5-5
「わかった」
アイラが
「『
「えっと、こくふく……どいつろうどう……?」
「穂高ちゃん。細かい
「わ、わかりました!」
ちなみが
「私たちは、その組織をUW
改めて説明されると、なんだか
今でも、ちなみ自身は自分が普通の人間だと思っている。しかし
アイラの説明は続く。
「UW研はあなたのような強化人間を完成させ、
ちなみは
ノートにメモした内容、そしてたまに思い出す映像が、アイラの説明によって
「フライシュッツ」
アイラが言った。
「それがあなたに与えられたコードネーム。あなたは、完成された強化人間として
ちなみは急に気分が悪くなるのを感じた。フライシュッツ。フライシュッツ。フライシュッツ。みんながちなみをフライシュッツと呼ぶ。ちなみの記憶すら、ちなみのことをフライシュッツと呼んでいた。
身体の中ぜんぶが
「ちなみちゃん、大丈夫? なんか変だよ」
今まで
「あんまり聞かない方がいいよ。もう帰ってもらおう、ね?」
ちなみの手をむにむにと
「へ、へーきへーき! ちょっと変な感じになっただけ!」
「そう?」
ちなみが笑いかけると、小鈴は
「いや、ホントに大丈夫? だいぶ
リアがそう聞いてきた。どうやら、ちなみは
「まあ、あんまり気持ちのいい話じゃないよね。どうする? もう帰ったほうがいいかな、私たち」
「いえ、へーきです! 帰る前にもう一個教えてください」
「じゃあその質問で終わりね」
そう言って、立ち上がりかけたリアは再び腰を下ろした。
「えっと、聞きたかったのは、どうして私は日本にいるのかなって」
ちなみが質問すると、アイラは少し時間を置いてから口を開いた。
「あなたが
「お父さんとお母さんは、本当のことを知ってるんですか?」
「部分的に知っている。穂高夫妻は、XEDAと
普通ではない状態とは、まさに今のような状況のことだ。
「あなたが自分を知ろうとするのは
彼女はちなみに気を
「次の仕事がある。他に聞きたいことがあればリアに連絡して」
アイラが時計を見ながら立ち上がった。
「ばたばたしちゃってごめんね。アイラさんも言ってたけど、なんか聞きたいことがあったら連絡してきていいからね!」
「ありがとうございますっ」
ちなみが
「やっと帰ってくれた……殺されるかと思ったぁ~!」
そう言って大きなため息をついた小鈴は、だらしない
*****
その数時間後。
まだ少し
「なんかさ」
ちなみが
「全部フライシュッツのことばっかりなんだよね。たまに思い出す
「ダメなの?」
小鈴がそう聞いてきた。
「昔のことを思い出しても、自分のことじゃないって感じ。映画を見てるみたいでふわふわしてるの。だからさ、それって私の思い出じゃなくて、フライシュッツさんの思い出じゃん、って思っちゃって……」
――穂高ちなみは何者なのか。
結局、その答えは見つからないままだ。ちなみのアイデンティティは二年分のまま、
「それならそれでいいんじゃない」
小鈴が言った。
「え~、そーかなぁ」
「そうだよ。小鈴が知ってるのはドジでおバカで
「それは確かに――って、ばかじゃないし! あとお花畑でもないからっ」
「この前の
「うっ……」
言い返せなくなったちなみを見て、小鈴がけらけらと笑った。
「武器集めも次で最後だね」
夜空を見上げて、小鈴が言う。
『武器』は全部で五つ。『フォルカロルの翼』『アンドラスの右腕』『ダンタリオンの左腕』『ハルファスの左脚』はすでに手に入れた。あとは『アイムの右脚』だけだ。
夜風が吹いて、小鈴の
ちなみは少し
「あーあ。もっとヴェスパに乗りたかったなあ」
すると、小鈴の顔はみるみるうちに
「ねえねえ小鈴」
「なに」
「もっとちなみちゃんと
「ちがう」
「もー、しょーがないなあ小鈴は〜!」
「ちょっと、うざいからくっつかないで! 暑苦しい!」
ちなみは後ろから小鈴にくっついて、逃がさないようにぎゅっと抱きしめた。小鈴はそれを
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