11.魔石と冒険者ギルド

■11.魔石ませき冒険者ぼうけんしゃギルド


 つづ月曜日げつようび午前ごぜんちゅう

 おれたちは、興奮こうふんめやらぬうちに、もりけ、草原そうげんけて、スラムがい無事ぶじもどってきた。


「はぁぁー」

「やっと、もどってきましたね」

おれたちのラニエルダ」


 まちぐちはいるとすぐすわむ。


 そうとう緊張きんちょうしていたようだ。

 ミーニャの祝福しゅくふく、ラニアの魔法まほう、どちらもなかったら、苦戦くせんしていたかもしれない。

 いいパーティーメンバーをそろえてよかった。


 アイテムボックスから魔石ませきして、ふたたながめる。

 おおきさは3センチくらい。ゴブリンのものとしては普通ふつうサイズ。


 鑑定かんていしてなかった。


【ゴブリンの結石けっせき 魔石ませき 良品りょうひん


 良品りょうひんだけど比較ひかく対象たいしょうがないからなんとも。

 わるいよりはいいか。


「これがおれたちがたおしたあかしだね」

「すごいですね」

「さすがエドとラニアちゃんだね」


「そうだな、いやミーニャも頑張がんばった」

わたしなにもしてない」


 たしかに一見いっけん、ミーニャはなにもしてないが、おれ祝福しゅくふくかっているのをっていたので、ちゃんとみとめている。


「それじゃあ、メルンさんにヒールをおしえてもらおう。いざというとき、たよりにしているから」

「う、うん、わたし頑張がんばる」


 おう、ちょうやるになるミーニャちゃん。純真じゅんしんなのは、かわいいな。


 あるいていき、ドリドン雑貨店ざっかてんかおす。


「ドリドンのおじさん」

「なんだい、エドか。ハーブはよくれてるよ。当分とうぶんはそこそこれるはずだ」

「ありがとう。今日きょうはちょっとゴブリンの魔石ませきがあるんだけど」

「ゴブリン? まさかたおしてきたのか? あぶないぞ。まあいい、せてみろ」

「はい」


 魔石ませきせる。


「ああ、そうだな銀貨ぎんかよんまいだな。でもうちではとりはしてないんだ。冒険者ぼうけんしゃギルドだな」

「――冒険者ぼうけんしゃギルド」

「そうだ」

「わかった。ありがとう、おじさん」


「「おじさん、ありがとう」」


 ミーニャとラニアが笑顔えがおでおれい復唱ふくしょうすると、おじさんも満面まんめんみになって、おくしてくれる。

 ちょろい。



 さて、ここいっ週間しゅうかん城門じょうもんなかにははいっていないが、しょうがないくか。

 ドリドン雑貨店ざっかてん城門じょうもんまえなので、すぐだ。


 よく城門じょうもんにはたび商人しょうにんれつができていて、たされるというはなしく。

 けれども、そこそこ田舎いなかぞくする都市としトライエでは、れつはほとんどない。


 今日きょうさんくみっているだけだ。

 おれたちはそのうしろにならぶ。


 順番じゅんばんはすぐにた。


ぼくとおじょうさんたちは、城門じょうもんなかようかな?」

「うん。魔石ませき冒険者ぼうけんしゃギルドにりにくの。ほら」

「ほうう、そりゃ、めずらしいね。こんな子供こどもが? お使つかい?」

「ううん。ぼくたちがゴブリンをやっつけたんだ」

「ゴブリン? このへんで?」

「そこのもりのちょっとはいったところだよ」

「そうなのかい。ちかくにゴブリンか。うえ報告ほうこくさせてもらうよ。一応いちおう警戒けいかいしておく」

「はい。お仕事しごと頑張がんばってください」

「おお、おまえらも頑張がんばれよ。はいとおっていいぞ」


 ふう。無事ぶじ通過つうかした。

 べつにやましいことはないが、緊張きんちょうはする。


 門番もんばん軽装けいそうだけど、うしろにはうましたがえて騎士きし格好かっこうをしているひともいる。



 城門じょうもん通過つうかすると、景色けしき一転いってん


 ほとんどのいえ二階建にかいだて、ないし三かいて。

 まどにガラスはないが、スラムだとそもそもまどがない。

 屋根やねはほぼ統一とういつされた赤茶あかちゃ瓦屋根かわらやねだ。


 ――ザ・ファンタジー・ワールド。

 中世ちゅうせいヨーロッパとはよくったものだ。


 観光かんこうさいにはぜひおりください。なかなかの景色けしきです。


 人通ひとどおりもそこそこある。喧噪けんそうこえる。にぎやかだ。

 おれのポケットには、すでに銀貨ぎんかさんまいもおわしている。


 景気けいきわるくない。風向かざむきも上々じょうじょう



 大通おおどおりをとおって、中央ちゅうおう広場ひろばまでる。

 ここには噴水ふんすいがあって、水汲みずく水飲みずの水浴みずあがある。

 水浴みずあは、現代げんだいでは使つかひと皆無かいむだ。歴史的れきしてき建造物けんぞうぶつというやつだ。


 そして正面しょうめんよんかいての冒険者ぼうけんしゃギルドがデデンと鎮座ちんざしている。


「トライエ冒険者ぼうけんしゃギルド……」


 べつめずらしくはない。しゅういっかい普通ふつうまえ通過つうかしていた。

 でもなかはいるのははじめてだ。


緊張きんちょうしてきた」

「いいじゃない、わるいことしたわけでもないにゃ」


 気楽きらくにミーニャがってくる。


 想像そうぞうするとこわい。おれ前世ぜんせでコミュしょうをこじらせていたので。


 いかついかお古株ふるかぶが、新人しんじんいびりをしにるんだ。

 おれたち子供こどももバカにされるとか、魔石ませきげられるとか、されそう。


「ぶつぶつってないで、いいから、はいりましょう」


 ラニアが笑顔えがおかべて、おれった。

 するとすかさずおれ反対はんたいをミーニャがつかんで、あるす。


 きずられるみたいにして、おれはじめての冒険者ぼうけんしゃギルドに、った。


「いらっしゃいませ~~」

「あ、どうも」


 ガランガランとカウベルがる。

 あたまげて、なかはいる。

 一瞬いっしゅんしずかになった。でも子供こどものお使つかいだろう、とおもわれて、すぐにもとのようにさわがしくなる。

 ここのいっかい右側みぎがわは、定番ていばんのように、酒場さかばになっていた。


 受付うけつけ昼前ひるまえだからか、ガラガラだった。

 こんないていて、経営けいえいつのか、大丈夫だいじょうぶだろうか。


 カウンターのおねえさんに対峙たいじする。


 ――美少女びしょうじょギルド受付嬢うけつけじょう


 定番ていばんだこれ。金髪きんぱつ碧眼へきがんながみみ、エルフにつらなるものだ。


「はっ、おじょうちゃんたち。あっ、どんなお使つかいかな?」


 受付嬢うけつけじょう自然しぜん笑顔えがおおれたち、いやミーニャをじっとつつ、質問しつもんをした。


「あの、このゴブリンの魔石ませきを、ってほしいです。会員かいいんでなくても、りくらいはできるんですよね?」

「はい、問題もんだいないですよ。ちょっとせてもらっていいかな、おく鑑定かんていするから」

「おねがいします」


 ラニアが応対おうたいしてくれる。

 ミーニャはじっとられたのが、ずかしいのか、かおあかくして、エルフみみをぴくぴくさせている。かわいい。


 ふんくらいっただろうか。もうすこみじかいかもしれない。おれにはながかんじた。


「おたせしました。銀貨ぎんかまい、で、その、よろしいでしょうか? エルフさま

まい? 本当ほんとうに? さんまいとかじゃなくて?」

「はい。おなじようにえても、これはしつがよいもののようで、たか評価ひょうかさせていただきました」

「やったわ、ありがとう、おねえさん」

「はい、銀貨ぎんかまいよ、ありがとうございました、エルフさま


 受付嬢うけつけじょうはラニアにこたえつつも、確認かくにんはミーニャをじっとていた。

 ミーニャがやっと最後さいご笑顔えがおうなずくと、おねえさんはほっとしたかおをし、笑顔えがおかえして、んでいく。


 なにあの態度たいど


 ラニアのことはガン無視むしでミーニャに使つかいまくっていた。

 やっぱりエルフはエルフでも、序列じょれつがあるのかな。


 ハーフエルフとクォーターエルフでは、ハーフのほうがえらいとかさあ。

 ひとぞくにはその感覚かんかくはわからんらしい。


 とにかく、こうして「銀貨ぎんかまい」をおれたちはれた。


 冒険者ぼうけんしゃたちは、結局けっきょくおれたちを、ただのお使つかいとして脳内のうない処理しょりしたため、だれなにおもわなかったようだ。

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