26.お茶の権利

■26.おちゃ権利けんり


 月曜日げつようびひる


 おひるはんをラニアと一緒いっしょべる。

 本日ほんじつのメニュー。

 イルクまめにくいたもの

 カラスノインゲン、ホレンそう、タマネギの山椒さんしょうき。

 フキの塩煮しおにのこもの)。

 なまタマネギ、レタス、タンポポそうしおサラダ。

 ハーブティー。


「この山椒さんしょうっていうのもピリッてして、美味おいしいです」


 そういえばラニアには山椒さんしょうすのははじめてだったか。


 一緒いっしょにいろいろなあじって、いろいろな美味おいしいをろうな。


「おい、エド、いるか、エド」

「どうしたん?」

「しらばっくれてもダメだぞ。けんってたってメアリーが。どうしたんだよ」

「ああ、ちょっとわりのいい仕事しごとがあって、おかねはいった」

「なんだよ、それ。おまえばっかり」


 えっと、ガキ大将だいしょうというやつだ。名前なまえはハリス。はっさいだな。


「まあ、いろいろあってね」

「ちっ、かねのネタは秘密ひみつかよ」

わるい」

「いや、まあしょうがねえよな」


 べつわるいやつではない。

 ただあまりいい印象いんしょうすくないだけで。


「そうだ、ハーブティーかいぬ麦茶むぎちゃんでくか?」

「あ、ああ、くれ、いぬ麦茶むぎちゃってやつを。ハーブティーはあんまりわなかった。いぬ麦茶むぎちゃらん」

「そっか」


 お自分じぶんたちがおわりするつもりだったので、すでにかしていた。

 いぬ麦茶むぎちゃをすぐにれる。


 予備よびのコップ、よかったあった。あんまりうちにはかずがないので。


「サンキュ。お、おう、うまいなこれ」


 ハリスはまるくする。


「でだ、そのハーブティーといぬ麦茶むぎちゃおれってる」

「はああ??」

「だからおれ仕入しいさきで、ドリドン雑貨店ざっかてんおろしている」

「いいのか、って」

「ああ、その権利けんりをおまえにやるよ」

「マジか」

「うん、本当ほんとう。そのわりげのわり、くれ」

わりか、まあ、いいかな。どんくらいもうかるんだ?」

「あまりもうからないな、いっ週間しゅうかんでザルに山盛やまもはいずつしゅうかい合計ごうけい銀貨ぎんか十六じゅうろくまいだな」

銀貨ぎんか十六じゅうりょくまいって、おまえ金貨きんかいくじゃねえか」

いまからげはちるから」

「そ、そうだよな、そうか」


 金貨きんか想像そうぞうしてハリスはのどらす。


 普段ふだん日雇ひやと労働ろうどうだといちにち銀貨ぎんか一枚いちまいおれたちのいいときの相場そうばだ。

 これならばいちかい。


 正直しょうじきしゅう二日ふつか、スペアミントとイヌムギを収穫しゅうかくしてすと、いちにち作業さぎょうになってしまう。

 もちろんしているあいだにスプーンづくりはすすむけど、いまもり探検たんけんなどをしたい。


 ガキ連中れんちゅうでも、収穫しゅうかくにそれほどはないし、べつにキノコとちがって鑑定かんてい必須ひっすではない。

 どうせ同業者どうぎょうしゃてくるのも時間じかん問題もんだいだった。

 それよりは、権利けんりまるごとって、いちわりでももらったほうがとくだ。

 なんたって権利けんりといえば不労所得ふろうしょとくだからな。


 ハリスならおれよりかおくぶん、同業者どうぎょうしゃにらみもく。

 貧乏びんぼうなガキ連中れんちゅう権利けんりっているとれば、いてくれるかもしれない。

 そんなにあまくないかもしれないけど。


「いつやめてもいい。おみせからしょうひんがなくなるだけだ」

「まあそうだが」

「とりあえずれたらそのときはわりだかんな」

「わかった」


 べつ契約書けいやくしょもない、ちょろまかしてもいい。

 さっきもったが不労所得ふろうしょとくだ。

 元々もともとからでてきたような利益りえきてにしていない。


「ハーブティーのつくかた講習こうしゅうするけど、どうする?」

「すまん、仲間なかまあつめてくる」


 ハリスがった。


「ねえ、いいの? 権利けんり手放てばなしたりして、ハリスなんかに」


 ラニアがちょっと不満ふまんそうにってくる。

 そういえばラニアはハリスがきらいだったな。

 理由りゆうはハリスがむかしおれかたきにして、なぐりつけたことがあるのが、たいそう不満ふまんってるんだったか。

 いや、あれは言葉ことば言葉ことばおれわるかった。


『エドくんなぐかえさないなら、ハリスがあやまるまでわたしわりになぐつづけてやる』


 ってってたのをなだめたのはおれだ。

 いやあ、あんときはおれぬかとおもったわ。

 とめられてよかった。


てき使つかいようなんだよ。それにあんときはおれかえしたからお相子あいこだった」

「そうなの? でも」

いまべつ敵対てきたいしていない。それにおれのほうがたぶんつよい。自分じぶんでやるのが面倒めんどうくさいことを、やらせてしかもおかねがもらえる。こっちは利益りえきしかないんだ」

「そうなんだ、ふんふん」

時給じきゅうというのがあって、おちゃ頑張がんばってもいっ週間しゅうかん銀貨ぎんか十六じゅうろくまいだろ」

「うん」

「でもいち収入しゅうにゅうだけど、ジャムはいくらだった? つぎはもっとたか仕事しごとさがす」

「あっ、なるほど、そういうことね。エドくんあたまがいいわ」


 ラニアが理解りかいしたようで、笑顔えがおもどってくる。

 最初さいしょハリスがはいってくるときは、めっちゃこわはいしてたもん。


 よし、これでコスパがわる仕事しごとる。


 ちなみにのほほんミーニャちゃんはよくわかっていないもよう。

 ミーニャだってろくさいだもんな、小学しょうがく一年生いちねんせいか。

 ラニアがかしこすぎるだけだ。

 おれ前世ぜんせがあるからノーカンな。

 あとミーニャはエルフぞくなので、成長せいちょうがそもそもゆっくりかもしれん。


 このあと草原そうげんまえ集合しゅうごうしたガキ連中れんちゅうに、おれはスペアミントとイヌムギがどのくさおしえた。

 間違まちがえるはさすがにいなかった。


 そのあとハリスのいえって毛布もうふして、乾燥かんそう工程こうてい説明せつめいした。

 それからドリドンさんに仕事しごとぎの連絡れんらくをした。


「ということでドリドンさん、つぎからおちゃはハリスが仕事しごとするから」

「いいのか?」

「ああ、うん。ほかにも納品のうひんしないといけないものもあるし、アレとか」

「ああアレな。そうだな、了解りょうかいたのんだぞハリス。きみ立派りっぱ仕事しごとだから、よろしく」


 おれにはジャムがあるし、ほかにもえる予定よていなので。


 ハリスはあのドリドンさんが握手あくしゅもとめてきたので、得意とくいになっておうじていた。

 ちょろい。


 わるいな、おれはもっと時給じきゅう効率こうりつのいい仕事しごとするわ。

 子供こども仕事しごとにはちょうどいいだろ。


 腹黒はらぐろいのはどうみてもこちらです。あははは。

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