第3話 子雲がカワセさん家の子供部屋にやってきた!

 ♢  ♢  ♢  ♢  ♢  ♢


 カワセさんの前の歩道を、子雲こぐもが散歩している。


 あんたは、ノンキでいいわねぇ。


 ところが、あ……。


 突然、ピュー と強い風が吹いて、子雲こぐもが吹き飛ばされた。


(危ない。)


 と思ったとたん、子雲こぐもは隣の家の壁にぶつかった。

 そして……。


 ええ~ぇ。


 子雲こぐもの体が、花火みたいに飛び散っていく。


 あっちこっちに、小さくて白い綿のようなものが、フワフワ浮いている状態。


 どうしよう? 


子雲こぐもが死んじゃうぅぅぅ)


 と心配していたら……。


 え? 

 なに?


 子雲こぐもは、小さく飛びちった体の破片はへんを拾い集め、自分の体にくっつけていくじゃないの。


 すごぉぉぉい。


 みんな、そんなことができたらいいのにねぇ。


 うらやましぃぃぃい!



 やっと、元に戻った子雲こぐもは、ため息をついた。


 驚いたなぁ、て感じ。


 でも、りていないみたい。


(あ~あ~あ~……)


 子雲こぐもは木の枝に止まっている小鳥にじゃれつき始めた。


 本当に、いたずらっ子なんだから。


 小鳥の方も、いい迷惑よね。

 いきなり、白くてフワフワした、わけのわからないものが、つきまとってきたんだからね。

 そりゃ、驚くわよ。


 あ、でも、小鳥も反撃し始めたみたい。

 くちばしで、子雲こぐもをつついている。


 驚いた子雲こぐもは、逃げだした。


 怒った小鳥が追いかけている。


 子雲こぐもと小鳥の追いかけっこなんてステキじゃない。


 子雲こぐもも小鳥もガンバレェェ。



 すっかり、子雲こぐもと小鳥の追いかけっこに見とれていたわたしは、気づいていなかった。

 空が暗くなっていることに。


 だから、突然、空が⚡“ピカッ”と光って、カミナリが“ゴロゴロ”と落ちたときは、毛が逆立さかだってしまった。

 まるで、体の中を電気が走ったみたいに。


 驚いたショウタ君も、震えながらミカちゃんに抱きついた。


「お姉ちゃ~ん……」


 ミカちゃんは、


「 だ、大丈夫よ。ショウタは男の子でしょ」


 そう言いながらも、やっぱり震えている。


 そりゃ、そうよね。

 いくらお姉さんでも、カミナリ⚡には勝てないわよね。


 ミカちゃんは怖々、窓を開けて、空を見上げた。


 ついさっきまで、いいお天気だったのに、今は空が暗い。


「どうしちゃったんだろう……?」


 ミカちゃんは不安そう。


 そのときだった。


 あ……。


 小鳥に追いかけられていたあの子雲こぐもが、子供部屋の窓の上の方から入ってこようとしているじゃないの。


 あんた、雲でしょ。

 どうして部屋の中に入ってくるのよ。

 誰に言っても信じてくれないじゃない……。


 でも、ミカちゃんもショウタ君も、子雲こぐもに気づいていないみたい。

 ザンネン。


 そのとき、またイナズマ⚡が走った。


“ピカ”


「ヒィ」


 と驚いたミカちゃんは、思わず窓を閉めてしまった。


“バターン”


 あ、危ない。


 なんと、子雲こぐもが窓にはさまれてしまった。


 どうしよう~。

 子雲こぐもが死んじゃう~。

 と心配していたら……。


 窓にはさまれた子雲こぐもは、抜け出そうともがいている。

 ウグ~、ウグ~って感じで。


 あ、そうか。

 雲だから痛くはないのね。


 かわいそうだけど、その姿が可愛くて、なんかおかしいの。

 笑っちゃうくらい。

 “ウフフ”

 

 子雲こぐもはうつ伏せで、窓にお腹をはさまれている状態。

 ほっぺたを膨らませ、腕組みをしたまま、頭から煙みたいなものをポッポーと出している。


 一人前に怒っているのぉ? 

 でも、可愛ッ。


 そこにまた、カミナリ⚡が落ちた。


 “ゴゴゴー”


 窓にはさまれている子雲こぐもは、ヒィェ と驚いた。


 母雲ははぐもが怒っていると思ったのね。


 子雲こぐもは急いで、はさまれている窓から抜け出そうともがいている。


 ウグ~ッ、ウグ~ッて。


 その姿がまた可愛くて、おかしいんだけど……。


 ついに、子雲こぐもは、はさまれている窓から抜け出し、子供部屋に入ってきた。


 シュポーンって感じで。


 チビ、やったね。

 あんたは、エライ!


 

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