転生、そして邂逅

「ん、う……?」

眩しい──それが、この世界に来て真っ先に感じたこと。

「あら、マリア。おはよう」

「う?」

マリア?誰のこと…?それに、この人って誰……?

「ふふ、マリア〜。お母様ですよ〜」

よしよーし、と私をあやす、自称お母様。

「ティラス!!マリアにぴったりな服を見つけたぞ!!」

「うるさいですよ、ベルヴァルト!」

バァンッ、と勢いよく扉を開けるベルヴァルトさん。

「あう?」

「マリア〜!お父様だぞ〜!!」

目をハートにし、自称お母様…ティラスさんが呼んだ名前・マリアと呼ぶベルヴァルトさん。

つまり…私は、前世(仮)でやり込んだ乙女ゲーム『この世界に幸せを!』の登場キャラクターでありヒロインの敵兼悪役令嬢・マリア・テレジアだと判明した。

「うー!」

「可愛いですね、ベルヴァルト!」

「そうだなぁ、ティラス!」

ふっ、両親をメロメロにしてしまうなんて…私、罪な女!



「マリア、舞踏会に行こう!」

この世界の兄、シャンティア・テレジアに誘われ、わたしは王宮の舞踏会等が行われる部屋『鏡の間』に、シャンティアさん…お兄様と向かった。

「…?お兄様、何故あそこに人集りがあるのです?」

「ん?…嗚呼、見ているんだよ、人を」

「人を…?」

はて、と首を傾げればお兄様は、ふい、と人集りの方へと目を向けた。

「…あの歳で死刑宣告を受けるなんて、可哀想だね」

「え?」

私もそちらを見ると、丁度人集りの中心にいる人物が目に入った。

「!」

思わず、 息を呑んだ。

「ジャンヌ・ダルク…」

「え?何か言ったかい?」

「いえ、なにも。…ねえ、お兄様」

「?」

わたくし、あの者を引き取りたいですわ」

駄目かしら、とお兄様に聞けば、うーん…と唸るお兄様。

やがて、頷くお兄様。

「マリアの好きにしなさい」

「ありがとう、お兄様!」

そして私は、急いで彼女の元へと向かう。

「…マリア・テレジアよ」

「何をする気かしら」

私が人集りに近付くにつれ、私の名前や悪口を囁く貴族達。

同時に、ササーッ…と人集りが波のように引いていく。

「ねぇ、そこの貴女」

俯いていた少女が、ゆっくりと私を見上げる。

そして、不安や恐怖の入り交じる色を瞳に宿した。

「貴女、名前は?」

「…ジャン・ダルクヌ、です……」

やっぱり、と私は口元を扇で隠しながら、にんまりと笑う。

「私、貴女を引き取りますわ!」

ざわり、とどよめきの声が鏡の間に響いた。

「え、」

「そうしたら、貴女は死刑を免れる。私は、良い侍女を手に入る。互いにメリットがありますの、どうです?」

「……」

明らかに戸惑っている彼女。

「ま、返事は聞きませんわ。お兄様〜!私、この者を連れて帰りますの〜!!」

「うん、分かったよ」

こうして、私は強引に彼女を引き取った。

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