[総ルビ]異世界転生スラム街からの成り上がり ～採取や猟をしてご飯食べてスローライフするんだ～(web版)

４．採取、香味野草

■４．採取（さいしゅ）、香味（こうみ）野草（やそう）

　木曜日（もくようび）。転生（てんせい）、三日（みっか）目（め）。

　俺（おれ）にくっついて寝（ね）ぼけているミーニャを見（み）ながら目（め）を覚（さ）ます。

　今日（きょう）も草原（そうげん）で野草（やそう）を採（と）ろうと思（おも）う。

　いろいろな種類（しゅるい）を見出（みだ）して、食生活（しょくせいかつ）を豊（ゆた）かにするのだ。

　ゴーン、ゴーン、ゴーン、朝（あさ）六（ろく）時（じ）、三（さん）の刻（こく）が来（き）た。

「あ、おはよう、エド、むにゃむにゃ」

「おはよう、ミーニャ」

　朝（あさ）から笑顔（えがお）がかわいい。癒（いや）される。

　前世（ぜんせ）では高校生（こうこうせい）で普通（ふつう）だったけど、極（きわ）めて目立（めだ）たない存在（そんざい）で、友達（ともだち）と呼（よ）べる人（ひと）は一人（ひとり）もいなかった。

　親（おや）も朝早（あさはや）くて夜遅（よるおそ）く、一緒（いっしょ）に食事（しょくじ）をとることも稀（まれ）だった。

　そして俺（おれ）んちは田舎（いなか）で、小（ちい）さい頃（ころ）は休耕田（きゅうこうでん）とか耕作（こうさく）放棄（ほうき）地（ち）とか空（あ）き地（ち）がたくさんあり、草原（そうげん）で遊（あそ）んだ。

　それも幼馴染（おさななじみ）の女（おんな）の子（こ）とだ。それでも中学（ちゅうがく）に上（あ）がる前（まえ）には疎遠（そえん）だった。

　今（いま）では甘酸（あまず）っぱい思（おも）い出（で）だけど、今（いま）はミーニャもいる。

「ミーニャ、今日（きょう）も草原（そうげん）に行（い）こっか？」

「うん。エドが行（い）きたいっていうなら、マドルドでもラトアニアでも、どこへでもついてくよ」

　それは怖（こわ）い。

　マドルドは隣（となり）の国（くに）の名前（なまえ）だ。

　ラトアニアに至（いた）っては、魔族（まぞく）の治（おさ）める暗黒（あんこく）大陸（たいりく）の名前（なまえ）だった。

　ちなみに、この国（くに）はメルリア王国（おうこく）という名前（なまえ）だったと思（おも）う。

　公用語（こうようご）は大陸（たいりく）共通語（きょうつうご）と呼（よ）ばれている、特（とく）に言語（げんご）そのものの名前（なまえ）はない。しいて言（い）えば「人間（にんげん）語（ご）」だろう。

　言語（げんご）はわかるけど、文字（もじ）は知（し）らない。

　数字（すうじ）くらいは読（よ）める。人間（にんげん）が十（じゅっ）本（ぽん）指（ゆび）だからか十（じゅっ）進数（しんすう）だったから転生（てんせい）知識（ちしき）で、計算（けいさん）は余裕（よゆう）だ。

　俺（おれ）は冒険（ぼうけん）しに行（い）きたいわけではなく、うまいもの食（た）べて、平和（へいわ）に生活（せいかつ）がしたい。

　それともミーニャには遠（とお）くへ出（で）かけたい願望（がんぼう）でもあるのか。

「何（なに）かいい匂（にお）いとか特徴（とくちょう）がある草（くさ）を見（み）つけたら、教（おし）えてくれ」

「わかったっ！」

　ニコッと笑顔（えがお）を向（む）けてくるミーニャ。天使（てんし）ちゃんは相変（あいか）わらずかわいい。

　俺（おれ）もそれらしい草（くさ）を探（さが）す。

　まず目（め）を付（つ）けたのは、深緑（ふかみどり）で15センチほどある幅広（はばひろ）の葉（は）っぱが、根元（ねもと）から放射（ほうしゃ）状（じょう）に伸（の）びる草（くさ）だ。

