第5 どうして、あの話をしちゃいけないの?
ミカちゃんは、子供部屋に浮いている
「わたし、雲って大キライ。出ていってよ」
一方、ミカちゃんからキライと言われた
“プンプン”て感じで、頭から白い煙みたいなものを出している。
まるで、マンガの世界だわ。
うれしくなっちゃう。
「お姉ちゃん、ひどいよぉ」
とショウタ君が言うと、
えらそうに……。
でも、ミカちゃんにも、ちゃんと言い分があるのよね。
「ショウタ、パパが言ったでしょ。誰も入れちゃいけないって」
ん~……それもちょっと違うような気がするけど……。
ついにミカちゃんは、
「さ、出ていきなさいよ」
と、モップを振り回し、
それにしても、ミカちゃん、どうしてそんなに
なんか、いつものミカちゃんじゃない気がするんだけど…… 。
一方、ミカちゃんから追いまわされた子供は、ついに怒ったみたい。
ミカちゃんの頭に、カミナリ⚡を落とした。
でも、そのカミナリは小さくて可愛いの。
パチパチくらい。
それでも、子供のミカちゃんには痛いみたい。
「痛い。やめてよ、もう……」
今度は、ミカちゃんが逃げまわっている。
ミカちゃんをかわいそうに思ったショウタ君が、
「チビ、もうやめてよ」
と言うと、
ミカちゃんは、
「もう」
と怒りながらも、ホッとしている。
「チビ、触ってもいい」
と
こわごわ、ショウタ君の手が、
でも……。
「あ……」
ショウタ君の手は、
一方、
“キャッキャッ”て、
調子に乗ったショウタ君は、いたずらっ子の顔で、
“コチョコチョ”
“キャッキャッ”
て感じ。
まるで兄弟のじゃれあいみたいだ。
そんなショウタ君と
「絶対、出ていってもらうんだから……」
「お姉ちゃん、ひどいよ。オバサンのチビなんだよ」
ショウタ君も怒っている。
ミカちゃんは、ショウタ君をにらんだ。
「ショウタ、もうオバサンの話はしないって約束したでしょ」
ミカちゃんがショウタ君に、そんな約束をさせたなんて、
あ、もしかして、あのとき……?
♢ ♢ ♢ ♢ ♢ ♢
あれは、2人の大好きなおばあちゃんが、病院に入院する前日のこと。
その夜、カワセさん
言い出したのは、おばあちゃん。
「ミカとショウタのこと、お願いね」
おばあちゃんは、ミカちゃんとショウタ君のことが心配でたまらないと言う。
「だって、オバサンが動物病院に入院して死んだばかりでしょ。わたしも入院したら死ぬかもしれないって、子供たちが不安しそうな気がするの」
おばあちゃんは、
「こんな時に入院することになって、ごめんなさいね」
と涙ぐんだ。
そこでパパが、おばあちゃんとママに約束したのだった。
「おばあちゃんが元気になって帰ってくるまで泣かない」
自分が泣けば、ミカちゃんとショウタ君も不安になるからって。
そういえば、オバサンが死んだときも、パパはずっと泣いていたっけ。
あの涙もろいパパがねぇ……。
大人って大変ね。
ちょうど、そのときだった。
子供部屋にいたミカちゃんがトイレに行くため、リビングの前の
そして、パパの約束を聞いてしまったのだった。
♢ ♢ ♢ ♢ ♢ ♢
きっとそのあと、子供部屋にもどったミカちゃんがショウタ君に、
「もう、オバサンのことを話してはいけない」
と、約束させたに違いない。
でも、どうして……?
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