19.ジャム量産

■19.ジャム量産りょうさん


 つづ金曜日きんようびあさ

 べついそぎではないが、はやいにしたことはない。

 ラニアはかえってしまったけど、またつかまえにこう。


 おれたちはちょっとまずいけど、ラニアのいえかう。

 ラニアがいないとたいモンスターさくこころもとない。


「ラーニーアーちゃーんー」

「はーい」


 ラニアのちょっとずかしそうな返事へんじがかわいい。

 毎回まいかいこれでいくかな。


「あのね、騒動そうどうのジャムをりずに量産りょうさんしようとおもって、今日きょうもりきたいです」

「わ、わたし出番でばんですね」

「そういうことです。よろしくおねがいします」

「はい」


 そうって、ハイタッチをめる。


「ちなみにらぬラクーンの皮算用かわざんようもうわけないんだけど、まえ三分さんぶんいちでいい? もちろん現金げんきんで」

「いいよっ」

 こちらにもたぬきならぬラクーンの皮算用かわざんようという言葉ことばがある。

 ラクーンはたぬきやアライグマに魔物まもの一種いっしゅだ。断熱性だんねつせいのある毛皮けがわ貴族きぞく珍重ちんちょうされている。

「いいよっ」

「あぁ、ありがとう」

「こちらこそ、だって(ごにょごにょ)き、金貨きんかなんでしょ?」

「まあそうだねっ」

「はああ」


 おれたち勇者ゆうしゃパーティーもとい、成金なりきん予定よていパーティーはスラムがいすすむ。

 気分きぶんはもう凱旋がいせんだ。


 マップチップをすす民草たみぐさながめながら、堂々どうどうとパレードをする。

 といった気分きぶんで、スラムがいける。


 とくだれにも邪魔じゃま歓迎かんげいもされず、途端とたんだれもいない草原そうげんる。さびしい。

 まあ、あれだよあれ。


 こういうのは気分きぶんなんだ。


 今日きょうくさ収穫しゅうかくしつつ、すすむ。大事だいじなごはんになるので、一応いちおう真剣しんけんにやる。

 分別ふんべつくらいはする。中身なかみ高校生こうこうせいなので。


 そういえば高校生こうこうせいまでの記憶きおくしかない。そのあとはどうなったか記憶きおくがない。

 んでしまったのだろうか。トラック転生てんせいだろうか。

 学校がっこう登下校とうげこうとか。


 葬儀そうぎには友達ともだちゼロにんでもクラスメイトはてくれたのだろうか。

 まあ、くるよな、現役げんえきなら。



 もり到着とうちゃく

 今日きょうも、シュパッと祝福しゅくふくをしてもらい、もりはいる。


 どんどんやろう。


 このまえのリンゴの目指めざしつつ周囲しゅういひろめにて、ほかにめぼしいものがないかさがす。

 いつなんどきチャンスがんでくるかわからない。


 お、おおおお。ほんあおリンゴのだ。たわわですよ、たわわ。

 おっぱい以外いがいはじめて使つかったわ、たわわ。

 すこしたちているが、まだまだたくさんなっている。


「ここにもリンゴがある」

「「おおお」」


 おれたちは、おかねにおいにのどらす。

 おかねがあれば、美味うまいものがべられるとすでに学習がくしゅうしている。


 とくにく


 本当ほんとうならにくりたいんだけど、かたがいまいちわからない。

 日本にほんでは狩猟しゅりょう免許めんきょとかないと、ほとんどることができないし、場所ばしょ獲物えもの種類しゅるいわな種類しゅるいなど限定げんていされている。

 そんなの高校生こうこうせい知識ちしきがあるひとすくないだろう。


 あおリンゴ、りまくりんぐ。


 このへんはまだ人間にんげん気配けはいがするので、もしかしたら動物どうぶつやモンスターがすくないのかもしれない。

 ゴブリンは人間にんげんおそうこともあるが、こわがることもある。あんまりあたまがよくなさそうなので、なにかんがえていないというせんもある。


 とにかくそういう理由りゆうで、たまたまらされていないのだろう。


 ちたリンゴにはネズミかリス、ウサギがかじったあとがある。

 まったなにもいないというわけでもないらしい。


 リンゴ200あまりを収穫しゅうかくした。


大量たいりょうだあ」

「ああ、いいね」

幸先さいさきいいですね」



 そしていっぽんのリンゴの目指めざす。


「あった」

