59.馬車の旅

■59.馬車ばしゃたび


 午後ごご冒険者ぼうけんしゃギルドでキノコの売却ばいきゃく完了かんりょうした。


「んじゃあおかねはいったし、シエルちゃんはふくおうか」

「え、わたしみゃう?」

「うん」


 以前いぜん、ミーニャがったリユースふくゾーンにく。


「あのね……わたしでも」

「さすがにそのふくはちょっと目立めだつから」

「そっか。どれにしようかな、みゃぅみゃぅ……」


 さがしてきたのはピンクのほとんどおなふくだった。


「あのね、このピンクのふく。おかあさんがせてくれた、みゃう。おかねなくてわたしるのにせめてふくくらいはってって、みゃぅ」

「なるほど、やさしいおかあさんだったんだ」

「うん。それから最後さいご夕食ゆうしょくはトマトのスープをべさせてくれたの。いつもはトマトは絶対ぜったいダメっていうみゃうのに」

「よかったね」

「うん。でもつぎ首輪くびわをつけようとしてきたこわひとがきて、わたしげてきちゃったみゃう」

「そっか」


 奴隷どれいしょうっておっかないイメージだからなんとなく気持きもちはわかる。


 なるほど、そういう理由りゆうだったのか。

 それでトライエから三日みっか以上いじょうはなれたむらなのかな。

 そこからげてきて途中とちゅう脱走だっそう奴隷どれいだとおもわれてつかまりそうになってまたげてきて。

 トライエまでおれいえまえ力尽ちからつきていたということか。


 あたらしいワンピースはまえのワンピースの面影おもかげがある。


 さすがに金貨きんかはしないので、所持金しょじきん銀貨ぎんかわたして決済けっさいをした。


 シエルちゃんは終始しゅうし機嫌きげんで、ワンピースをたまにながめたりしていた。


 そんなこんなで準備じゅんびすすんでよるだ。

 おれはミーニャとシエルちゃんにはさまれてねむることになった。

 少女しょうじょのサンドイッチはあたたかいけれど、これはこれで青年せいねん思考しこうおれにはドキドキする。

 ひと部屋へやにみんなでるからかなりせまくてくっつかないとれないのだ。

 これは不可ふか抗力こうりょくなの。

 両手りょうてはな両手りょうてはな、とおもってる。




 さてあさになった。


 さてうちのになったので今度こんどからシエルもミーニャ同様どうよう基本きほんてとする。


 おとなりさんのルドルフさん、クエスさん夫婦ふうふ挨拶あいさつをする。

 シエルをすこにしている様子ようすだった。おたがねこ獣人じゅうじんなのでになることがあるのかもしれない。


 しばらく留守るすにすることと、エッグバードのたまごのお世話せわをおねがいしてきた。

 たまごべてしまってもいいし、ギルドにってもいい。

 もちろんれるならドリドン雑貨店ざっかてんでも自分じぶん露店ろてんでもいいけど。


 たぶんいっ銀貨ぎんか一枚いちまいくらいにはなる。


 おれ常識じょうしきではこの値段ねだんだとかなりたかい。

 実際じっさいにはもっとたかいかもしれないけどらない。


 これだけでも一人ひとりならきていける値段ねだんだ。


 普段ふだんおれ紹介しょうかいしたかごづくりを毎日まいにちしているはずだ。

 販売はんばいルートはあるのでつくれるなら何個なんこでも大丈夫だいじょうぶみたい。


 すっかり安定あんてい収入しゅうにゅうになって顔色かおいろまえよりだいぶいい。


「はい、では留守るすはおまかせください」

「んじゃたのみました」


 今日きょうのギードさんとメルンさんはラニエルダにたときにていた一張羅いっちょうらだ。

 貴族きぞくのおしのびの衣装いしょうくらいの豪華ごうかさのそこそこ立派りっぱ服装ふくそうだった。


 おれとギードさんだけでさき城内じょうないき、商業しょうぎょうギルドで馬車ばしゃりてくる。

 たりまえだけど馬車ばしゃだけではなくとううま一緒いっしょについてくる。


 馬車ばしゃのほかに、アースドラゴン土竜どりゅう竜車りゅうしゃ、ランバードという走鳥そうちょうとりぐるまがある。

 馬車ばしゃとう土竜どりゅうとう走鳥そうちょうよんく。


 おれたちは普通ふつう馬車ばしゃりた。

 土竜どりゅう一番いちばん力持ちからもちで、走鳥そうちょう一番いちばんはやい。

 うま平均的へいきんてき一番いちばんやすい。


 一応いちおう幌馬車ほろばしゃだ。

 ただしほろはかなりの年季ねんきのボロボロのものだ。


 ギードさんは御者ぎょしゃ経験けいけんがあるそうなので大丈夫だいじょうぶだった。

 そしてエルダニアにはこ荷物にもつれる。


 これはトライエからエルダニアに最初さいしょから輸送ゆそうする予定よていだったもので、おれたちが馬車ばしゃをレンタルしたのをった商業しょうぎょうギルドのひと依頼いらい輸送ゆそうするものだ。