『鑑定（かんてい）』

【ホレン草（そう）　植物（しょくぶつ）　食用（しょくよう）可（か）】

　これはホウレンソウみたいな草（くさ）、ホレン草（そう）。ただし野生種（やせいしゅ）だ。

　一口（ひとくち）生（なま）でかじってみる。ちょっとだけ青臭（あおくさ）いけれど、苦（にが）かったりめちゃくちゃ青臭（あおくさ）いほどではない。

　これなら食（た）べられそう。

　とりあえず、これを人数（にんずう）分（ぶん）は確保（かくほ）しよう。

「ミーニャ、この草（くさ）わかる？」

「うん、見分（みわ）けはつくよ」

「じゃあ、これも少（すこ）し確保（かくほ）しておいて」

「わかったっ！」

　次（つぎ）に見（み）つけたのは、単子葉（たんしよう）類（るい）の草（くさ）だ。

　細（ほそ）い筒状（つつじょう）になった葉（は）がまっすぐ長（なが）く伸（の）びている。

　それがまとまって生（は）えて株（かぶ）を作（つく）っていた。

『鑑定（かんてい）』

【ノビル　植物（しょくぶつ）　食用（しょくよう）可（か）】

　ノビルだ。

　河川敷（かせんしき）とか空（あ）き地（ち）によく生（は）えている、ネギの仲間（なかま）だと思（おも）う。

　こいつは焼（や）いて味噌（みそ）をつけて食（た）べるとうまい。

　香味（こうみ）野菜（やさい）の一種（いっしゅ）だと思（おも）う。

　前世（ぜんせ）で幼馴染（おさななじみ）とおままごとをしたときも、よく採（と）って遊（あそ）んだ。

「いっしっし」

　太（ふと）い葉（は）を選（えら）んで、慎重（しんちょう）に木（き）の小枝（こえだ）で周（まわ）りを掘（ほ）り、根（ね）っこごと取（と）る。

　葉（は）の根元（ねもと）には直径（ちょっけい）1、2センチの球根（きゅうこん）がある。

　葉（は）も食（た）べられるが、この球根（きゅうこん）も食（た）べると美味（おい）しい。

　ちなみに細（ほそ）い葉（は）は球根（きゅうこん）も比例（ひれい）して小（ちい）さいので、そのままにしておく。

　なんでもかんでもただ採（と）ればいいというものではない。

　ネギ臭（くさ）い。だがそれがいい。

　今（いま）までの豆（まめ）だけの食事（しょくじ）と比（くら）べれば、好（この）ましい刺激臭（しげきしゅう）だ。

　気分（きぶん）は上々（じょうじょう）だ。

　どうでもいいかもしれないが、ネギ類（るい）はヒガンバナ科（か）らしい。

　ネギ、タマネギも犬（いぬ）や猫（ねこ）には猛毒（もうどく）なので、それらしいというか。

　もしかしたら、この独特（どくとく）な臭（にお）いは毒（どく）かもしれない、と思（おも）うのは自然（しぜん）だと思（おも）う。

　さて、次（つぎ）に見（み）つけたのは、じゃじゃーん。

　やはり単子葉（たんしよう）類（るい）、ネギより葉（は）は厚（あつ）め、色（いろ）は濃（こ）い。

　チューリップまではいかないけど、ノビルが細（ほそ）いのと比（くら）べると太（ふと）い。

『鑑定（かんてい）』

【ノニンニク　植物（しょくぶつ）　食用（しょくよう）可（か）】

　ニンニクの野生種（やせいしゅ）だった。

　これは素晴（すば）らしい。

　塩味（しおあじ）だけだったのが、トウガラシがあればペペロンチーノとかできる。

　豚肉（ぶたにく）のニンニク炒（いた）めとかも美味（おい）しい。

　ニンニクは香味（こうみ）野菜（やさい）というよりも香辛料（こうしんりょう）に入（はい）るのかな。

　これがあるだけでも料理（りょうり）の強（つよ）い味方（みかた）だ。

「やったー、ほらよっと、ほらさっさ」

　変（へん）な踊（おど）りをして、ニンニクの発見（はっけん）を大（おお）よろこびする。

　それくらいうれしい。

　欠点（けってん）はノビルもノニンニクも臭（くさ）いということだ。

　慣（な）れていないと、きついかもしれない。

「ほら、ミーニャ、こっちがノビル、こっちがニンニク」

「なんかくちゃい」

「まあね、でも美味（おい）しいんだよ」

「ふーん。私（わたし）、こんなの食（た）べたことないよ」

「まあ、騙（だま）されたと思（おも）って、味（あじ）は保証（ほしょう）する」

「そこまでいうなら……」

　次（つぎ）は何（なに）があるかな。

　狙（ねら）って探（さが）すのは難（むずか）しい。

　目（め）についたものを、知識（ちしき）の中（なか）から、探（さぐ）り出（だ）す。

　あ、これは。見（み）たことがある葉（は）っぱだ。

　異世界（いせかい）では同（おな）じとは限（かぎ）らないが、今（いま）のところ、植生（しょくせい）は非常（ひじょう）に似（に）ている。

『鑑定（かんてい）』

【スペアミント　植物（しょくぶつ）　食用（しょくよう）可（か）】

　日本語（にほんご）でいえば薄荷（はっか）の仲間（なかま）だ。

　スペアミント、ペパーミント、アップルミントとかあるけれど、違（ちが）いはよくわからない。

　とにかくこれは、スペアミント風（ふう）ということだろう。

　紫蘇（しそ）の葉（は）にも似（に）ている。

　一（いっ）本（ぽん）の茎（くき）があり、そこから双方向（そうほうこう）に葉（は）っぱが生（は）える。

　丸（まる）いギザギザした葉（は）っぱで、葉脈（ようみゃく）が目立（めだ）ってデコボコしているのが特徴（とくちょう）だろうか。

　スラム街（がい）では、お茶（ちゃ）を飲（の）む習慣（しゅうかん）がない。

　井戸（いど）が少（すく）なく、水（みず）を汲（く）んでくるのが比較的（ひかくてき）面倒（めんどう）というのもある。

　家（いえ）には大（おお）きめの水瓶（みずがめ）があって、そこに水（みず）を溜（た）めて使（つか）っている。

　魔道（まどう）コンロがない家（いえ）なら、なおさらお湯（ゆ）を沸（わ）かすのも面倒（めんどう）だ。

　メルンさんが近所（きんじょ）のおばさんとお茶会（ちゃかい）とかしたいなら、いいかもしれない。

　試（ため）しに採（と）っていってみよう。

　ミーニャと俺（おれ）でそれなりに採（と）って歩（ある）いた。

　今日（きょう）も結構（けっこう）探（さが）し回（まわ）ったので、それなりに疲（つか）れた。

　早（はや）めに切（き）り上（あ）げて戻（もど）ろう。

　俺（おれ）は疲（つか）れてもいいが、ミーニャが心配（しんぱい）だ。

　別（べつ）にミーニャは体（からだ）が弱（よわ）いわけではないけど、俺（おれ）より小（ちい）さい。

　なんとなく弱（よわ）そうな気（き）がする。HPも少（すく）なかったし。

　その代（か）わりなのかエルフの血（ち）がなせるのかMPは多（おお）かった。

　あと名前（なまえ）。ミーニャ名前（なまえ）長（なが）すぎ。エルフ族（ぞく）は謎（なぞ）い。