第3話 『003 ペットフードを出す』

『003 ペットフードを出す』


 俺がペットフードと言ったら、いきなり空間から出てきた。


「出たぞ! やった! まんまじゃんか!」


 コンビニで売っているまんま。


 袋に入ったドライフード。


 袋に入ったジャーキー。


 缶詰め。


 3種類が出てきた。


 ペットフードのスキルの使い方は、今ので把握した。


 俺がペットフードと発すれば、実物が空間から飛び出してくるのだ。


 どういう仕組みなのかは、深く考えないのが異世界転生では重要と聞く。


 考え出しても、俺にはわからないからな。


 それよりもこの安そうなペットフードが食えるかが問題となる。


「さすがに食欲はないよな」


 いくら食料がないとはいえ、食べる食欲がわかないのは、生きてきて誰でも思うだろう。


 しかし贅沢が言える状況じゃない。


 今の俺の置かれた状況を理解して、生き抜くので食べることにした。


「ジャーキーなら食えそうだな。普通に干し肉、食えるな!」


 ドライフードのカリカリしたのよりも、ジャーキーを選んだ。


 サラミとか、お酒のおつまみとかで売っているのを食べたことがあるのに、似ていて食べられる。


 ジャーキーがあれば、何とか食欲は満たせそうだ。


 とりあえず飢え死にはしのげそうか。


「なんだ?! 魔物か!」


 ジャーキーを食べて安心していると、草むらから音がした。


 俺しかいないと思っていた。


 異世界の森なので、俺しかいないわけない。


 むしろ俺は魔物の餌じゃないか!


「魔物だ! イノシシみたいな姿をしている! 無理だろ、俺が勝てるはずない!」


 シノシシに似た魔物が一匹。


 草むらから出てきて、俺と対面した。


 ここが動物園ならば楽しいが、異世界の森であるわけで、楽しみはゼロ。


 確実に俺は食い殺されると思った。


 戦うか逃げるかの2択。


 逃げるのが正しいよな。


 そもそも都会暮らしの俺に魔物と戦える体力も格闘経験もないからな。


 逃げます!


 あ、足が動かない!


 ビビって足が動かないで、逃げれない。


 シノシシの魔物が突進してくる。


 だめだ、逃げれない!


 もう無理だ!


 ここで終わるのか、俺の転生生活は。


 転生してほんの数十分だった。


 あっけない人生だったなと。


 戦うしかないか、でも武器もない。


 ユニークスキルのペットフードは何も役には立たなかったか。


 でもドライフードのフードがある。


 餌だと思って食べてくれればいいが。


「ペットフードだ! 食べてくれ!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る