 これで実質じっしつ馬車ばしゃのレンタルりょう割引わりびきになってほとんど無料むりょうだった。

 しかし料金りょうきん保証金ほしょうきん先払さきばらいで、依頼いらいりょう後払あとばらいなので、先立さきだつものが必要ひつようというね。


「では、出発しゅっぱつ


 御者ぎょしゃせきでギードさんが馬車ばしゃうごかす。

 おれ補助席ほじょせきすわってそれをながめる。


 うまはギードさんの指示しじしたがってゆっくりとうごす。

 とうきの馬車ばしゃ最初さいしょはすごくおそくてすこしずつはやくなっていく。

 馬力ばりきひくいというか、そういうものらしい。

 くるまってもっと青信号あおしんごうでビューンとすすんでいくけど、あれとは全然ぜんぜんちがった。


 大通おおどおりをとおって東門ひがしもんかった。

 そしてもんまえ徐々じょじょにスピードをとす。

 馬車ばしゃくるま以上いじょうにすぐにまれない。

 原始的げんしてきなブレーキは一応いちおうついているけれど、そう簡単かんたんにはいかないらしい。


 操縦そうじゅうにはさきちから必要ひつようみたいだった。


 ただほか通行つうこうしている馬車ばしゃかずおおくないので、そのへんはらくだ。


 ドリドン雑貨店ざっかてんのちょっとさき一度いちど馬車ばしゃめる。


 そこには家族かぞくとラニアが待機たいきしていた。

 それ以外いがいにも馬車ばしゃよんだい停車ていしゃしている。


「エドぉ」

「ミーニャ、ラニア、シエル」


 おれ補助席ほじょせきからる。


「みんなはうしろね」

「はーい」


 後部こうぶ座席ざせきにみんながんでいく。

 荷物にもつおれのアイテムボックスにほとんどはいっている。


 まんいちのため、イルクまめ着火ちゃっか装置そうちなべ水筒すいとうなどいくつかはそのままんでいる。

 おれんだり行方不明ゆくえふめいになったときに、じににしない最低限さいていげん装備そうびんでいる。


 ギードさんがまえ馬車ばしゃれつ挨拶あいさつった。


「どうも、エルフにつらなるもののギードです。冒険者ぼうけんしゃランクはたしかBだったかな」

「「おぉぉ」」

「こりゃ心強こころづよい」

「ブランクがありまして。今日きょうから三日みっかかん途中とちゅうのエルダニアまでですがよろしくおねがいします」

「はいよ。じゃあ隊商たいしょう出発しゅっぱつ


 っていたのは一緒いっしょ行動こうどうしてくれる隊商たいしょうだった。

 複数ふくすう商人しょうにん護衛ごえい行動こうどうともにすることで、犠牲ぎせいらすのだ。


 馬車ばしゃふたたすすみだして街道かいどうすすむ。

 うちの馬車ばしゃ最後尾さいこうびだ。


 えっとエクシス森林しんりんとエルトリア街道かいどうだったとおもう。


 エルトリア街道かいどうはエルダニアとトライエをつなぐ街道かいどうだ。

 あいだにはちいさいまちいっしょあるだけで、あとはその前後ぜんご野宿のじゅくいっかいずつある。


 見張みはやまからはるかとおくにエルダニアがえているとっても、その距離きょりはかなりある。


 馬車ばしゃはトコトコすすんだ。


 エクシス森林しんりん左手ひだりてにメルリアがわ右手みぎてにしてエルトリア街道かいどうをひたすらすすむ。

 街道かいどう途中とちゅうからほそくなって馬車ばしゃいちだいぶんはばしかない。


 これではすれちがいできないとおもうんだけど、500メートル間隔かんかくくらいで待避所たいひしょみたいなひろくなっている場所ばしょがある。


 なかにはひろ待避所たいひしょもあって、さわちかくにながれていてちいさなはしがあり、煮炊にたきをした形跡けいせきがあった。


 隊商たいしょう馬車ばしゃ街道かいどうすすんでいく。

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