第51話 独壇場


 この話から固有名詞を強調する方法を変えました。

 スキルは【】のまま。

 それ以外は『』で統一させることにします。

 時間があれば他の話も変えていこうと思います。

 突然の変更申し訳ありません。

 これからも『ロストフォークロア』をよろしくお願いいたします。


 ↓以下、本文です。


 ―――――――――――――――――――――――――――――

 

 最終戦二戦目。

 闘いは互いに離れ、撃ち合いから始まった。


『銀装:サジタリウス』が両手に持つは、近未来的な装飾が施されたハンドガンタイプのSF銃。連射が可能で、使いやすさを重視したものだ。


 対する、『道化師』が持つはファンタジー風アンティーク銃。

 撃てるのは一発のみの単発式。威力が高いが装填に時間がかかると言うもの。

 だが、スキル【オートローダー】があればその欠点は関係ない。


 両者を操るプレイヤーは無言。

 しかし、どちらも攻撃的な笑みを浮かべている。


 開幕の砲声を響かせたのはプレイヤーネーム『リュート』ことリュウセイが操る『銀装:サジタリウス』。

 ふたつの銃口が煌めき、光弾が吐き出される。


 狙いは正確。標的を確実に捉えている。

 厚みのある弾幕。連射性を活かした『面』に近い攻撃。

 予知に近い予測射撃。相手をよく『視て』回避先に弾を



 前に進む。



 それをプレイヤーネーム『MAXIMA』ことマキシマが操る『道化師』がゆらゆら揺れながら躱し、返す刀で撃ち返す。


 その身は柳の如く。相手の正確な狙いを流れるような動きでするりと躱す。

 誘い導くが如く動作。『壁』も予測もできた空白地帯で難を逃れる。

 牽制の一撃。当てることを目的としたものではなく行動の妨げを狙った。



 前に進む。



『銀装:サジタリウス』も躱し、撃ち返し、前に進む。

『道化師』も同じく躱し、撃ち返し、前に進む。


 撃っては躱し、撃っては躱し。

 一連の応射は両者が近づくごとに激しさが増していく。

 それを見ていた観客がどこかで『マジか…………』と呟いた。

 距離はどんどん縮まっていき――――



 互いに手の届くまで距離まで近づいた。



 それでも両者の動きは止まらず、むしろ嵐の如く勢いがついていく。


 武器を変え、弾を込め、武装を変え。

 至近距離で続く激しい攻防。

 銃撃を放ち、ときおり混ざる打撃。

 圧倒的な密度の応酬がここに繰り広げられた。

 しかし、ここまで互いに被弾なし。


 それは組手のように、演武のように、決められた動きをしているのかと疑ってしまうほどに両者の動きの流れに迷いはなかった。

 観客はその戦闘に魅入られ声を出すことも、呼吸することも一時的に忘れる。


 無限に続くかと思われた攻防は唐突に終わりを迎える。

 互いに合図もなく飛び退き、距離を取った。


 両者のスキルが同時に長いクールタイムに入ったからだ。

【クイックチェンジ】、【オートローダー】、【アームドチェンジ】にはちゃんとクールタイムは存在する。


 個々の冷却時間は短いが、連続使用で累積していくとその時間はどんどん伸びていく。いまはスキルを短時間に酷使したせいで『オーバーヒート』状態になっているのだ。


 そんなことは観客には分からない。

 分からないが――――



『『『『『ウォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!』』』』』



 凄まじい戦闘にたかぶった観客が大歓声をあげた。

 そんな中、闘技場に立つふたりは会話を交わしている。


『クククッ……リュートは凄いな。ここまで技の応酬についてこれるなんて。チェンジ系スキルを『オーバーヒート』するまで使ったのは久方ぶりだ。我、感心』


「なにいってんだ……そうなるように誘導してたくせに。流れに逆らったら手痛い反撃を用意してただろ?ついていくしかなかっただけだ」


 一戦目にはわからなかった『誘導』も、二戦目から意識して『視れば』よくわかった。


『それがわかるだけ凄いというのだ。大抵の者はわからず流れに逆らってふり落とされる。最後までついてこれるのは少数だ』


「そうか?そんなことないじゃ――――」


『そんなことあるのだよ』


 リュウセイはから自分を低く見積もる傾向がある。

 だから、否定しようとした。


 しかし、それをマキシマが言葉をかぶせ気味にさえぎる。

 彼の『経験』がそうさせた。



『誰もが同じ景色を見れるわけではない。誰もがともにいけるわけではない。『舞台』でいっしょに踊っていたはずなのに、いつのまにかいなくなる。ついてこれなくなる。いつも我ひとり『舞台』に残され――――っと、愚痴はいかんな愚痴は。若者に聞かせるようなもんじゃない。我、反省』



