第8話 3時のおやつ

 あ……。

 もう、3時になったのね。

 早いなぁ。


 おやつをトレイにのせたミカちゃんが、子供部屋に入ってきた。


 今日のおやつのメニューは、小さめ(子ども用)のショートケーキとお菓子とオレンジジュース。


 あ、と気づいたショウタ君が、


「おやつだぁぁ」


 と大喜び。


 すぐに、ショートケーキを食べはじめた。


 ところが、子雲こぐもの視線の圧力がすごい。

 うらやましそうに、ヨダレを流しながら、ショートケーキを食べているミカちゃんとショウタ君をにらんでいる。


 ミカちゃんが、子雲こぐもの視線に気づいたみたい。


「あんたは食べられないでしょ」


 と冷たく言いきった。


 子雲こぐもは頭から白い煙みたいなものをポッポーと出して、プンプン怒っている。


 仕方ないなぁ、て感じで、大きなため息をついたミカちゃん。

 お菓子をひとつ手に取ると、子雲こぐもの前に差し出した。

 

 ギラギラとヒトミを輝かせた子雲こぐもは、お菓子に突進していく。


 “ビューン”て。


 でも、子雲こぐもの体はお菓子を通りぬけてしまった。


 子雲こぐもはフシギそうにキョトンとしている。


 そんな子雲こぐもがおかしいのね。

 ショウタ君が、


「アハハハハ……」


 と腹を抱えて笑っている。


 ミカちゃんは、 


「だから無理だって言ったのに」


 と無表情で言った。

 

 ミカちゃんは、子雲こぐもが部屋の中で雨を降らせたことを、まだ怒っているのね。

 ま、当然だけどね。

 

 一方、子雲こぐもは体を真っ赤にして、くやしがっている。


 そんな子雲こぐもを横目で見ていたミカちゃんは、お菓子を食べながら、


「あぁ、おいしいぃぃぃ」


 と、わざと子雲こぐもに聞こえるように言ったあと、満足顔。


 子雲こぐもは《こ》懲りずに、何度も何度も、トレーに残っているお菓子に突進していく。

 もちろん、通り抜けるだけだけど。


 呆れたミカちゃんが、仕方なく、


「ジュースなら飲めるかも」


 と、オレンジジュースを子雲こぐもの前に置いた。


 子雲の様子を見ていたショウタ君が、


「チビがジュース飲んでるぅぅぅ」


 と大はしゃぎ。


 正確には、なめているほうが近いけどね。


 オレンジジュースを飲み終わった子雲こぐもは、体がオレンジ色になった。


 体の色まで変わるなんて、うらやましいぃ。


 お腹のふくれた子雲こぐもがゲップをすると、口からオレンジ色のシャボン玉みたいなものが、プワッと出たあと、つぶれた。


 ミカちゃんとショウタ君は、思わずうれしそうに笑いだしてしまった。


 それから、ミカちゃんとショウタ君は、おやつを食べ続けた。

 いつもより、おいしそうに見えたっけ。


 一方、お腹がいっぱいになった子雲こぐもは、ミカちゃんとショウタ君がお菓子を食べている様子を、たのしそうに見ていた。

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