第8話

創護社、テイルダイバー司令室前の廊下。

 莉乃姉と合流して、テイルダイバー司令室に向かっていた。

 どうやら、まだ莉乃姉も事件内容は教えられていないようだ。

 テイルダイバー司令室のドアが自動で開く。

 僕と莉乃姉はテイルダイバー司令室に入る。テイルダイバー司令室の中には女性オペレーターの人達と影草さんと錦木兄弟が居た。

「すみません」

「遅くなっちゃいました」

 僕と莉乃姉は軽く頭を下げる。

「謝らなくていい。無理を言っているのはこちらなんだから」

 僕と莉乃姉は影草さんと錦木兄弟が居る部屋中央のテーブルに向かう。

「貴方達を呼んだ理由は有名作家作山夏雪(さくやまなつゆき)氏の盗まれた新作データを取り返してほしいの」

「どう探すんですか?手掛かりでもあるんですか?」

 手掛かりが無かったら、探すだけで何日かかるか分からない。

「あるわ。南西エリアのリサイクルショップ「レプリオ」の地下で行われる違法オークションで出品される情報が手に入ったの」

「……違法オークション。そんなものがこの街で行われている。俄かに信じがたいですが」

「お兄様と同意見です」

 たしかに警備が厳重なこの街で違法オークションなんて出来るなんて信じがたい。

「この街にも悪党なんてごまんと居るのよ。違法オークションが行われてもおかしくない」

「それじゃ、なんで摘発しないんですか?」

 莉乃姉は訊ねる。

「裏で有識者が絡んでいる場合もある。裏づけがないと簡単には手を出せないのよ」

「大人の事情ってやつですか」

 莉乃姉は納得していないようだ。

「そうよ。許せないけどね」

「……もしかして、今回の事件は誰が犯人か分かっているんですか?」

 話を聞いていると、そう言う事になるはず。そうじゃないと呼び出さないだろう。

「えぇ。その通りよ。巌谷君。みんな、これを見て」

 影草さんはテーブル中央に備え付けられている3次元ディスプレイのキーボードを操作して金髪のベリーショートの男性の画像を立体的に表示させた。

「イケメンですね。まぁ、お兄様程ではないですけど」

「この男の名前は丹波伴(たんばばん)。創盗賊アウトリュコスの一員よ」

 影草さんは麗の言葉を軽くスルーして説明している。こう言うとき、影草さんは何もなかったかのように進める。なんと言うか、大人だ。

「影草さんの言っていた通り、もうこの町にアウトリュコスのメンバーが居たんですね」

 今日中に事件を解決しないと、想蘇祭の期間も何か事件を起こされる可能性がある。それだけはなんとしても避けたい。

「えぇ。この映像は街の監視カメラのものよ。あと、この画像が作山夏雪氏の新作データーが保管されていた銀行の金庫室の監視カメラが捉えた画像よ」

 影草さんは立体的に映っている丹波の画像に触れ、スライドした。金庫室の監視カメラが撮影した丹波の姿が映っている画像に変化した。その画像には丹波以外にも複数人の男性が写っている。

「1人じゃないのか。面倒だな」

 丈一さんは眉間に皺を寄せた。

「ですね。本当に面倒です」

「そうね。それにこの画像に写っている男達以外にも手下がいるかもしれない」

「全員を捕まえるとなると骨が折れそうですね」

 莉乃姉は言った。

「それに丹波がマドンかもしれないしね」

「その可能性もあるのか……」

 かなり面倒な事になってきたな。

「様々な事を考慮して、今回の事件は貴方達四人でチームを作り、事件を解決してほしいの」

「ち、チームを組む?」

 普段ない事だから聞き返してしまった。

「俺は反対です。未明さんはともかく、こいつは足手まといにしかなりません」

 丈一さんは僕を指差した。

「そうです。その通りです」

「何よ、その言い方。こっちから願い下げよ。私は賢ちゃんとしか組まない」

 莉乃姉は僕を庇ってくれている。

 ……変わらないと。莉乃の為に……いや、自分の為にも。

「……四人で事件に当たりましょう。これは影草さんからの命令です。それに僕もテイルダイバーの一員です。足手まといになんかなりません」

 僕は自分の意見を述べた。僕だって、何件も任務をこなしている。足手まといになんかならない。

「……賢ちゃん」

 莉乃姉は驚いている。

「巌谷君の言う通りよ。貴方達は巌谷君の事を過小評価しすぎているわ。巌谷君もれっきとしたテイルダイバーの一員。それに私の命令に従えないなら神創具を没収して、テイルダイバーの資格も剥奪するわよ。それでもいいのかしら」

 影草さんはそう言ってから、微笑んだ。こ、これはかなり怒っている。もし、この状態でデコピンをされたら額が貫かれそうだ。

「……申し訳ありませんでした」

「すみませんでした」

 錦木兄弟は影草さんに頭を下げた。

「ごめんなさい」

 莉乃姉も頭を下げる。

「分かればいいの。話を続けるわ。違法オークションは本日20時から行われる。だから、透明マントを実像化してオークション会場に潜入して。もし、自分達だけじゃ手に負えないと分かったら、連絡しなさい。私も出向くわ」

 僕達四人は頷く。

 アウトリュコスのメンバーが絡んでいる事件を担当するのは全員初めてなはず。僕以外のメンバーも不安なはず。誰も傷つかずに任務を成功させる事が一番だ。頑張らないと。

 

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