第15話 影響を受けた人々

俺たちが再び過去に戻って、時間軸のズレを修正しようと奮闘している間、実際にはそのズレが予想以上に広範囲に影響を及ぼしていることが次第に明らかになってきた。


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修正のために過去の出来事をもう一度辿る過程で、俺たちは驚くべき事実に気づいた。ズレた時間軸の影響は、SOS団のメンバーだけにとどまらず、学校全体、さらには町全体にまで広がっていたのだ。普段は目立たない微妙な変化が、あちこちで次々に現れていた。


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その日は、放課後にいつものようにハルヒが「調査」と称して、俺たちを引っ張って校内を巡回していたときのことだった。体育館での最後の修正を行った後、俺たちは一旦日常生活に戻り、様子を見ようとしたが、ハルヒは何かが違うとすぐに感じ取ったらしい。


「キョン、やっぱりまだ何かおかしいわ!」ハルヒがいつもの調子で言い放つ。


「またかよ…」俺は内心でため息をつきつつも、今回は何かが違うというハルヒの感覚に同調せざるを得なかった。


「何がおかしいって言うんだ?」俺はその疑問を口に出した。


「それが…はっきりとは言えないんだけど、学校の雰囲気がいつもと違うのよ。何かが変わってる。微妙な違いだけど、それが確実に存在しているわ。」ハルヒは目を細めて、校内を見回した。


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俺たちは手分けして、学校の中を調べることにした。まずは職員室に向かい、教師たちの様子を探ろうとしたが、そこでも異変があった。普段は穏やかで、厳しくも温かみのある数学教師が、なぜか冷たい目つきで生徒たちを睨みつけていたのだ。


「おいおい、あの先生がどうしたっていうんだ?」俺は思わず声に出してしまった。


「確かに、いつもと違うわね。こんなに冷たく見えるなんて、前代未聞だわ。」ハルヒもその異様な雰囲気に気づき、顔をしかめた。


教師たちの中には、いつもと同じように振る舞っている者もいたが、明らかに何かが違う者も多かった。まるで彼らが別の人格を持ったかのように、行動が微妙にズレていたのだ。


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次に、俺たちはクラスメートたちの様子を探ることにした。いつもは仲の良い友人同士が、何かをきっかけに口論を始めたり、普段はおとなしい生徒が突然攻撃的な言動を見せたりと、クラス全体が不安定な状態に陥っていた。


「これって…まるで何かが彼らを操っているみたいだ。」俺はその異様な光景に目を見張った。


「おかしいわ、明らかに何かがおかしい!」ハルヒは拳を握りしめて、苛立ちを隠せない様子だった。


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さらに調査を進めるうちに、俺たちは驚くべき事実に直面する。ズレた時間軸の影響は、学校の中だけでなく、町全体に広がっているのだ。例えば、普段は見かけないような奇妙な行動をする住民たちが増え、日常の光景がどこか歪んで見えるようになっていた。


「町全体が何かに取り憑かれたようだ…」俺は驚きと恐怖を感じながら、その変化を観察した。


「このまま放っておくわけにはいかないわ。何とかして、このズレを修正しなきゃ!」ハルヒは強い決意を込めて言った。


「でも、どうやって?」俺は困惑していた。これほど大規模な影響を修正するためには、何が必要なのか、まるで見当がつかなかったのだ。


「まずは、このズレの原因を突き止めることが先決ね。」ハルヒは冷静に考え始めた。


「ズレの原因か…」俺は頭を抱えたくなった。


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その時、長門が静かに言葉を発した。「ズレの原因は、恐らく一つではありません。複数の選択が重なり合った結果、この広範囲な影響が生じています。」


「複数の選択?」俺はその言葉に反応した。


「はい。時間軸のズレは、一つの選択ミスだけではなく、連続した選択が積み重なった結果です。すべてを修正するためには、その一つ一つを解決する必要があります。」長門の言葉は冷静だったが、その内容は俺たちにとって非常に困難な課題を突きつけた。


「つまり、私たちはこれから一つ一つのズレを修正していかなきゃならないってことね。」ハルヒは覚悟を決めたようだった。


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その日、俺たちは再び集まり、これからどうするべきかを話し合った。長門の提案により、ズレた時間軸に影響を与えたと思われる選択肢をリストアップし、それを一つずつ解決していくことにした。


「これは、かなり骨の折れる作業になりそうだな…」俺は疲れた顔をしながら言った。


「でも、やるしかないわ。このままじゃ、学校も町も滅茶苦茶になっちゃうもの。」ハルヒは真剣な表情で言った。


「僕たち全員で力を合わせれば、きっと解決できるはずです。」古泉が冷静に言い、朝比奈さんも不安げな表情ながらも頷いた。


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こうして、俺たちは再び行動を開始することになった。ズレた時間軸の影響を受けた人々を元に戻すため、一つ一つの選択を修正するために、再び過去の出来事に向き合うことになった。


「やれやれ、これで本当に終わりにできるのか?」俺は内心で不安を抱えつつも、再び立ち上がる決意を固めた。


「今度こそ、すべてを元に戻すわよ!」ハルヒはその言葉に力を込め、俺たちを鼓舞した。


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夜が更け、学校も町も静寂に包まれていた。だが、その静けさの中で、俺たちは再び新たな冒険に乗り出す決意を胸に秘めていた。


「さあ、始めましょう!」ハルヒの掛け声と共に、俺たちは最後の修正作業に向けて、行動を開始することになった。

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