第73話 『073 魔族マゾーラ』

『073 魔族マゾーラ』


 牧場の土に薬草を植えた。


 もし土から育つようなら、薬草から回復薬を作るのをエルミに続けて依頼はしてある。


 慌てることはないので、ゆっくりとだが作成してもらおう。


 回復薬があれば、森に行く時に安心である。


 過去に出会った魔物はどれも強烈だし、回復薬は助かる。


 それにしても俺が来た森は強そうな魔物が多いな。


 俺の勘違いなのかわからないが、オガーナやエルフ族も強そうなイメージだし。


 コカトリスまで出てきて、森についても知りたい。


 ずっと森で生きていくとなるなら、森の情報は大事になる。












 魔族の国。


 ユウタのいる森に接している地域には魔族の国がある。


 魔族は人族と対立していて、争いは常に起きていた。


 人族は魔族に怯えて暮らす毎日で、冒険者が討伐をしているのが日常。


 魔族にとって人族との争いは長い歴史で常にあった。


 魔族マゾーラは、魔族の上に立っていて、中級、下級魔族はみんなマゾーラに従っていた。


 そのマゾーラはショックを受ける。


 報告をするのは女魔族のクララ。


「マゾーラ様、クララが報告します。森にあるダンジョンに魔族を100人送りました。ドワーフ族が鉱石を発掘している。それを奪うのが目的でした」


「見せなさいクララ、奪った鉱石を」


「ありません、すみません」


「なぜない?」


 魔族マゾーラは部下のクララに質問する。


「ほとんど死んだのが理由です。ダンジョンにいるドワーフ族を襲ったのはいいですが、そこへ不測の事態が起きました。オーガのオガーナが来ました」


「オガーナ! あれが来たのか。ドワーフ族を助けたのか」


「助けました。なぜ助けたかわかりません。それにエルフ族エル、蜘蛛族クモーナもいたと逃げてきたのが説明しております」


「エルにクモーナだって! どれも森の災害級の奴らだ。バカなことがあるのか。疑問です」


 マゾーラには信じられない話だった。


 どれも災害級と呼ばれる魔族も恐れる名前を聞いたからで、それらが一緒に行動しているのが意味がわからない。


「100人送って帰ってきたのは数名でした」


 マゾーラは報告を聞いて怒り出すと、部下の魔族らは恐怖で震える。


 マゾーラは国でも最高峰の魔族であり、逆らうものは存在しない。


 オガーナ、エル、クモーナの名前は魔族の国でも有名だった。


 いずれも破壊的な強さから、恐れられていた。


 一度にその3人が集まるのは魔族からしたら異常事態。


「そしてリーダーがいて、人族の男だということでして、ユウタと呼ばれていたと」


「ユウタ? 知らないな。新しい勇者や賢者か?」


「わかりません」


 マゾーラはユウタの名前を初めて聞いた。


 強い冒険者の名前は知っているけども、初めて聞くのは奇妙だった。


 森で何か異変が起きているのかどうかを知りたくなる。


 この報告が本当なら魔族にとって、恐ろしい勢力といっていい。


 マゾーラ自身で調査する必要があるなと思った。


 森に行き、確認してやろうとし、クララと共に牧場へと向かうとした。


 本来ならマゾーラが直接動くのは滅多にないことで、重大な事態。


 そんな重大な時にユウタは、のんびりと牧場で暮らしていた。

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