第52話 『052 塩と胡椒』

『052 塩と胡椒』


 冒険者が町に帰るので、オガーナとエルフ族5人、蜘蛛族10人、山猫も10匹を集めて、お別れを。


 また来て欲しいから、全力で手を振る。


 すると俺達の挨拶にお返しで冒険者も手を振る。


 手を振りつつも、急ぎ足で去って行ったのは、よほど忙しいのと思える。


 きっと魔物を討伐したりするのだろう。


 大変だな冒険者は、命がけで魔物と戦いを求められ、報酬を得ている。


 それに比べると俺は牧場でペットフードを出しているだけだから、楽に思える。


 俺ももっと頑張るかなと、刺激される。


 牧場を拡大して広げていこう。


 森でも有名な牧場へとしたい。


 みんなに冒険者からの贈り物を知らせた。


 スパイスであるから、料理の時に使うと、格段に美味しさは増すよな。


 町は森から近くにあるらしいが、俺が行くのもありかもな。


「森の近くの町ですか。ユウタが行きたければ行けなくもない」


「そうか、一度は行ってみたいものだな」


「みんなで行きたいですね」


「塩と胡椒を使います。イノシシの肉に使えます」


「うん、楽しみだな」


「料理はオガーナの出番よ」


「私に任せな。塩と胡椒は森にもあるかもな。人族の方が詳しいな。いろんなスパイスがあるけど、人族は料理にこだわる。スパイスを使い、味を変えるのが好きだ」


「なぜ人族はそんなに料理の味に必死になるのかしらね。不思議な種族です」


「エルフ族だって料理はするだろう。村でもしていたのよね?」


「エルフ村では料理はします。しかし人族ほどに料理の種類はない。人族は異常なくらいに料理に手間とお金をかけますのは有名な話」


「ユウタも人族なので、料理の味に厳しいのかもね」


「俺は食べるのは美味しい方がいい。味を変えるスパイスは欲しかったところだった」


 その日の料理には、オガーナが塩と胡椒を使いメガイノシシの料理になった。


 肉だけでも美味しかったが、どうなるか期待が高まる。


 みんながスパイスした肉を口に入れる。


「いつもと違います! 塩と胡椒でこんなにも味に変化があるなんて」


「うん、美味しい!」


「オガーナは天才です!」


「オガーナの料理は美味しい。スパイスがあるとさらに美味しいな」


 塩と胡椒で断然美味しい料理になったのは、みんなの反応を見ればわかる。


 これも人族のおかげであるから、またお礼の贈り物を必要になるな。


 早く来てくれないかな。


 贅沢を言えば、味噌やしょうゆや砂糖も欲しいか。


 しかし味噌やしょうゆは日本でしか難しいかな。


 発酵もさせるので、発酵するのは異世界で望むのは酷か。


 それでも美味しく食べたし、満足のご飯だった。


 あっという間に料理はなくなる。










 それから森に出かける。


 野菜の収穫も必要になるから、俺もエルと探すのに同行する。


 肉だけでなく野菜も必要です。


 栄養のバランスもあるし、サラダも欲しいところ。


 トマトもあったし、森には色々と野菜もありそうだ。


「綺麗な花がある。ユウタ見て」


「何の花かな。綺麗だな」


「ここらへんは花が多いのです」


 花がある。


 雑草が多い森にも花はあるようだ。


 見ているだけでも楽しめそうな花。


 しかしゆっくりしていると、


「ハチだ! ハチがいるよ」


「ミツバチではない。違いますね、あれはハチでも普通のハチじゃない」


「普通のハチじゃないなら、危険ねハチかい!」


 俺はハチが大の苦手。


 日本ではハチを見ると怖くなる性格だった。


 そこは異世界に転生してきても同じで、ハチは嫌です。


「まさか、あれは、いやそんなはずはないか」


「どうしたエル、このハチは何者なんだ?」


「もしかしたら、魔王バチです」


「魔王バチ。凄い名前だな。逃げよう。俺はハチは苦手だ」


 ただでさえハチは嫌いなのに、魔王のハチとかヤバいだろう。


 しかも俺達の存在がバレたから、攻撃してくる可能性もある。


 ハチの数は俺達よりも多いし、不利な場面になるので、逃げるのが得策だよな。


 新鮮な野菜どころではなくなった。


 自分の身の危険が危ないなか、エルでさえ不安ね顔になるのほ珍しい。


 エルがこんなに危機感を持つのはほとんどないことから、この魔王バチのヤバさが伝わった。

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