8. 捨てるべきもの三箇条(1)完璧主義を捨てる

 作品を迷わず書き切るためには、心を身軽にしなければいけません。

 言い換えれば、無駄な気負いやこだわりを捨てること。


 わたくし真野まのうおが心がけているのは、次の三つです。


  ①完璧主義を捨てる

  ②リアル至上主義にとらわれない

  ③必然性を最優先しない


 一つずつ説明してまいります。



①完璧主義を捨てる


 作品の「完成」とは、手に届く「妥協」と届かない「満足」の間にある「納得」を掴み取る行為である。


 これは以前にもエッセイで書いた、常に自分へと言い聞かせている言葉です。



 真野は書きながら推敲してしまう癖があり、これが遅筆の原因の一つともなっています。


 推敲それ自体は、適切な表現を探り、作品の「完成度」を高めるために必要な作業です。

 一方で、作者の満足する完璧な文章にこだわり続けることは、作品を「完成」から遠のかせます。



 要するに、文章をこねくり回すのもほどほどにしておかないと、いつまで経っても作品は完成しない、と言いたいのです。

 そんな至極当たり前の事実を、作家の頭に巣食う完璧主義という魔物は、いともたやすく忘れさせてしまうのです。



 身も蓋もない言い方をしますと、エンタメ小説の読者は、一字一句にいたるまで気にしながら読んではいません。

 文章は意味やニュアンスを伝えるだけものと割り切り、表現よりも展開で読者の心を動かすのが、娯楽としてのあり方と心得ましょう。


 そのうえで、たまに本質を捉えるような言い回しができたのなら、御の字なのではないでしょうか。



 作家が自分の作品に心から満足することは、まずないと思うべきです。

 だからといって、妥協はとても許されない。

 ここまで書ければ充分だと、自分で納得できるラインを探ることです。


 作品の完成に必要なのは、満足ではなく納得なのです。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る