第6話 ミカ vs 子雲とショウタ 

 ミカちゃんが、子雲こぐもを追い出すつもりだと知ったショウタ君は、


「オバサンのチビなのにぃ。お姉ちゃんのバカー。エーン……」


 ついに、泣きだしてしまった。


 でも、本当は得意のウソ泣き。

 だって、ショウタ君は泣きながら、チラチラとミカちゃんを見ているんだもの。


 もちろん、お姉さんのミカちゃんも気づいているみたい。

 だから、知らんぷり。


 あ、でも、どうして?


 ショウタ君には、わかっているはずなのに。

 得意のウソ泣きも、お姉さんのミカちゃんには通用しないって。

 どういうこと?


 一方、子雲こぐもも泣きだしてしまった。

 ショウタ君が本当に泣いていると思ったのね。

 つまり、灰色の雨雲になって、可愛い雨を降らせている。


 “シャーシャー”、くらい。


「ヤダ、ウソ」

 

 ミカちゃんは慌てて、子雲こぐもの下に缶のゴミ箱を置いた。



「やめてよ。子供部屋が洪水こうずいになるでしょ」


 ミカちゃん、それはちょっと大げさかも……。


 ミカちゃんの注意は逆効果になったみたい。


 ミカちゃんの弱点だと思ったショウタ君は、さらに大泣き。


「エーンエーン」


 つられた子雲こぐもも、


 “シャ ーシャー”


 まったく、泣く子にはお手上げね。


 あ、そっか。


 ショウタ君は本当に、チビがオバサンの生まれ変わりだと思っている。

 

 ということは、追い出されそうな子雲こぐもをかわいそうに思ったのは……。


 つまり、オバサンのためでもあるってことよね。

 


 ところが、ミカちゃんは、


「バカー」


 と叫んだ。


 驚いたショウタ君と子雲こぐもは、ミカちゃんの顔を見た。


 ミカちゃんは怒った顔で、


「パパがお留守番お願いねって言ったのに……だから一生けんめい頑張ろうと思ってたのに、パパをがっかりさせちゃう」


 と言うと、ショウタ君と子雲こぐもをにらんだ。 

 悲しそうに唇をかみしめながら。


 ミカちゃんを見たショウタ君は驚いている。

 だって、いつも元気いっぱいのミカちゃんなのに、今はこんなに悲しそうなんだもん。


 わたしもフシギ。

 だって、これくらいのことで、ミカちゃんがこんなに怒るなんて……。

 ショウタ君のいたずらにはれているはずなのに。


 ミカちゃん、どうしちゃったの?


 ショウタ君もちょっと反省したみたい。


「お姉ちゃん、ごめんなさい……」


 と、シュンとしている。


 ショウタ君までいつもと違う。

 ヘンなの。


 どうなっているのぉ?



 ♢  ♢  ♢  ♢  ♢



 ところで……て、なに?

 質問でもあるの?


 え?

 わたしは誰かって?


 ごめんなさい。

 自己紹介がまだだったわね。


 わたしは、さっき話にでたネコのオバサンよ。

 よろしくね。


 え? 死んだんじゃないのかって?


 それはそうだけど……。


 バケネコですって~?

 シツレイしちゃうわ。


 でも、ま、 そんなところだけどね。


 死んだのに、どうしてまだカワセさんにいるのか、フシギなのね。


 だって、おばあちゃんが病気で入院してしまったでしょ。

 だから、カワセさんの家族が心配でたまらないのよ。

 とてもじゃないけど、このまま天国になんていけないわ。


 カワセさんの家族は、とてもやさしい人たちなのよ。


 交通事故にあったノラネコのわたしを動物病院に運んでくれたパパ。


 退院したわたしを温かくむかえてくれたやさしいママ。


 笑顔でつつんでくれた、ステキなおばあちゃん。


 オマセさんだけど、しっかり者のミカちゃん。


 いたずら好きで、あまえん坊だけど、本当はやさしいショウタ君。


 生意気なまいきで、意地いじりだったノラネコのわたしに、みんな、やさしくしてくれた。


 わたしの大切な家族なの。


 なのに、おばあちゃんが入院しなきゃいけないなんて、あんまりよ。


 だから、安心できるまで、一緒にいようと決めたの。

 だって、ミカちゃんはなにか無理してるって感じなんだもの。


 もちろん、ミカちゃんたちには、わたしが見えないわ。

 それでも、いいの。

 とにかく、今は一緒にいたいから。


 だって、わたしの大切な家族だから、ほうっておけないでしょ。



 ♢  ♢  ♢  ♢  ♢

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