3-4
ちなみは頭を
武器選択、八十四ミリ
素早く
赤々とした
『言っただろ。意味ないんだって』
神の鎧は見向きもせず、
「ねえ
『どうにかしてよ!』
「だって神様なんでしょ? むりじゃない!?」
ペダルを
大雨の中、〈ヴェスパ〉が
〈ニンウルタ〉が
「よし……!」
続いて、左トリガーを引く。
左手に
『はぁ……』
〈ニンウルタ〉が大きなため息をついた気がした。
ちなみは右腕の二十ミリ
〈ヴェスパ〉は左手にグレネードランチャー、右手にライフル砲を
「ごめん、なんかやっぱりむりだと思う!」
ちなみが言うと、悪魔が早口でそれに応答した。
『いいえ、チナミならあれを倒せます。確かにニンウルタの鎧は高い
「なになになに、全然意味わかんないんだけど!」
遠くに逃げた〈イフェイオン〉がハルファスの左脚を
では、物理的ダメージとは?
きっと、ちなみが使う
「つまりどーいうこと?」
『ニンウルタは重装甲の
「な、なるほど……」
けれど。
重装甲の
それだけでも
重装甲の主力戦車と同じくらいタフで、なんでも破壊できる武器を持っていて、速く走れて高く
「これ、ほんとにどーするの……?」
『はやくどうにかしてよ~っ!』
そう言いながら、〈イフェイオン〉が左脚から巨大な大砲を取り出した。トゲ巨人はそれを両手で
「どーしよう、どーしよう!?」
その様子を
〈ニンウルタ〉がとんでもないスピードで走り、〈イフェイオン〉に
『死ぬ! 死んじゃう!』
「いいからよけて!」
叫びながら、三十ミリライフル砲を照準。
『何!?』
もちろん、その鎧は
しかし、
〈ニンウルタ〉が大きく
「もっかいっ!」
ちなみがトリガーを引く。マズルフラッシュが
『おいおい、マジか』
『このままでは逃げられます。第三段階、解放』
シャルーアの声と共に、メイスの刃が回転数を上げ、しまいには光り出した。
その場で立ち止まった〈ニンウルタ〉が、ぎり、と上半身を引き
――やばい。
すぐに確信した。これが当たれば、〈イフェイオン〉は一撃でばらばらになる。
「小鈴!」
〈ニンウルタ〉が投てきモーションに移行する。照準、発砲。間に合え――!
瞬間、
ミサイルのような勢いでかっとんだメイスは、
『し、死ぬかと思った……!』
しかし、〈イフェイオン〉は
『ウソだろ、なんで外したんだ?』
『その少女――ちなみの狙撃が原因です。まずは彼女をどうにかするべきでは?』
『いいや、二脚には構うな。戻ってこい』
そう言った〈ニンウルタ〉の手に、メイスが飛んで戻っていく。腰から伸びるクロークをはためかせ、青い巨人が浜辺を駆け出した。
『ちなみちゃん、助けてぇっ!』
〈イフェイオン〉が〈ヴェスパ〉の方に逃げてくる。〈ニンウルタ〉は大雨の中で地面を滑ると、
「やばい、また来るっ!」
ちなみは〈ヴェスパ〉を走らせて、狙いやすい場所に移動してからトリガーを引く。次の瞬間、再び発射されたメイスが、
しかし、〈イフェイオン〉は無事だった。ちなみの狙撃が〈ニンウルタ〉の攻撃モーションを
『クソ、なんてやつだ』
メイスが〈ニンウルタ〉の手元に戻っていく。
――戦いづらい。
ずっとそう感じていた。
「なんだろ……?」
〈イフェイオン〉が逃げ
それを
ちなみの手足が動き、小鈴を守るために機体を操縦する。
全てがスローモーションに見えた。思考がぐるぐると
「あ」
「ごめん、小鈴!」
精一杯の申し訳なさを込めて、小鈴に謝る。
『え?』
前回までと決定的に違うこと。
穂高ちなみが苦手なこと。
それは――
「私、誰かを守るのって苦手みたい!」
ちなみが
『え……えぇーっ!?』
そんな小鈴の声が聞こえた
かっとんだメイスが〈イフェイオン〉に直撃し、その
「うわ、やっば~……」
ちなみが笑顔を引きつらせる。
小鈴には申し訳ないけれど、ちなみはあのメイス攻撃を受けるのは絶対にごめんだった。けれど、〈イフェイオン〉にはいつもの
『ひ、ひどいよ……どうしてこんなことするの……』
小鈴の声がした。〈ヴェスパ〉の背後の
「ほんとごめんね? あとでご飯おごるから許して?」
ちなみはできるだけ可愛く小鈴に
『ちなみちゃんのばか! あほ!
――ダメだったみたいだ。
大雨の中、〈ニンウルタ〉がのしのしと歩いてくる。巨人はちなみの正面十五メートルで停止すると、こちらを向いて話しかけてきた。
『なあ。あんた今、わざと攻撃をやめなかった?』
「えっと……そーです。やめました!」
『そりゃまた、どうして?』
「あなたを倒すためです」
そう言い切ると、デレクは『へえ』と言って
「ねえ悪魔、ニンウルタもイフェイオンみたいになる? 倒してもちゃんと中の人は生きて帰ってこれる?」
ちなみは、一番気になっていたことを悪魔に質問した。
『シャルーアが最も大切にしているのはその
「そっか、ならよかった」
それを聞いて安心した。なぜなら、これから〈ニンウルタ〉を破壊するからだ。
『おい、待てよ。本気で俺を倒そうっていうのか?』
困惑した様子で、デレクがちなみに問いかけてくる。
「はい!」
ちなみが元気よく返事をすると、デレクは大きなため息をついた。
『これが最後の警告だ。チナミ、だったっけ?』
「ちなみです」
『いいか、チナミ。俺が本気で戦えば、君の命は
「だめです」
『そいつには悪霊が
「小鈴はあげません。小鈴は私の友達だから」
『参ったな。なら、俺は君を殺すしかなくなる』
「その心配はいらないです!」
ちなみは、得意げな表情を浮かべてこう続けた。
「だって、私が勝ちますから」
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