58.キノコ売却

■58.キノコ売却ばいきゃく


 ゆめにまでた、やっとこのシーンが現実げんじつのものとなった。

 キノコ売却ばいきゃくだ。


 それもいま、ムラサキキノコもウスベニタケもある。

 どちらかがハズレでも、片方かたほうれればセーフだ。


 ハズレならハズレで自分じぶんたちだけで美味おいしくべちゃうもんね。


 領主りょうしゅさまとかがらなくてくやしいおもいしてもおれらない。

 自分じぶんたちの知識ちしきのろってくれ。


 もんとおるときには、おんなばかりさんにんれてとおったので。


「おい、エド。両手りょうてじゃあまっちまうな。まさかさんほんうでがあるのか!」

「あるわけないだろ、べぇー」

「どこだ。せてみろ、ちくしょう。うらやましいぞ」


 とかバカにされた。

 いやぎゃくうらやましがられたけど、いいんだ。


 おれかくうでなんかないよ。悪魔あくまじゃあるまいし。


 門番もんばんとは顔見知かおみしりなので、これくらいのじゃれいはある。


 たしかにほんだと不便ふべんだな、とはおもった。

 右手みぎてにシエルちゃんがくっつくと、すかさず左腕ひだりうで確保かくほしたミーニャ。

 それを余裕よゆう表情ひょうじょうってうしろをついてくるさすがラニア。


 さて優位ゆういなのはだれでしょう。

 おれにもわからない。


 実益じつえきているのはまえ二人ふたりだけど、精神面せいしんめんではラニアの一本勝いっぽんがちだ。

 あとでくっついてくるかもしれないけど。


 ハーレムなら明確めいかく上下じょうげめないほうがいいとおもうので、ドローということでひとつ。


 になってあそぶのが一番いちばんだ、うんうん。


 おれは「おにいちゃん」あつかいで、将来しょうらいしろうまった王子おうじさまむかえにるかもしれないし。

 そんなことになったらおにいちゃんはいちゃうけどね。

 いないけど視聴者しちょうしゃのみなさんもおいかりだとおもうよ、それ。


 シエルちゃんは結局けっきょくってないけど水浴みずあびのご予定よていがキャンセルになってまだボロいピンクのワンピースのままだ。

 スラムがあるのでみっともないとひと皆無かいむだけど、おもってるひとはいる。

 内心ないしん自由じゆうまではおれらにはどうにもならない。


 たまにそういうかおをするおばさんがとおりかかるので、そのたびにシエルちゃんのつないでるがビクッと反応はんのうする。


 ちょっと可哀想かわいそうだったか。

 やっぱりさき茶色ちゃいろいミーニャの着替きがえをしてくるんだったかな。


 でももう半分はんぶん以上いじょう距離きょりすすんだ。

 いまからだと冒険者ぼうけんしゃギルドのほうがちかい。


 そのままギルドに到着とうちゃくした。

 いつものカウベルのおとになんだか安心あんしんする。


 やっといた。


 いつものように受付うけつけのエルフのおねえさんのところく。

 エルフは高慢こうまんといううわさのせいでれつみじかい。


 普通ふつうだとおもうんだ。いやミーニャには異常いじょう使つかってるからミーニャがわ純粋じゅんすいなエルフかなにかだとは推測すいそくできるんだけど。

 血統書けっとうしょとかないのでよくはわからない。ねこじゃあるまいし。ねこだけど。


「こんにちは」

「こんにちは、エルフさま

「そのエルフさまっていうのやめてほしい」

「わかりました。では御名ぎょめいをおりしてミーニャさまでよろしいですか?」

「まぁいいや」

「ではミーニャさまとおさま本日ほんじつはどのようなご用件ようけんで?」

「キノコをってほしいんですけど」

「キノコですか。まぁいいです。せてください」


 なぞのためいきをつかれたけど、せるのはタダだしせてみよう。


 おれがバッグに偽装ぎそうしてムラサキキノコとウスベニタケをす。


「こっ、これは!」


 めずらしくエルフのおねえさんが表情ひょうじょうくずす。


「「「おおっ!!!」」」

おれはムラサキメルリアタケとウスベニタケだとおもいます」

わたしにもそうえますが、めずらしいですね。人間にんげんはあまりキノコをべませんので」


 おねえさんがじっくり観察かんさつする。

 ここでいう人間にんげんはヒューマンのことだろう。

 エルフさんは自分じぶんたちを人間にんげんおなわくれていない物言ものいいをよくする。

 だからひとならばないんだけど。


「あの、このままることもできます。かく金貨きんか一枚いちまい金貨きんか二枚にまいとなります」

「そっか、金貨きんか二枚にまいか」

「それか両方りょうほうわせて金貨きんか一枚いちまい鑑定かんていをしてもらい、証明書しょうめいしょつきで本物ほんものであればですがムラサキメルリアタケが金貨きんかよんまい、ウスベニタケ金貨きんかさんまいになりますね。けではありますが、偽物にせものってくるようなひとではないですよね」


