こうして、俺たちSOS団は、涼宮ハルヒのアイドルプロジェクトという新たな挑戦に巻き込まれていった。果たして、この無謀な計画がどうなるのか…それは、これからの俺たち次第だろう。


「やれやれ、またとんでもないことに巻き込まれたな…」


俺はため息をつきながら、今日もハルヒの命令に従うしかない自分の運命を嘆いたのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る