1-3
『えっと、武器武器……!』
〈イフェイオン〉と呼ばれたトゲ巨人は、
『こっちくんな! どっかいけ!』
小鈴の声には答えず、騎士がその場でぐっと身を
次の
ばがん、と大きな音がした。
〈イフェイオン〉が大盾でぶん
「わっ……!」
遅れて
とんでもないパワーとスピードだ。なにしろ、盾を振っただけでこの
トゲ巨人を殴り飛ばした彫像の騎士が、
『……“ハルファス”っ!』
小鈴が言う。
すると、その呼び声に応え、〈イフェイオン〉の左脚が
『どっかいけ! 消えろーっ!』
言いながら、〈イフェイオン〉が両手で構えたマスケットを
爆炎が
騎士の大盾で赤い炎が
「あつっ……!?」
爆発の
彫像の騎士が、盾を
騎士の
『これムリだ! ごめんちなみちゃん、先に逃げるね!』
小鈴の声がそう言うと、両腕を失った〈イフェイオン〉が
「やだ、置いてかないでっ」
と声をあげた。
しかし、トゲ巨人はそんなちなみを置いて森の中へと逃げ込もうとしている。一方、彫像の騎士は〈イフェイオン〉を追わず、静かに長剣を持ち上げて――
「あ」
その剣先から赤い
『あばばばば!?』
小鈴が奇声をあげている。雷撃に打たれたトゲ巨人は
『あばば……ば……』
そして、小鈴の声が
「えぇ……なにこれ、どーすればいいの……?」
犬耳と首輪をつけたままその場に残されたちなみは、
そうして数秒動けないでいると、
「……小鈴ちゃん?」
そこに落ちていたのは、地面にうずくまる小鈴だった。
さっきまでの
「ちなみちゃん、うしろ……」
振り向くと、彫像の騎士がのしのしとこちらに歩いてきているところだった。騎士はちなみではなく、明らかに小鈴のことを狙っている。
「た、たすけて……今動けないの。だから小鈴を抱えて逃げて」
「待って待って、そんなのむりだよっ」
もう何が何だかわからなかった。
「――えっ!?」
ちなみの身体が勝手に動いた。
地面に手をついて立ち上がり、小鈴を
「むりだって! こんなの逃げ切れるわけないじゃんっ」
ちなみが悲鳴をあげる。
振り向くまでもなく、巨大な騎士が背後に
しかし、
「できるよ。
小鈴にそう言われた瞬間、ちなみの中でがちりと何かの
ちなみは小鈴を抱えたまま
*****
「ねえねえ、あのでっかい騎士みたいのってなんだったの!? 小鈴ちゃんもなんであんなのに変身できるの? あのでっかい騎士は放っておいて大丈夫? あ、てか私ってなんで連れてこられた――」
「ちょっと一回
「んむーっ」
「あと近い!
「んぅ……」
小鈴の
時刻は午後四時半すぎ。
ちなみと小鈴は、校庭の
校庭に
「あのでっかい騎士はね、『
「てんし? ほんもの?」
「うん、本物」
「んん……?」
ちなみが首を傾げる。
『天使』といえば、白い服を来て羽を生やした
「うーん……じゃあさ、ほんとにあれが天使だったとして、なんで小鈴ちゃんは天使に殺されそうになってるの?」
「ちなみちゃんはおバカだから、その説明は
「ば、ばかじゃな――むぐ!?」
小鈴が「
「天使
そこまで言うと、小鈴は横を向いて、改まった
「そんなことより、ちなみちゃんにお願いしたいことがあるんだよ」
「どんなお願い?」
「いま小鈴は殺されそうになってるでしょ、だから助けてほしいの」
「え」
ちなみが目をぱちくりさせる間に、小鈴が言葉を続ける。
「タダでってわけじゃないよ。小鈴はちなみちゃんの過去のことを教えてあげる。それで、昔のことを思い出すお手伝いをしてあげる」
「あ! そうじゃん、朝の話!」
ちなみの過去。
「でもなー。助けるって言っても、ちなみちゃんはただのハッピーJKだし……」
さっき見た
しかし、
「違うよ」
小鈴はちなみの方を見て、こう言った。
「ちなみちゃんはただのJKでもハッピーセットでもない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます