18.ジャムの値段

■18.ジャムの値段ねだん


 金曜日きんようび

 日本にほんでは、キンキンキラキラ金曜日きんようびとかうらしいけれども。

 この世界せかい日曜日にちようび安息あんそくで、土曜日どようびやすみではないので、そういうかたはしないらしい。

 もっとも、ギードおじさんなんかは定休ていきゅうはなく、ほぼ毎日まいにちはたらいていたけど。


 ギードさんとおれさくのスプーンは、まずドリドン雑貨店ざっかてんでまとめてりしてもらった。

 すでに合計ごうけい二十五にじゅうごってもらい、ひとつ300ダリル、合計ごうけい銀貨ぎんかななまいはん銀貨ぎんか一枚いちまいになった。


 そのままドリドン雑貨店ざっかてんかれている。ちょくちょくれているもよう。


 このままだと飽和ほうわしてしまうので、ドリドン雑貨店ざっかてん経由けいゆで、余剰よじょうぶんはトライエの商店しょうてんのほうへ、りに予定よていらしい。

 こういう小物こものおなじものを大量たいりょうやすそろえたい、食堂しょくどうとかに需要じゅようがあるそうな。


 ゴーン、ゴーン、ゴーンとあさかねる。

 あさ以外いがい夕方ゆうがたまでっているけど、あまり意識いしきはしない。


 あさ支度したくをしてあさはんべる。


 今日きょう大体だいたいおなじだ。

 イルクまめとカラスノインゲンの山椒さんしょうき。

 ホレンそう塩茹しおゆで。

 フキの塩煮しおにのこもの)。

 いぬ麦茶むぎちゃ


 まめ山椒さんしょうでピリッとからあじにしてみた。


「あっ、なにこれ。ピリッとする」

「ほう、これがからいんだな、これはこれで」

美味おいしいわね」


 山椒さんしょうもそこそこ評判ひょうばんかった。


 その朝食ちょうしょくわったころ。


「すみません、ごめんください。エドくん、ギードさん」


 だれかとおもったら、あまりかけないラニアの母親ははおやヘレンさんが、突撃とつげきたく訪問ほうもんをしてきた。

 おれたちのようにボロではなくみどりふくている。かみはラニアそっくりで水色みずいろちか青色あおいろだ。


 なんだろう「よくもうちのむすめれまわして傷物きずものにしたわねムキーゆるせない」とかわれたらどうわけ謝罪しゃざいしよう。


「うちのむすめが、あんなに、いいものをもらってきて、本当ほんとうにご迷惑めいわくではありませんか?」


 あれ、ちょっとよわいというか、なんかちがう。


 いえなかはいってきたヘレンさんはうしろにラニアをれているが、ラニアは涙目なみだめだった。

 したいて、くやしそうに、かなしそうにしている。


「いやいやいや、ジャムのことですか? 自分じぶんたちでってきたものを調理ちょうりしただけですから、全然ぜんぜん問題もんだいないんですよ?」

「そうですか、でも……無料むりょうというわけにはいきません」


 そういうと、ヘレンさんが一枚いちまい硬貨こうか両手りょうて丁寧ていねいしてくる。

 銀貨ぎんか一枚いちまいなら、ほほーんともらってもいい。

 しかしそれは金色きんいろ黄金色こがねいろかがやいていた。



 ――金貨きんか一枚いちまい



「えっ、そんなにするのジャムが」


 おれおもわずつぶやいてしまう。


「だってジャムですよ、ジャム、あんな高価こうかなもの」

「そうなのおじさん?」

「さあ、ぼく世間せけんうとくて。ジャムもべたことはあるけど自分じぶんったわけじゃないからわからなくて」


 ギードおじさんも困惑こんわく気味ぎみだ。


「あのヘレンさん。その高価こうかなジャムは、たっぷりの砂糖さとう使つかっていませんでしたか? 砂糖さとう蜂蜜はちみつ高価こうかなので」

「あら、そういわれれば、そうかもしれないわね。でもジャムはジャムでしょ」


 まあそうなのだが。これには光熱こうねつさん人日にんにち労働ろうどう対価たいかしかかっていない。しかも子供こどもの。タダ同然どうぜんだ。


「これは、おままごとみたいな、子供こどものちょっとした冒険ぼうけん結果けっかはいれた果物くだもの自分じぶんたちでただけですから、べつ大丈夫だいじょうぶなんです。おかねかっていません」

「そうなの?」


「はい。ね、ギードさん?」

「ああ、にわかにはしんじがたいが、たぶん、本当ほんとうだ。ぼく保証ほしょうします」

「ギードさんにわれたら、そうね」


 結局けっきょく金貨きんからなかった。


「じゃあ、ジャムを無償むしょうでくれるというのですね? 本当ほんとうに? ありがとう」

「いえ、いいんですよ、自分じぶんたちのぶんもあるので」

「そうですか、ありがとうございます。ほらラニアも」

「あの、ありがとうございました」

「これからもラニアとは仲良なかよくしてやってください」


 ヘレンさんはそうってラニアをれてかえっていった。

 最初さいしょ非常ひじょうもうわけなさそうにしていたけど、最後さいごはニコニコしていたので、大丈夫だいじょうぶだろう。


 やれやれ、はやとちりもこまったもんだ。

 ラニアちゃんはさきおこられてしまったのだろう、とばっちりだ。ごめんな。


 しかし、ジャムはクソたかい、というのが一般いっぱん常識じょうしきだということは、重要じゅうよう情報じょうほうだった。

 適当てきとう自慢じまんしてあるいたら、うちがおそわれるかもしれないことをかんがえれば、なるべくだまっていようとおもう。


 いや、もしくは中途半端ちゅうとはんぱたか値段ねだんで、ドリドン雑貨店ざっかてんいてもらって、おおっぴらにれば、うちでべているものも「普段ふだん節約せつやくしてってきた」ということに、できるのでは。

 自分じぶんつくってべてますってバレるよりは、いいかもしれない。


 よう検討けんとうとしよう。


 おそろしいことに、ジャムにしたリンゴはまだ十五じゅうごぐらい。

 のこりが八十はちじゅう前後ぜんごなので、ビンにしてはいける。


 でもってそんなクソたかいものをビン一杯いっぱいめるアホはいないので、ばいにしてもじゅうビンはいける。


 値段ねだんにすると相場そうばなら金貨きんかまいという。


 そんなアホな値段ねだんになるん? ってきたリンゴがだよ。

 しかもには半分はんぶんのこしてきたし、ほかにもリンゴのはある。


 なんでだれ金貨きんか両替りょうがえしないんですかね。


 ゴブリンか、ゴブリンがこわいんか。

 それともジャムという発想はっそうたかすぎてないのか? ああ、そうかもしれない。

 自分じぶんでもつくれるというイメージがないと、そもそもやろうとしないのは本当ほんとうだ。

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