 キラッとおねえさんのひかる。

 なるほどおれたちを品定しなさだめするだな。

 でもおれはエルフとドワーフのナイフちだし、ミーニャはそのエルフさまなんでしょう。

 種族しゅぞくそのものの信頼しんらい当人とうにん信頼しんらいべつというかんがえかもしれないけど。


 おれだって鑑定かんていちなので、当然とうぜん後者こうしゃだ。


鑑定かんていで」

「じゃあ鑑定かんていですね。さき鑑定かんていりょう金貨きんか一枚いちまいこれは先払さきばらいでして」

「わかった」


 っててよかった金貨きんかちゃん。

 のこすくないけど大丈夫だいじょうぶ


「はい、金貨きんか

「ぽんっとしますね」

おれ自分じぶんしんじてるんで」


 鑑定かんていちだってばらせない雰囲気ふんいきだしね。

 だいたい鑑定かんてい内容ないよう他人たにんせられないので、おれ鑑定かんていちなんだ! と主張しゅちょうしたところで他人たにんのプライバシーをペラペラしゃべる以外いがい証明しょうめいできない。

 そんな趣味しゅみもないんで、ここは秘密ひみつということで。


 おぉおおお、ギルドのなかからてきたひと本物ほんものはじめてる。

 モノクルってやつ。かた眼鏡めがねともいう。


 それをつけた、こちらもえらそうな男性だんせいエルフさんがてきた。

 シルクハットはかぶってないが雰囲気ふんいきてきには紳士しんしのアレだ。


 クイッとげるようなポーズをしてじっとキノコをつめる。


たしかにこちらはムラサキメルリアタケ良品りょうひん。ウスベニタケ良品りょうひんですね。鮮度せんどちていません」

「でしょうね。わかりました。ではお約束やくそくどおり、金貨きんかにしてよんまいさんまい合計ごうけいななまい支払しはらいします」


 男性だんせいエルフはおれたちを一瞥いちべつしてから「ふんっ」とはなわらったあととなりのボーッとているミーニャを見張みはる。


「あっ、あなたさまは、もしや」

「クマイラス殿どの、むやみに鑑定かんていするのはマナー違反いはんですよ」

「わかっている。しかし、このとんがりみみ。この金髪きんぱつ。このオーラ、鑑定かんていせずとも間違まちがいなく」

「そうなのでしょうけど……わたしたちはひらのギルド職員しょくいんにすぎないのですから」

「わかっているとっている」


 カウンターしにミーニャをじっとつめる中年ちゅうねんのエルフさん。

 中年ちゅうねんといってもエルフだからかおわかいけど、それはそれでちょっとキモい。

 もしかしてあまりよろしくない趣味しゅみひとだろうか。


「おうつくしい。ミーニャようでしたか」

「そうです、にゃっ」

「……ハイエルフさまつらなるもの」


 ねこだったら全身ぜんしんたせてふるえるかんじになっている。


「ほら、こわがってます」

わたしをか? そ、そうか。すまない。そのようなつもりではなかった。失礼しつれいいたします」


 優雅ゆうが挨拶あいさつをしてっていった。


 ハーフエルフ? ってみんなこうなのだろうか。

 なんだかイメージがおかしくなりそうだ。


 キノコのおかねもホクホクだし、みんなでかんだ。

 ななまい一枚いちまい経費けいひなのでろくまいにんでわける。


 一人ひとり一枚いちまいはんだ。

 銀貨ぎんかはあるのでラニアにける。


「はい、ラニアちゃん」

「ありがとう、ございます」


 クルッときをえる。


「それからはい、シエルちゃん」

「えっわたし?」

「うん。自分じぶんたちでつけたキノコだから、均等きんとうり」

均等きんとうり?」

「あぁおな金額きんがくけるって意味いみね」

「いいの?」

「うん」

「ありがとう!」


 そそくさとピンクのワンピースのかくしポケットに金貨きんか銀貨ぎんかをしまう。

 大切たいせつそうにポケットをうえからなぞっていた。


「あぁ、そうそう、これからもしばらくうちにいるつもりならおれ代理だいりあずかってもいいよ。必要ひつようならおれからしてくれればいいから」

「うん! じゃあそうするみゃう」

「あっああ」

「でははいおかね、おねがいします。――それからわたしも、しばらくお世話せわになりますみゃう」


 そういってあたまげた。

 ボロいふくであっても、すこ上品じょうひんえたのはおれだけの秘密ひみつだ。


 こうして結局けっきょく、シエルちゃんはしばらくうちのということではなしはまとまった。

 ギードさんとメルンさんには説明せつめいしないと。

 それからエルダニアに明日あしたかないといけない。れていくしかないか。

 食料しょくりょうとかは十分じゅうぶんもっていくので大丈夫だいじょうぶだけど、大所帯おおじょたいだな。

 せわしなく準備じゅんびすすんだ。


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