3-2
「なあ、シャルーア。俺たち相当目立ってないか?」
シャルーア、と呼ばれたのは、彼と並んで歩いている
「あなたのような
「いいや、断じて俺のせいじゃないね。お前のその
デレクが立ち止まり、両手を広げる。
ここは日本の東北にある
デレクはカジュアルでラフな格好をしている一方、シャルーアはセーラー服を着ている。そして、身長百八十六センチでガタイのいいデレクに対し、シャルーアは細身で百四十八センチという
「お前みたいなちんちくりんが
「
「やめてくれ! このサングラス高かったんだぞ」
シャルーアが手を伸ばし、デレクのサングラスを無理やりもぎとろうとする。街中でぎゃあぎゃあと
その後も街を歩き回っていたところ、シャルーアが
「見つけました」
デレクも同じ方角を見たが、何も見えなかった。だが、古代兵器のレプリカであるシャルーアは、異なった見え方で世界を
「ようやく
「ここ二日間気配がなかったので、ずっとテリトリー内に引きこもっていたのでしょう」
「とんだ
「マーキング完了。どこへ逃げても
「……よし、準備しろシャル。
デレクがにやりと笑い、拳を
「今度こそシャオリン・ダンバースを
*****
日曜日、午前十時。ちなみはバスの中にいた。
座席が
乗客は少なく、
ちなみは手元に開いたノートに目を落とす。そこには、丸っこい
メモの内容はこんな感じだ――フライシュッツ、
「うーん……」
ちなみが首を
これは、少し前にちなみ自身がつけた、自分の過去に関するメモだった。
二週間前、
数あるキーワードの中から、『フライシュッツ』という文字に目を向ける。どうやら、ちなみは過去にそう呼ばれていたらしい。
キーワードを見ると、おぼろげに映像が浮かんでくる。
コンクリート製の大部屋で行われる
けれど、それが自分の過去だとは
――これは本当に、私の過去なんだろうか?
『次は
そんなアナウンスが聞こえて、ちなみはノートを閉じた。
今はまだわからないだけ。〈ヴェスパ〉に乗ればまた何か思い出すだろうし、記憶のことはのんびり待てばいい。
そう思いながら、ちなみは
*****
バスを降りて森に入ったちなみは、すぐ迷子になった。
一方ちなみは、フル装備の〈ヴェスパ〉を前にして
ダークオレンジの二脚兵装は、その見た目からして
「すごくかっこいいんだけど、今度は汚れが気になってきたかも」
よく見ると、足回りに
「じゃあ洗えば? そこに水道とホースあるよ」
小鈴がガレージの奥の方を指さして言った。
「はいはい、やるやる! あ、待って。このままだと服が汚れちゃうかも」
今日は土曜日なので、ちなみは私服を着てきていた。大きめのセーター、デニムのショートパンツに黒タイツ、スニーカー。ちなみらしいコーディネートではあったが、
「
スマホゲームをプレイ中の小鈴が、興味なさげに教えてくれる。小鈴が示した
「ありがとー! じゃあこれ借りるね」
「うん」
気のない返事をした小鈴は、
「いやだ」
顔をあげた小鈴は、しかめっ面でちなみの
「やろーよ! 一緒にやったら楽しいよ!」
「めんどくさい。一人でやればいいじゃん」
「絶対楽しいって! ほら、一緒に着替えよ」
そう言って、ちなみは本気で嫌がる小鈴の服に手をかけ、無理やりパーカーを
「やめて、脱がさないで――わかった! わかったから、自分で着替えるからっ」
抵抗するのをあきらめた小鈴が、
「うーん、ちょっとちっちゃいかも?」
「……は?」
顔をしかめた小鈴をよそに、ちなみが白いシャツの
「そうだ!」
短いなら、もっと短くしてしまえばいい――ちなみは
そうして満足そうにしているちなみに、小鈴が声をかけてきた。
「ねえちなみちゃん。その髪だと作業しにくいんじゃない?」
「たしかに! おだんごとかにしよーかな」
ちなみはサイドテールを
「どしたの? ……ひゃ!?」
「なんで!? やだ、やめ……あははは、あははっ!」
思わず髪をいじっていた両手を放し、小鈴の手を捕まえようとする。しかし、小鈴はうまくそれを
「小鈴がちっちゃいってこと? こんなにお腹出してさ。なんなの、
「ちがうちがうっ! そんにゃ、あはははっ、ちがうのに!」
どうやら小鈴を怒らせてしまったらしい。「ごめんごめん!」と必死で
「もーむりぃ! やだっ、やめてよぉ~」
そうちなみが
『お楽しみ中のところすみません。
と悪魔が言った。
「え? 敵襲?」
『この反応は“ニンウルタ”です。ボクとしたことが
「やばいじゃん! この場所もバレちゃう!」
ここはちなみと小鈴の
「とりあえず外でよ! そーすればここはバレないよね?」
髪を
「いや、まだ着替えが――」
「時間ないんでしょ! いこ!」
「待って、
ちなみは嫌がる小鈴をお
「いや、さむっ!」
「当たり前じゃん! ちなみちゃんのバカ!」
そうは言っても着替えに戻る時間はない。今はとにかく、できるだけガレージから
「ねえ、『にんうるた』ってだれ!?」
森の中を飛ぶような速さで走りながら、ちなみが質問した。
「小鈴の命を狙う
「くりぷ……くり、はんたー……?」
ちなみが混乱していると、小鈴がめんどくさそうな顔をしながらぶっきらぼうに説明する。
「
「そーなの?」
「逃げても無駄だよ。どうせ戦わなきゃいけないから」
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