「まだのこってますね」


 にはのこしてあった100あまりのリンゴがなったままだった。

 このみじかあいだだれかもしくは魔物まものなどにらされていないか、ついついかんがえていた。


 あんずるよりむがやすし、とはうが実際じっさい可能性かのうせいというのは、ゼロじゃなければ不安ふあんになる。


 ゴブリンとのヒットりつだってそうだ。


 とにかくてきまえろう。


「さっさとっちゃおう」

「う、うん」

「えへへ、おかね


 ミーニャのかねになってる。しょうがないとはいえ、危険きけん兆候ちょうこうだ。


「ミーニャ、ラクーンだぞ。さきかねかんがえちゃダメだ。おかねおぼれると危険きけんだ」

「え? あ、うん、よくわかんないけど、わかったぁ」


 こりゃダメだな。

 単純たんじゅん思考しこうだから執着しゅうちゃくまではっていないのだろう。

 ただまえにおかねがちらつくだけで。


「リンゴ、リンゴ、リンゴ……」


 ミーニャちゃんはなぞのリンゴの即興そっきょううたいながら、収穫しゅうかくすすめる。

 おれたちは、集中しゅうちゅうみだされるけど、頑張がんばって作業さぎょうする。

 おかねではなくリンゴに注目ちゅうもくしてくれているだけでもたすかる。


 こうなってくると一種いっしゅ仕事しごとだな。

 べつにニートを目指めざしているわけじゃないけど、仕事しごとだとおもうとやるってくる。

 しかしそうなると、おかねへの欲望よくぼうもたまには重要じゅうようだ。


「ほとんどっちゃったね」

「ああ」


 はほとんどっぱだけにもどり、リンゴはひどくいたんでいるものだけのこしてある。

 これはリスとかがべるだろう、らんけど。



 はやめにかえる。こういうときにエンカウントはぜひともけたい。

 ある意味いみ一番いちばんけないのはこういうときだ。


 貧乏人びんぼうにん小金こがね相当そうとうあるいているときが、一番いちばんドキドキする。


 もり無事ぶじけた。


 そのまま草原そうげんけた。


「ふぅ」

「ああ、もどってきた」

「えへへ、まち安心あんしんだね」


 ここは草原そうげんからすぐのスラムがいはしだけど、非常ひじょうく。

 リンゴはバッグとアイテムボックスにパンパンにはいっている。

 容量ようりょうはぎりぎりといえる。

 はやかえろう。


 難癖なんくせとかつけられませんように、といのりながらいえまでもどる。

 自分じぶんいええたときは、なみだちゃいそうだったわ。


もどって、きた」

「ああ、うん、ごめんください」

「ただいま、ママぁ」


 ミーニャは案外あんがいあっけらかんとしている。

 ラニアは自分じぶんいえではないので、普通ふつう

 おれ完全かんぜんに、腑抜ふぬけになっている。


「あの、エドくんわるいんだけど、ジャムにしないの?」

「ああそうだな」

「やりかたてたからわかるわ、ナイフしてもらってもいい?」

「いいよ」


 使つかえないおれわって、ラニアがつくってくれた。

 リンゴをおおめにれてジャムをなべる。


 おひるのことはわすれていた。


 だいいちだんのジャムができたら、ちょうどおひるだったのでごはんにした。

 うちでは普通ふつうになってきた各種かくしゅ野菜やさいつき料理りょうりも、まだラニアは遠慮えんりょがちにべた。

 今朝けさジャムでおこられちゃったのが、まだいてそう、マジごめんな。


 午後ごごおれ復活ふっかつして、ジャムをひたすらつくる。

 こうして夕方ゆうがたにはジャムがやく40ビン完成かんせいしたのだった。


 ちなみにきビンは手持てもちのおかねとラニアの先行せんこう投資とうしで、ドリドン雑貨店ざっかてんけにったんだけど、用途ようと当然とうぜんかれた。

 そしてジャムの現物げんぶつたドリドンさんはそのでビンの無償むしょう融資ゆうしめて、おれたちからおかねらなかった。

 ドリドンさんマジ、商才しょうさいあるわ。

 デキる商人しょうにんあいにすると、らくでいい。


 こうしてジャムは、無事ぶじにドリドン雑貨店ざっかてんのスポット目玉めだま商品しょうひんとして、たなかざった。


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