第63話 VSベヒモス(2)
「どうやら、身の程を思い知らせてやらねばならぬようじゃな」
天を仰ぎ咆哮したゾエはトラックとダイナを一瞥した。
「くっ! それでもダメージはあるはずだ! ダイナ、もう一息だ!」
「了解ご主人様! 全力でやるよ~!」
ゾエが体勢を整える前から怒涛の追撃を仕掛けるトラックとダイナ。しかしその攻撃はいま一つ精彩を欠く。
「無駄じゃ……先程のような一撃でもなければワシにダメージが通ることなど無いわい」
「くそっ! やべぇぞ、また動き始めるのか」
「ふはは……お主、何か勘違いしておらんか? ワシがただ歩いて踏み潰すことしか出来ぬ魔物だとでも思っているのか」
「ご主人様いけない! ブレスが来る!」
「大丈夫だ。解っていれば回避は造作もない!」
「それで良いのか? ふはは……貴様が助かっても街は粉々じゃーーー!!」
「「!!」」
「あの街を消す! 消してやるぞーーー!!」
ゾエはその開けた口をアンに向けた。
「やべえダイナ、首を狙って向きを反らせ!」
「解った!」
「うおおおおっ! インパクトアァースッ!!」
「やああああっ! 滅びの!
2人の攻撃がゾエの首に直撃することになったが、それは向きすら変えられなかった。
「残念じゃったのう」
「待てっ! 止めろっ! 止めてくれっ!!」
「お願いゾエ! アンはボク達の大切な場所なの!」
「ふはは……もう遅いわ! バニシングブラスター!」
「「あっ!!」」
運とダイナは咄嗟に手を伸ばすも、それは余りに無力だった。
ゾエから放たれる強大なエネルギーの砲撃は、まるで時間を引き伸ばしたかのような一瞬を経てアンの街に到達し、無情にも街全体を包み込む大きな爆発を巻き起こした。
「素晴らしい! 見るが良い。こんなに綺麗な花火ではないか」
そのあまりに大きい爆炎と巻き起こる煙によって、街の安否はまるでわからなかった。
「うそ……だろ……。おい、久遠、五十鈴、みんな……」
「そんな……こんなのって……」
運とダイナは失意の底に落ちて行った。
「ふははは……所詮この世は弱肉強食、強ければ生き、弱ければ死ぬ」
ゾエは満足げに再び歩みを始めた。
「さて、残る残骸を念入りに踏み潰してくれようぞ」
「待て……待てよコラ」
色を失った瞳で、力無くも運はゾエを引き止めた。
「ん? まだいたのか? このしつこいくたばり損ないめ」
「ゆ、許さんぞ……よくも、よくも」
震える運の怒りに呼応するかのようにトラックの周りの大気は震え、塵芥は重力に逆らい宙に巻き上がっていた。
「ふん。良いじゃろう。今度は木っ端微塵にしてやる……あの街のように!」
「あの街のように? ……アンのことか……?」
運の身体は陽炎のように揺らぎながらも再びハンドルを握り、やがてその目に怒りと共に強い力が宿った。
「アンのことかーーーーーっ!!!!!」
瞬間、黄金に輝くオーラを放つトラック。
「な、なに……お主、なんだそのオーラは」
「そんなことはどうでもいい……テメェは今からブチのめすっ!」
輝くトラックはゾエに向かって突撃をした。
「ふはは……無駄と解ってなお歯向かう気か」
「うらあああああっ!!」
その突撃はスキルも何も使用していない通常の突撃であった。
「ぐおおおおっ!! な、なんじゃこの威力はぁっ!!」
だがそれは初めてゾエを後方に押し返す一撃であった。
「どうした? ようやくお帰りか?」
「調子に乗りおって」
ゾエは地を蹴り出して、歩みよりも強く巨体をトラックに向けた。
「返り討ちだっ!! インパクトアァースッ!!」
トラックはゾエの全体重を乗せた体当たりすらも弾き返した。
「ぐおおおおっ!! ば、馬鹿な……ワシが力負けしているだとぉ!?」
「オラ、さっきまでの威勢はどうしたよ? ……また一歩、自ら引いたぞ」
「な、なに……? まさかこのワシが気圧されているとでも言うのか」
「は! だからって、このまま大人しくお家に帰してもらえると思うなよ」
トラックは更に強くオーラを放ち始めた。
「今からお前は焼肉定食。強火でも焼き、弱火でも焼く……
トラックの連続攻撃。それはゾエをあらゆる方向から殴りかかった。その一撃一撃はとても重く、ゾエを圧倒し、押し返しつつも反撃の好機は一切与えなかった。
「ぐううっ……このワシが……このワシがぁっ!!」
そしてトラックはゾエの腹の下に潜り込み、下から強力に突き上げる。
「よーく焼けたら裏返す! ……名付けて、フライ返し!!」
「ト、トラックでフライ返しぃ~!?」
味方であるはずのダイナすら驚く威力である。それは巨体の足を完全に地から浮かび上がらせ、その背から大地に叩きつけた。
「ベヒモスのくせに、しゃくりあげられたら終わりだな」
トラックは圧倒的な力を以てベヒモスを睥睨した。
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