第53話 『053 魔王バチ』

『053 魔王バチ』


 俺は昔からハチは苦手で、いつも逃げてしまう。


 どうも恐怖心がある。


 理由はわからないけど、昆虫がみんな苦手なのも影響している。


 エルも苦手なのかわからないが、逃げるのがいい。


「私は怖くない」


「ええ! 魔王のハチなんだろ。刺されたらヤバそうだが」


 魔王バチが接近する!


 大きさはスズメバチよりも大きくて3倍はあるかな。


 ハチというよりもスズメくらいに大きい。


 大きい時点で、俺の中では危険信号が鳴る。


 色も黄色と黒の危険色です。


 自然界では黄色は危険色と日本では聞いていて、カエルやヘビ、トカゲとかにも黄色はいる。


 どうして黄色なのかは知らないが、相手に注意しているのか、自然界は不思議である。


 日本と同じことが異世界にも存在していた。


 俺達に警告している風にも思えた。


 俺はエルの後ろに隠れるのは、だって怖いし、苦手ですし。


 誰にも苦手はあるよね。


 けど、エルは大丈夫と言ったのはなぜですか。


 どう考えても大丈夫じゃないですが。


「魔王バチが来た。エル、どうするの!」


「ほら、大丈夫ですよ。エルフ族はハチとは仲が良いのです」


「なぜかわからないけど、平気だけど、俺はどうかな?」


 エルフ族は大丈夫でも俺は大丈夫とは限らない。


 エルフ族は異世界マンガにおいては、森の種族と呼ばれるのは見る。


 森の種族だからハチも怖がらないのかな。


 まだ俺はエルフ族について詳しく知らないことが多くある。


 エルの仲間のエルフ族はいるとして、エル達はなぜ5人で森にいたのか。


 他にも仲間はいるはずだが、理由は聞いていないかな。


「ユウタも隠れてないで、出てきなさいよ」


「本当に、本当に、大丈夫っぽいな。良かった、安心したよ」


 エルの言うように魔王バチに接近したが、何も攻撃はなかった。


 安心しました。


 人生で初めて怖がらずにハチを見ている。


 たくさんの魔王バチがいて、ここらへんにハチの巣がありそうだ。


 花があるところにはハチはいる。


 花はハチを利用しているんで、ハチミツを販売する人は、これを利用している。


 もしかしてハチミツを牧場に持って行けるかな?


「怖くないよ。まあ魔王バチは魔物のハチはでも狂暴で、オークも殺しちゃうし、確か勇者も殺したとかいう伝説もあるかな」


「ヤバいだろ!」


 俺は直ぐにエルの背中に隠れた。


 勇者を殺すって、それで魔王という名前なのなら、危険信号はハンパない。


 最強クラスの強さですよね。


 どちらにせよ、エルがいたから安全だったけど、エルがいなければ針に刺されていて、即死でした。


 ここはドライフードを与えるのが一番だ。


「ドライフードだ。魔王バチよ、食べてくれ」


 ドライフードを地面にばらまいた。


 本当に食べてくれるかは、やってみないとわからないげが、様子を見てみよう。


 そもそも猫のエサであるドライフードをハチが食べるのかと言うと、食べる話は聞いたことはない。


 花の蜜を食べているのだろうから、カリカリのドライフードは口に合わないかもだ。


 不安なまま見ていると、魔王バチはドライフードをばらまいた地点に集まると食べたみたいだ。


「食べたな」


「魔王バチに食べさせて、牧場に連れて行くの?」


「連れていく。ハチミツが取れるだろ」


「そうねハチミツは甘いもんね。でも針を刺すかもよ」


「刺すの!」


「私がいれば大丈夫。魔王バチは本来は静かです。ただ攻撃すると怒りだすから、注意が必要になる」


「怒りだすと刺すのかい?」


「そうね、たぶん話では死んだ勇者は攻撃したのかもね。勇者が魔王バチの性質を知らなかったのでしょう」


「あっさり勇者を殺しちゃうのかよ」


 魔王バチはドライフードを食べてくれたが、こっちが攻撃しなければいいみたいだ。


 全部で20匹はいるかな。


 日本でこの大きさのハチが20匹いたらパニック状態は確実だ。


 消防署や役所に通報レベルの事態であろう。


 ドライフードを少し食べたみたいで、俺の方を向いている。


 これは俺を主人と見ていると思っていいのだろう。


 ハチミツはパンに塗ると美味しいし、料理にも使えるから、重宝する。


 牧場で生産したら最高に面白いな。


 まだハチミツの味は試せないが、今後の楽しみが増えた感じ。


「魔王バチ、俺と一緒に牧場に来てくれ」


 20匹の魔王バチを引き連れて牧場へと帰った。

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