第16話 不可侵区域
9/25改稿済み
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ゲームマップの端にある反応が消えそうな【伝承石】のアイコン。
リュウセイはすかさずマップ機能のマーカーを打った。
それは【同行者モード】でゲームマップを共有しているミズキにも伝わる。
「りゅー、なんで何もないところに……いや、ある。目を凝らさないと分からないようなのが…………」
「これかなり運がいいんじゃないか!?【伝承石】が発生したってことは――」
『はい!なにかしらの条件を達成したということなのです!』
【伝承石】は普段は隠されており特定の条件を満たさないと出現しない。
そのことをリュウセイは調べて知っていた。
行動か、人数か、時間か、もしくはそれ以外か。
なにがトリガーになったかは分からないが、たまたま発見したそれに、さっきまでしていた勝負のことなどすっかり頭から消えていた。
「エト、ミズキ!時間経過で無くなるやつもあるって話だから、はやくいこう!」
『ちょっ!マスター、はやいのですよ!エトはそんなにはやく飛べません!』
「ふふ、元気だネ。あれ?でも、この場所って――――」
せっかく見つけたお宝を逃すまいと駆け出すリュウセイとそれを追うエト。
ミズキは最後尾で微笑ましそうに眺めていたが、あることに気づく。
その場所はゲーム上の【不可侵区域】じゃなかったか?と。
◆
【ロスト・フォークロア】は、アメノハラという街を探索をメインとするゲームだ。
だが、探索できない場所も存在する。
私有地、ドローンを飛ばせない場所、立ち入り禁止区域などなど。
それらをまとめて【不可侵区域】と呼ぶ。
【不可侵区域】はゲームマップで黒表示されている。
ゲーム上存在しない場所になっているのだが、今回はその場所にアイコンが配置されている。
ミズキは位置ずれだろうか?と疑問に思いながら、リュウセイたちの後を追う。
目的の場所にたどり着いた。
そこは、住宅街の中にあることが不思議なもの。
それは、コンクリで舗装された道に囲まれた小山の上に建つ小さな
「ここか?なんで住宅街のど真ん中に、社が?それにこれって――――」
「だいぶ古い建物。アメノハラにこんな建物がまだ残っていたんだネ」
『アメノハラに現存する最古の建物と言っていいのです。小さな社ですが、厄除けのご利益があることで有名みたいなのです』
「厄除け…………確かに、ご利益がありそう。あの災害を乗り越えて、こうやって残っているのだカラ」
『住宅街の真ん中にあるのもそれが理由かもしれないのです。この社の近くなら災厄から守ってくれるかもしれない、と』
「ん?そういえば【伝承石】はどこなんだ?」
その言葉で、他のふたりもここにきた目的を思い出した。
『反応は【不可侵区域】――――社の方からしてます。バグなのです?』
「このゲームでそんな話は聞いたことないけどネー。とりあえず、ここまで来たならお
「だれが厄まみれだ。ただちょっとツイてないだけだろ」
『マスターはラノベの無自覚系主人公なのですか?今日だけでトラブルに遭いまくったのですよ。もし、この社のご利益が本物なら厄を寄せ付けなくなるのです』
「まあ、どっちにしろ【伝承石】の手がかりが欲しいから行くけど」
「じゃあ、GO!」
ミズキの号令で鳥居をくぐり、階段を上がっていくリュウセイたち。
エトに参拝の方法を聞いて実践しよという段階で気づく。
賽銭用の現金がない。
「そういえば、オレたち電子マネーしか持ってないもんな」
「じゃあ、3Dオブジェクト化したお金でも入れてミル」
「やめろ。ご利益どころかバチが当たるわ」
「お詣られる方も、もう少し気を聞かせてほしいヨ。せめて時代に合わせて電子決済を採用してほしいヨ」
「神様にそんな要求するやつ初めて見たよ。ん?エト、どうした?」
そこには綺麗な二礼二拍手一礼を終えたエトがジト目で見ていた。
『お賽銭がないなら『心』を込めてよく祈るのですよ。こちらはご利益という加護をもらう立場なのですから。ふざけていたら神様に失礼なのです』
まさかAIに参拝について説教されるとは思わなかった人間二名。
唖然とするが、言っていることは
参拝が終わった後もなにかイベントが起こるわけでもなく。
階段を下りながらリュウセイが疑問をつぶやく。
「いまだにゲームマップに表示が出てるのに、見つからないのはなんでだ?」
「届きそうで届かない…………モヤモヤする!!」
『一回ここを出て、周囲を探索してみ――――あっ』
「どうしたデス――――お!」
「そういうギミックか…………」
それは、鳥居の外。不可侵区域のエリア外に鎮座していた。
「参拝が決め手か――――不可侵区域もギミックに使うとか普通分からねえよ」
それとは無色の小さな結晶――――【伝承石】だった。
◆
「りゅー、りゅー、はやくどんな効果がある【伝承石】か見せてヨ!」
「エトも気になるのです!ギミックがめんどくさいやつほど、レア度が高いと聞くのです!」
「おう、じゃあ確認するぞッ!!」
キラキラとした目をふたりから向けられ、手に入れたばかりの【伝承石】の名前と効果が見えるようにメニュー画面を操作する。
そこには――――
【G級伝承:題名【星詠みの願い・真伝】】
