第3話
――翌日。
今日も今日とて面倒くさい学校に行っているが、なんだか違和感がある。
――チラッ。チラッ。
「…………」
隣の席の美少女こと、
昨日何かしたっけ……? いや、会話すらしてないし何かしらのアクションもしていない。何もなかったはずだが……。
いや待て。本人は自覚していなくとも何かしらのことをしでかしているという可能性も大いにある。
「ジーーッ……」
「(めっちゃ見られてる! なんだあの鋭い眼光は! マジで何したんだ俺……!)」
「ジーーーーッ……」
この場合は
そう思った俺は、常に視線を感じながらも授業を受け、昼飯を食べ、掃除をし、話しかけられることなく家に帰った……。
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「――……ってことがあったんですよ」
バイト先の喫茶店の休憩室にて。
再び着ぐるみの先輩と二人っきりとなったため、今日学校で起こった冬狼さんのことについてを話してみた。
「何か俺やっちゃったかなぁって思ってるんですけど、どう思いますか?」
《ただ単に話しかけたかったからとかじゃない?》
「あの人を殺すかのような鋭い眼光で話したかっただけ……?」
《そ、そんなに怖かったの!?》
「まぁ……はい。今日死ぬのかなぁと」
動揺して少し落ち込んだ雰囲気を漂わせる先輩。
まるで自分のことのように落ち込むなんて、やっぱり先輩は優しい人だなぁ……。
「まぁでもなんと言いますか……。苗字とは似つかわしくないですが、猫みたいで可愛かったですね……」
『かわっ……!?』
「え? 今喋りましたか?」
ブンブンブンと首を横に振る先輩。
久々に声を聞いた気がするけれど、やっぱり先輩の声って可愛いんだよなぁ。でも前より少し低くなってたような……?
まぁそんなことはさておき、明日の冬狼さんの対策を聞いてみることにした。
「明日からどうやって接したらいいかアドバイスもらえないですかね」
『…………』
少し考え込む仕草をし、スラスラとホワイトボードに書き始める。
《とにかくアイサツをしてみたらいいと思う。それからみてた理由とかきいてあげて、あと好きなものとかシュミとか話し合って、それから――》
「おっけーっす、もう大丈夫です。とにかく俺から話しかけてみようと思います!」
いいアドバイスを聞けたことだし、明日頑張ってみよう。その前に、バイトをまず頑張らねば。
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先輩からアドバイスをもらった次の日、俺は早速実践してみようと思ったのだが……。
――ソワソワソワソワ。
「(な、なんか……ものすんごいソワソワしてね?)」
擬音が聞こえてくるほどソワソワとしている冬狼さん。俺を急かすように視線が痛いほど刺さる。
これは天啓なのだろうか。冬狼さんに話せという天啓なのか!?
俺は視線を黒板の方から冬狼さんの方に移した。すると彼女はバッと顔をそらし、頬杖をついて澄ました顔になる。
「…………」
――ソワソワソワソワソワソワソワソワ。
今度は逆に俺が視線を送り続けてみたのだが、ソワソワが増加したように見えた。まるで待てをされている犬のように、ブンブンと左右にしっぽを振る幻覚まで見える始末だ。
そして、腹をくくって話しかけてみることに。
「あー……。おはよう、冬狼さん」
「! ……おはよ……」
「えーっと……いい、天気だな」
「え、曇ってんだけど」
「そ、そうだな」
「「…………」」
まずい! 俺もコミュ障のボッチなのを忘れていた!
バイト先ではこれは仕事だと言い聞かせていて大丈夫だが、日常生活ではこんな会話しかできない。会話のデッキが天気しかないのが辛いんだ。
先輩は着ぐるみだからという謎理論で話せるが、対人戦はキツイ……。
「えっと、冬狼さん。なんで昨日からずっと見てたのかなーって気になって……」
「別に。理由がないと見ちゃダメな訳」
「(理由もなく見られるのは怖いんよ)」
クソーー! 先輩たすけてくれぇええ!!!
心の底からそう叫んだ。
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