 垣間見えた伝説的プレイヤーの苦悩。

 それに対し、彼になにがあったのか分からないリュウセイは答えを持たない。

 持たないが、言うべきことはわかる。

 それは――――



「そうだな。そんなことどうでもいいな」



 そんなの知ったことか、だ。



『え?えっ?え~~?…………普通ここで理由聞いたりしない?気になったりしない?我、最年長のプロだよ?伝説的プレイヤーだよ?過去話とか色んなエピソードもってるよ?』



 まさかの返答にうろたえる伝説さん。

 それをうっとおしそうにリュウセイは吐き捨てる。


「別にいい」


『ちょッ!?貴様はもうすこし人に興味持ったほうがいいよ!父上、母上にそう言われなかった!?』


「両親は物心つく前からいない」


『特大級の地雷ッ!?我、無神経すぎる!?』


「ばあちゃんには言われたかな?相手を知れって」


『おお!いいおばあ様ではないか!そうそう人を知ることが――――』


「人体の効率的な壊し方とか、相手を弱みを知れば戦いを優位に進めるとか」


『ちがった!?なにその教え!?貴様、修羅の国の住人か!?』


 あまりにも価値観がちがいすぎる少年に驚く伝説さん。

 彼、別の世界の住人じゃないよね?と疑う。


「ていうか、いま試合中だし。雑談してる暇ないだろ?」


『ぐっ。至極まっとうなこと言ってる。人体の効率的な壊し方とかいってたくせに…………』


「ただ、まあ――――」


 言いにくそうに、照れくさそうに、言いなれない言葉を口にする。


「ひとりで舞台に立つのが嫌なら、オレも一緒に立てるよう頑張るから。ひとりにしないよう食らいついてやるから。だから――――みんなの憧れを集めるあんたが、ゲームでつまらなさそうな顔をするのだけはやめよう」


『ッ!?我…………つまらない顔してた?』


「してた。というか一緒に遊ぶ相手がいなくて拗ねた感じだな」


『そうか――――』



 そこでマキシマは気づく。

 最近の自分が以前に比べて楽しいことをことに。


 今回のリュートとの対戦は楽しそうだから参加した。

 エトの配信も何か楽しいことがないか探して見つけたものだ。

『黄昏・ファンタジア』の活動も楽しいから続けている。


 楽しみを探すのは、それは――――本業がつまらないからだ。


 張り合いのある相手は少なく。いても、チームメイトばかり。

 もしくは、夕闇咲ライラに挑んでいく。

 自分の元に来るのは『生ける伝説』の肩書に怯むものばかり。

 誰もが実力を出し切れずにやられていく。


 そんな試合が続いて嫌気がさしていたのだろう。

 それが少年との会話中に顔に出ていた。


 伝説的なプロが聞いてあきれるな。対戦相手の前でそんな顔するなんて。

 ――――そう心の中で零す。


 情けない姿を見せた――――なら、次はカッコいいとこを見せねば!

 そして決意する。プロの威厳を見せると。



『リュート…………貴様に人に興味を持てと言った言葉を撤回しよう。貴様は十分に人のことをよく見てる』


「ん?あー……そうか?」


『ああ、そうだ。我は気づかされたよ。我は伝説のプレイヤー。我は最年長プロ。我は全プレイヤーのあこがれッ。我はモテる男性プレイヤーナンバーワンッ!』


「最後の願望じゃないか?」


『そんな我がかっこ悪いところを見せるわけにはいかんなッ!』


「スルーしたよ」



『我、ここに証明しようッ!!!我はとてもカッコいいのだと!!!』



 これから開放するのはひとつの曲芸場。

 ただ芸を極めることに特化したそのスキルの名は――――



『【さあ、幕開けだ!ショータイムだ!舞台にあがれ!】』



 その起動詠唱キーにより、仮想世界に変化が訪れる。

 仮想の闘技場が塗りつぶされていく。




『【伝承顕現】ッ!!!【キ=ルクスの極限サーカス】ッ!!!』




 道化師の独壇場がいま幕を開ける。


 ―――――――――――――――――――――――――――――


戦闘描写・心理描写勉強が必要ですね。

力不足を感じます。


 ここから下は本編に書ききれなかったプチ情報を書いていきます。

 特に重要な情報は書いてないので読み飛ばしてもらってもOKです。



 闘技場――円形競技場のことをサーカスと呼びます。

 闘技場の最後の試合はサーカスで締めることは前から考えてました。

 マキシマの由来もサーカス関係から持ってきてます。

 どこかで設定まとめたいですねー。

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