5-4
ちなみと小鈴は、リアの言っていた通り、
そして五日が過ぎ、日付は四月一日になっていた。
午後三時。二人が高層マンション最上階の立派なリビングでおしゃべりしていると、インターホンが鳴った。
「はーい!」
ちなみが返事をしてドアの方に向かう。
今日はリアが『ダンタリオン』を
「……どちらさまですか?」
その横に見たことのないビジネススーツの女性が立っていた。
とりあえず二人を中に招き入れると、ちなみの背中にくっついた小鈴が「なんでこの人中に入れちゃったの!?」と小さい声で文句を言ってきた。
ビジネススーツの女性は
「ごめんごめん、怪しい人じゃないんだよ! ちょっとコミュ
スニーカーを脱いで部屋にあがってきたリアが、スーツの女性のことを
リビングにやってきたリアはその女性の
「ほら、アイラさん。さっさと自己紹介して」
言いながら、リアがひじで女性を
「
それだけ言って、彼女は口を
「ひぇ……」
怖くなったのか、小鈴がちなみの横にぴったりとくっついてきた。正直、その気持ちはわかる。相手は
アイラと名乗った女性は、暗い
「それだけですか? もっとなんかないんですか?」
「はぁ……」
ため息をついたリアは一転してにへら笑顔を浮かべ、改めて女性を紹介した。
「こちらはアイラ・ガンターさん。今年で二十九歳、
「訂正させてほしい。私はまだ二十八で――」
「文句があるなら自分でまともな自己紹介をしてください」
リアがぴしゃりと言い放つと、アイラは口を噤んでしまった。
「えと……穂高ちなみです」
微妙に気まずい空気の中、ちなみがとりあえず自己紹介した。すると、アイラは「知っている」と答え、ちなみの方を見て話しかけてきた。
「穂高ちなみ。あなたを正式に
無表情のまま、アイラは小さく首を
「だめだよっ」
ちなみの腕にくっついた小鈴が、小さい声で制止してきた。もちろん、ちなみとて
「ごめんなさい! 私、XEDAにはいかないです」
そう言って、ちなみが申し訳なさそうに頭を下げた。
「わかった。それなら仕方ない」
アイラは表情を変えず、あっさりとちなみの申し出を受け入れた。
「リア、XE70331292を出して。シャオリン・ダンバースに
「……ほんとに返しちゃっていいんですか?」
持っていたアタッシュケースをテーブルの上に置きながら、リアがアイラに質問した。
「これは長官とトライスターによる決定。何が起きても、私が怒られる
「最低だな、この人」
笑みを引きつらせたリアが、ツッコミを入れながらアタッシュケースを開く。アイラがその中から小さなガラスケースを取り出し、中身を確認してから小鈴の目の前に置いた。
「ありがとうございます」
「いずれにせよ、シャオリン・ダンバースが
そこで言葉を切ったアイラは、ちなみの方を見てから説明を続けた。
「穂高ちなみ。私の知るあなたは、
リアの言っていた『テスト』とはこのことだった。
リア・エバンスの実力は、
アイラが説明を続ける。
「
ちなみはごくりと
なんだかすごい話になってしまっている。『ダンタリオンの左腕』は、なにやら
そこで、リアがアイラに質問した。
「でも、別に返す必要はないんじゃないですか?」
「シャオリン・ダンバースに
「だったら壊せば――いや、ダメか。どうせ再召喚されますもんね。ロズウェルに出し抜かれてもアレだし、確かに返すしかないか……」
リアはひとりでに納得している。ちなみには難しくて全部を理解することはできなかったものの、
「説明は以上」
そう言って、アイラが立ち上がった。どうやら帰ろうとしているらしい。
「あの! 教えて欲しいことがあるんですけど」
ちなみは慌ててアイラを引き止めた。アイラはちなみを見返すと、無表情のままソファに座り直し、こう言った。
「質問があるなら受け付ける」
ちなみの横にぴったりくっついた小鈴が、『なんで引き止めたの』と
「さっき、私と交戦したことがある、って……ほんとですか?」
ちなみが聞くと、アイラは無言で
「私の過去も知ってますか?」
「知っている。私はあなたと交戦し、
そう言ったアイラに、ちなみが真剣な面持ちで質問した。
「じゃあ、教えてほしいです――私って、なんなんですか?」
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