3-5
ペダルを
大雨を突っ切って、ダークオレンジの
『ああ、わかったよ。こっちもプロだ。こういうことだって覚悟してるさ!』
〈ニンウルタ〉が踏み込んできた。
本気の
『なに!?』
〈ヴェスパ〉はそれを
雨の中を、ダークオレンジの二脚兵装が舞う。それは敵の
機体を動かしながら、ちなみは悪魔の言葉を思い出している。
TGAクラス――Toughness against General Armaments――
〈ニンウルタ〉は戦車級レベル4に分類される。
けれど、それは無敵という意味ではない。
いくら重装甲の主力戦車でも、弱点自体は存在する。なぜなら、全ての装甲を
〈ニンウルタ〉が神の
だから、作戦はとてもシンプルだ。敵を
「ふう――」
ちなみが小さく息を
〈ニンウルタ〉がメイスを振るう。〈ヴェスパ〉がそれをすり抜け、ライフル砲を放つ。
雨の浜辺に、巨人と兵器が
青い巨人が繰り出した攻撃を、〈ヴェスパ〉が後方
着弾。
六十六ミリ
〈ヴェスパ〉が着地する。そこに〈ニンウルタ〉が異常な速度で踏み込んできた。しかし、その着地モーションすらもフェイントだ。
『クソ、どうなってんだ――』
攻撃を回避し、ひらりと敵の背後に抜けた〈ヴェスパ〉が再びグレネード弾を発射する。あとはその繰り返しだ。
背中、胸、肩、肘、
「頭かな、やっぱり」
〈ニンウルタ〉の顔面にグレネードが
『――ッ!』
顔面に
〈ヴェスパ〉が
L10
主力戦車の正面装甲すら
しかし、この武器に
『なんなんだ』
〈ニンウルタ〉がメイスを振るが、〈ヴェスパ〉はそれをやすやすとすり抜け、ひらりと敵の背後をとった。
『なんなんだ、お前は!』
そう言いながら、敵が振り返る。その肩に右手をついて〈ヴェスパ〉がジャンプし、
――
〈ヴェスパ〉が〈ニンウルタ〉の頭上でくるりと宙返りする。
その
手を伸ばしても届かない。近いようで遠い、自分のようで自分ではない存在。それがとても
「私は、世界最強の
「――らしいです!」
トリガーを引く。
爆発が起きた。百五十二ミリのタンデム対
鎧が
『いっ……てぇ』
『デレク!』
メイス状態から少女の姿に戻ったシャルーアが、
ちなみはほっと一息つくと、上体を起こしたデレクに声をかけた。
「私の勝ちです! だから、その……ええと……」
そこまで言いかけて、ちなみは口ごもった。どうお願いすれば帰ってくれるのかを考えているうちに、〈ヴェスパ〉を見上げたデレクが
『たまげたよ、なんてイカれた操縦兵だ。女子高生なんかをやってる理由は気になるが、まあこの世界じゃよくあることか』
「そーなんですか?」
ちなみが聞くと、立ち上がったシャルーアがそれに答えてくれた。
『デレクに初めて我が王の鎧を使わせたのもハイスクールの頃でした。そのころに比べれば少しはマシになったはずなんですが……とんだ
「あ、あはは……」
シャルーアのあまりの
『今日は本気が出なかった。だから、一旦手を引くことにする。けどな、もしその
『恥ずかしいのでもう喋らないでください。
そう言ったシャルーアがデレクの背を押し、森の方と引き返していく。しかし、その森に足を踏み入れる前に、青髪の少女はこちらを振り返った。
『ちなみ』
「ん? どしたの?」
そして、最後にこう言い残した。
『当面、その悪霊のことはあなたに任せます。しっかり見張っておいてくださいね』
*****
雨が上がり、浜辺には虹がかかっていた。
「ほんとにごめんね? 怒ってる? 怒ってるよね?」
「……」
ちなみと小鈴は、まだ二人でそこに残っている。というのも、
「ねー小鈴ぅ……こっち向いてよ~」
体操服姿のちなみが、その横にしゃがんで甘えた声を出す。
「小鈴さーん? やっぱり怒ってる? ねえなんか言ってよ~」
「……しつこいっ!」
「わ」
小鈴が急に立ち上がった。そして、ちなみの背に手を伸ばし――
「あと、うっとおしいっ!」
「うわ!?」
そのまま水の中へと突き飛ばした。
バランスを
「つ、つめた――わぶ!?」
ちなみの顔に水がかかった。しかめっ面をした小鈴がばしゃばしゃと水をかけて、ちなみの全身をびしょ
「小鈴、ちょっと……やめてってば! つめたいよっ」
「ちなみちゃんのバカ! あほ! 鬼!」
「ほんとに待って、風邪ひいちゃう!」
「大丈夫大丈夫! バカは風邪ひかないから!」
「ば、ばかじゃないからっ!」
そんなやりとりをしながら、二人の少女は真冬の浜辺で水をかけあっていた。
*****
その翌日、世界最強の
小鈴がちなみにメッセージを送る。
『バカは風邪ひかない って嘘だったんだね』
すぐにちなみから返事が返ってきた。
『ちなみちゃんは天才だったのか。。。』
小鈴はそのメッセージを見て、
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