カテゴリー:【戦闘】
保有スキル:【必中?★1】
効果:射撃武器に必中?効果を付与
(SP:5消費。効果範囲5m以内。効果時間10秒。CT10秒)
その名称が見えた時、リュウセイは驚く。
「また、真伝?しかも、星詠み!?なんか作為を感じるぞ!?」
『もしかして、【星詠みの導き・真伝】が発生の条件だったのではないのです?』
「それか!でも、星詠みかー…………」
「え?なんでりゅーは顔しかめてるノ?真伝ってすごいレアなのよネ?」
ミズキはまだゲームを始めてないことから、真伝の価値が分かっていない。
もし分かっていたら、「超レア当てといてなにが不満なんだッ!」と怒っていたはずだ。
「いや、そっちはいいんだ。スキルも優秀だし。でも、星詠みがな―…………」
「たしかエトちゃんの話じゃあクズなんだよネ?」
『でも、まだ伝承をひとつ見ただけなのです。この【星詠みの願い・真伝】では星詠みさんが改心してる可能性もあるのですよ』
「そうだな、エト。最初から決めつけるのはよくないよな。よし、使ってみるか!」
リュウセイは覚悟を決め【伝承石】の使用した。
満天の星空の下、ひとりの男が星を見上げている。
おそらく寂しそうに。
前回もそうだったが、男の顔がぼやけている。
正確には顔の上半分が見えない。
【伝承石】の等級が低いから情報が少ないのか。
それとも別の理由が――――
そう考えている間にも物語は進んでいく。
男の周りには無数の剣が墓標のように立っていた。
手にはいくつもの小石を持って、剣に向かって投げている。
それはどれだけ離れていても、ひとつ残らず当たっていた。
見もせずに。
男は誰に聞かせるでもなく呟く。
『なあ…………お前ら、知っているか?ヒトは死んだら魂が星になるらしいぜ』
『そんでな、流れる星になって地上に還り、生まれ変わるらしい』
『お前らも、いつか還ってくるのか?また、お前らと――――』
最後、男がなにを言ったのか聞こえなかった。だけど、リュウセイには――――
「――――遊べるのか?」
そう聞こえた気がした。
『マスター?』
エトの声で、リュウセイはハッと我に返る。
「悪い。物語に入り込んでたみたいだ」
「その様子だと、悪くない内容?」
「ああ……星詠みの印象がだいぶ変わったな…………」
リュウセイは物語の内容をふたりに語る。
この物語は、星詠みが仲間の魂が還ってくることを期待して再会を願うものだと。
『星詠みさんに何があったか気になる内容なのです…………』
「そうだな。【伝承石】を集めていけば、その答えが分かるかもな」
「hey!しんみりとした空気はここまでにするノ。こんなお通夜みたいなムードで家に帰ったらお母さんが心配するヨ。」
「わるい、ミズキ。話題変えるか、なんか楽しいやつ」
『そうですね。じゃあ――――マスターは【ランク戦】にはいつからデビューするのですか?』
「【ランク戦】かぁ…………まだ、スキルも揃ってないからなぁ。今日、やってみた感触と動画を見た感じだったら、みっつ上のランクまでだったらスキルなしでも行けそうだけど…………」
「おー、すごい自信だネ」
「でもなー。必殺スキルがこわいんだよ。効果が未知数でさ」
『なら、しばらくはそれを覚えるための【探索】を頑張るのです?』
「だな。まだ、スキルはふたつだし。しばらくは――――ん?なんだこれ?」
スキルを確認しようとして開いた画面に異変が起きていた。
【スキル一覧】に変化が起きている。
身に覚えがないスキルが追加されていた。
特に狙ったわけではない。
その組み合わせは本当に偶然だった。
【星詠みの導き・真伝】、【星詠みの願い・真伝】、射撃武器。
この三つの組み合わせで、ひとつのスキルが生み出された。
それは――――【伝承顕現】。
【神星領域:ロスト・フォークロア】における必殺スキルである。
◆
新しく得た【伝承顕現】スキルの試し撃ちを終えたリュウセイ。
その物語内容と目の前の光景を見て思う。
「星詠み……いろいろと台無しだよ…………」
星詠みに呆れていた。
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ここでは本編に書ききれなかったプチ情報を書いて行きます。
特に重要な情報は書いてないので読み飛ばしてもらってもOKです。
●ランク
このゲームのランクは上から――――
・レジェンド
・マスター
・ヒーロー★1~5
・ダイヤ★1~5
・ゴールド★1~5
・シルバー★1~5
・ブロンズ★1~5
・ルーキー
になります。
始めたばかりの初心者は全員ルーキースタート。
各種行動でポイントを貯めてランクを上げていきます。
ブロンズからヒーローまでは★1~5の段階があります。
ランクによって色んな影響があるゲームですが、それはヒーロー★5までです。
マスターから上は到達者が少なくなるので、カジュアル層でもたどり着けるヒーローまでが影響の範囲内になります。
マスターから上は名誉職みたいなものです。
マスターになれる人の人数制限はなく。
レジェンドになれる人の人数制限はあり。
戦闘職500席、それ以外500席になります
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