第六章 グッバイ、悪魔憑き少女
6-1
赤い
それは血液だった。
雑草の生い
「う、うそだ……」
言いながら、トゲの生えた巨人が
巨大な騎士の姿をした怪物は、何度もシャオリンを殺しにきた。すでに九回交戦し、今まで四体の怪物を
シャオリンは、それが『血を流している』ことに初めて気が付いた。
生きていた。
これは怪物ではなく、血を流す生命体だった。
それを今、シャオリンが自分の手で
ばくばくいう
『シャオリン。もう一体が来ます』
悪魔にそう言われて、身体が
右手に
九度の戦闘、そして悪魔のサポートにより、シャオリンはめきめきと強くなった。
怪物を打ち倒す
だから、戦いはじめたらもう止まれなかった。
「……っ!」
騎士の怪物が向かってきた。〈イフェイオン〉がバックステップし、影から二本目の槍を取り出して左手に
騎士がカイトシールドで
「あ、待って――!」
バックステップした騎士が、そばにあった
それは、『
串刺しにされた騎士が力を失い、糸の切れた人形のように動かなくなった。槍が刺さった場所から、真っ赤な血がぽたぽたと
殺したいわけじゃなかった。
けれど、やらなければやられていたのは事実だ。騎士の怪物は
「ねえ、悪魔」
血を滴らせる人型の物体を前にして、〈イフェイオン〉が
動くもののいない空き地は
「もしかしてこれ、人間なの? 中に人が入ってる? 怪物じゃ、ないの……?」
すると、しばらくの間をおいて悪魔が言った。
『その通りです。あれらはシャオリンと同じく、
言われた
呼吸が浅くなる。
なぜ気付かなかったんだろう。
「……どうして
『きみの命を守るためです。あれが人間だと知っていたらシャオリンは戦えていなかった。
悪魔はいつも正しい。もし、最初から敵が人間だと知っていたなら、シャオリンは戦いに
「殺しちゃったんだ。もう六人も」
シャオリンがぽつりと
『正当な
苦しい。
息ができない。
景色がモノクロになって、
「うん、大丈夫。大丈夫だから……」
*****
また二人殺した。
大雨の公園で、シャオリンは一人地面にへたり込んでいた。
今しがた殺した二体の騎士が、雨に打たれてぼろぼろと
『
「……なんかね」
雨を落とすグレー色の空を見上げ、シャオリンがぽつりと言った。
「なんか、
身体が冷たくて、
「もういいよ。前に言ってた『
何度も話し合った。
今まで生きてこれたのは悪魔のおかげだから、欲しければいつでもあげるよと何度も言ってきた。すると悪魔は決まってこう答える。
『シャオリンがじゅうぶんに大人になるまでが
生きるのは楽しい。だから今まではその
「大人だよ。もう十五歳だし」
『まだ契約期間は数年分残っていますよ』
「もういいの。もう
降りしきる雨が痛いほどに冷たい。
シャオリン・ダンバースは
『では、きみの記憶の一部を
「そんなことできるんだ」
『可能です』
「でも」
シャオリンが地面に視線を落とす。
「それでも、もう十分だよ。だって、これまでのことを忘れたとしても、あいつらはまた追ってくるんでしょ。前みたいに普通に生きていけるわけない。ずっと不安だし、怖いよ。だからもう終わりでいいの」
少しして、悪魔が短く回答した。
『
「うん。ごめんね」
『これで契約は
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