第二部 トライエ市民と喫茶店

52.トマトとキクラゲ

■52.トマトとキクラゲ


 木曜日もくようび


 曜日ようびかぞえているが何月なんがつ何日なんにちじつらないという。

 ちゃんとしたカレンダーなんかないし、いやまあまちにいけばあるとおもうけど。


 そろそろはるわりだ。


 朝食ちょうしょくわり、そわそわしているミーニャに今日きょう予定よていげる。


今日きょうもりこう」

「ちょっとひさしぶりだね」

「あぁ、最近さいきん戦争せんそうとかあったしな」

「う、うんっ」


 戦争せんそうといってもガキンチョの衝突しょうとつだが、おれたちにも影響えいきょうするのでこまる。


 どうしてもしい食材しょくざいがあるのだ。

 まちけばっているにはっている。


 しかしたかいのは確実かくじつだった。

 まえ値段ねだんたことがあるが金貨きんかってても貧乏性びんぼうしょうおれにはうのはためらわれる。


 そこで自生じせいしていそうなもり探索たんさくする。


 いつももり探索たんさくはしているけれど、見逃みのがしなどもおおい。

 たかくさなどにかくれているとつけにくいのだ。


 いつものようにラニアをれてきて、もり入口いりぐちく。


「んじゃいつものように祝福しゅくふくねがい」


「ラファリエールさまわたしたちをおまもりください」


 ミーニャが聖印せいいんっておいのりをしてくれる。

 なんか神聖しんせい雰囲気ふんいきで、これぞ祝福しゅくふくだった。


もりのちょっとみぎのほうへってみよう」

「うん」

「はいっ」


 あまり右奥みぎおく見張みはやまこうがわのほうへったことがない。


 ラニアも真剣しんけんかおつえかまえてこたえてくれる。


 もりとひとくちにってもその雰囲気ふんいき植生しょくせい一様いちようではなく、バラつきがある。


 今日きょうこそは発見はっけんしたい。


 すこすすんだけた場所ばしょだった。


「あっあかがなってます。美味おいしそうですね!」

「にゃぁ、すごーい」


 そうトマトくんきみだよきみ


 おれもとめてやまないもの。――トマト。


 一応いちおう、いつもの儀式ぎしき鑑定かんてい


【トマト 植物しょくぶつ 食用しょくよう


 トマトケチャップにトマトソース、BLT……ベーコンレタストマト。

 トマトとタマネギのサラダ。

 あとはわすれてたピザ、トマトパスタなどのイタリア料理りょうりけい


 うちではケチャップ以外いがいなまおおかったけど、その活用かつようおおい。

 ハンバーグのソースにもれたりする。

 あれはとんかつソースみたいな茶色ちゃいろいソースとケチャップをおなじくらい使つかう。


 というがする。

 おれ前世ぜんせでは小学校しょうがっこう時代じだいまで母親ははおや料理りょうりをするのをよこていることがおおかった。

 だからだいたいの材料ざいりょうとかはなんとなくっている。

 母親ははおや料理りょうり上手じょうずだったのだ。

 でも現代げんだい日本にほん出汁だし味噌みそとかわせ調味料ちょうみりょうとか時短じたん食材しょくざいなどもそこそこ使つかっていたので、本格ほんかくまではいかない。

 いまとなっては記憶きおくすこ曖昧あいまいだ。


 まさに素人しろうと見様見真似みようみまねだけど、からきし無知むちよりはマシだとおもうほかない。

 分量ぶんりょうまでとなるとかんかん


「やったな、トマトくんきみさがしていた」

「にゃは」


 おれはトマトを収穫しゅうかくして収納しゅうのうする。

 なつにはまだはやいだろう。

 はやがなる種類しゅるいなのかもしれない。

 もしくは自然しぜんではたねちてすぐたので、はやめに成長せいちょうしたのか。


 不思議ふしぎなことに一度いちどつけるとそのあとおなじものをつけやすい。

 トマトもほら、またみのっている。


 こういう「一度いちど突破とっぱしてしまえばあとは簡単かんたんになる」という現象げんしょう名前なまえがついていたようながする。

 ブレイクスルーかな、学術がくじゅつ用語ようごだと。

 ほかかたかんがえてみたけどおもいつかない。

 100メートルそうでも10びょうかべというのがあるとく。



 さてもり探索たんさくつづく。


 またゴブリンだ。

 今日きょうは4ひき


「ラニア、ほどほどに」

「なんですか。ファイアボールなんて使つかわないわよ」

「そうしてくれ」


 おれとミーニャでなぐかる。

 ミーニャはつえだ。

 メイスではないがたような機能きのうはある。


 なんとかラニアの魔法まほう攻撃こうげきふくめて、ゴブリン4ひきたおすことができた。

 ささっと簡易かんい解体かいたいをして魔石ませきだけかえる。


 あとは放置ほうちだ。オオカミさんがべるだろう。

 じつえばそのオオカミのほうがゴブリンよりこわい。


 さてすこ移動いどうして、またトマトを収穫しゅうかくした。

 幸先さいさきわるくない。


「お、この倒木とうぼく、ええぞええぞ」

「エドなに? へんなくろいのついてるぅ」

「うん、これがねべられるんだ。キクラゲっていうキノコだよ」

「ふーん。美味おいしいの?」

「えっと、普通ふつうかな。でもあじ変化へんかがあるとたのしいでしょ」

「なるほどぉ」


【キクラゲ キノコ 食用しょくよう


 キクラゲは日本にほんでもにしたことがある。

 おお公園こうえんれたなどによく群生ぐんせいしている。


「どんどんろう」

「うん」


 ぐふふキクラゲをゲットした。

 これといった用途ようとおもいつかないが、なんだろうか。

 ラーメンのふく惣菜そうざいなどにはいっていたりする。

 おおいのはやし中華ちゅうかと、八宝菜はっぽうさいなどの中華料理ちゅうかりょうりだ。


 あとはキクラゲと野菜やさいいたものとかもありかな、あんまりべたことはないが。


 もういっぽんちかくの倒木とうぼくにもキクラゲはえていたので収穫しゅうかくする。

 たねとかきんとか、おそらくちかくにちるから、ちかくにあるという自然しぜん法則ほうそくなのだろう。


 合間あいま合間あいまに、過去かこつけたホレンそう、タンポポそう、フキなどもってあるく。

 それからサトイモもあった。


 そのへんえまくっているものとしてほかにも、ヨモギ、ドクダミがあった。

 どちらも健康茶けんこうちゃなどにれたりする。


 おれはホクホクかおかえっていく。


 いろいろな食材しょくざい自生じせいしている世界せかいでよかった。

 この世界せかい流通りゅうつうしてるなら世界せかいのどこかにはえているから、えてて当然とうぜんともいえるけれど、それが自分じぶんたちの土地とちとはかぎらない。

 とくにトマトは地球ちきゅう世界せかいであれば新大陸しんたいりく由来ゆらいなので、前世ぜんせ記憶きおくしてくると「ジャガイモ警察けいさつ」とかわれていたがする。

 それは中世ちゅうせいヨーロッパにジャガイモはないから中世ちゅうせいふうファンタジーにもジャガイモはないはずだ、おかしい、という主張しゅちょうのものだけど、この世界せかいではやはりそうではないということだろう。

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