第2話 新生活のスタート

「まったく、どうしてこんなことになったんだ…」俺は目の前に広がる草原を見つめながらため息をついた。あれから数時間が経ち、俺たちはようやく異世界の村にたどり着いていた。


「見て、キョン!ここ、すごいじゃない!」ハルヒは興奮した様子で周りを見渡している。村は中世ヨーロッパ風の建物が並び、道行く人々は親しみやすそうな雰囲気を醸し出していた。


「確かに、現実とは思えない光景だな…」俺もついついその景色に見入ってしまった。


「まずは住む場所を見つけましょう。」長門が冷静に言う。


「そうだな、無計画に動いても仕方がない。」俺は賛成し、周りを見渡した。


村の中心にある広場には、露店が並び、様々な商品が売られていた。食べ物から衣料品、雑貨まで何でも揃っているようだ。俺たちは手分けして情報を集めることにした。


「ねぇ、おじさん。この村に空いてる宿屋とかない?」ハルヒが一軒の露店で、品物を並べる中年男性に尋ねる。


「宿屋かい?それなら、村の西側に『グリーンフィールド』っていう宿があるよ。親切な主人がやってるから、きっと気に入ると思うよ。」男性は笑顔で教えてくれた。


「ありがとう、おじさん!」ハルヒは満面の笑みでお礼を言い、俺たちを振り返った。「よし、行きましょう!」


「グリーンフィールド」は小さくてかわいらしい宿屋だった。木造の建物は暖かみがあり、入口には色とりどりの花が飾られている。俺たちはドアを開け、中に入った。


「いらっしゃいませ!」 明るい声が出迎えた。若い女性がカウンターの後ろに立っていた。


「こんにちは、私たちここに泊まりたいんだけど、部屋は空いてる?」ハルヒが尋ねる。


「もちろんです!お部屋は十分にあります。人数は何名様ですか?」


「5人だ。」俺が答える。


「それでは、二部屋ご用意しますね。こちらへどうぞ。」女性はにこやかに案内してくれた。


部屋に荷物を置き、一息ついた俺たちは、今後の計画を立てるために集まった。長門は持っていたノートに何かを書き込みながら言った。


「まず、この村の地理と周辺の情報を集めることが重要です。そして、自給自足のために食料の確保も考えなければなりません。」


「そうね、異世界の農業なんてワクワクするじゃない!」ハルヒは目を輝かせていた。


「俺たちはこの村の人々と交流して、情報を集めよう。」古泉が提案した。


「それがいいわね。みんな、分担して行動しましょう。キョン、あなたは私と一緒に食料の確保を担当して。」


「わかったよ。」俺は少し不安な気持ちを抑えつつ、頷いた。


次の日の朝、俺たちはそれぞれの役割に分かれて行動を開始した。ハルヒと俺は村の農家を訪れ、畑で働く方法を教わることにした。農家の人々は親切で、異世界の作物や育て方について詳しく教えてくれた。


「これが、この世界の主食『クルマ』です。見た目はジャガイモに似ていますが、栄養価が高く、長持ちしますよ。」農家のおじさんが説明する。


「なるほど、これは使えそうだ。」俺はメモを取りながら頷いた。


ハルヒは早速畑に入って、土を掘り起こし始めた。「見て、キョン!この土、すごく柔らかいわ!」


「そうだな、これなら色々な作物が育ちそうだ。」俺はハルヒの姿を見て、少しだけ安心した。異世界での生活も、彼女と一緒ならなんとかなるかもしれない。


一方、長門は村の図書館で古代の文献を調べ、朝比奈さんと古泉は村の人々との交流を深めていた。朝比奈さんは村の女性たちと一緒に料理を作り、古泉は商人たちと取引の話をしていた。


「キョン、見て!こんなに美味しそうな料理ができたのよ!」朝比奈さんは嬉しそうに笑い、テーブルに料理を並べた。


「すごいですね、朝比奈さん。これなら異世界でも楽しく過ごせそうです。」俺はその光景を見て、少しだけ希望が湧いてきた。


こうして、俺たちの異世界スローライフが本格的に始まった。もちろん、平穏な日常が続くわけではなく、これから様々な出来事が待ち受けていることだろう。しかし、それが涼宮ハルヒとSOS団の運命なのかもしれない。


これから何が起こるかはわからないが、この異世界での生活を楽しむことにしよう。俺たちの新しい冒険は、まだ始まったばかりだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る