第37話 街への侵入①

 森から街へと進むアッシュ・リードたちの進軍は、次第に変化を見せ始めていた。森の深部を抜け、次第に広がる道筋には、様々な人々が行き交うようになっていた。ハンターたちとの遭遇は頻繁になり、装備を整えた一団は険しい表情でこちらを一瞥し、無言のままその場を去っていく。彼らが共和国軍を信用していないことは一目瞭然だった。


「彼ら、協力する気はないみたいですね…」元老院の兵士の一人が眉をひそめながらつぶやく。


「帝国に雇われてる連中だろうな。俺たちとは目的が違う、警戒して当然だ。」エリックが冷静に応じた。彼の視線は森の奥、街の方向へと向けられていた。


 アッシュもまた、黙って周囲の動向を観察していた。街に近づくにつれて、人々の活動が活発になり、彼らの目的が次第に明確になっていく。次に出会ったのは、ハンターほど装備の整っていない、一般市民のような一団だった。彼らは見た目こそ無骨だが、戦闘スキルを持っており、魔石をいくつか手に入れている様子だった。


 アッシュは彼らに近づき、穏やかな口調で話しかけた。「お疲れさまです。街へ向かっているのですか?」


 その一団のリーダーらしき男が答えた。「ああ、そうだ。魔石のノルマを達成したところだ。そちらは…?」


「共和国の者です。街の様子を知りたいのですが、何か教えていただけませんか?」アッシュは礼儀正しく尋ねた。


 男は一瞬躊躇し、その後、ため息をついて語り始めた。「街は結界で守られている。外部からの侵入はほぼ不可能だ。それに、帝国の兵士が街の周囲を見張っている。だから、慎重に行動しろよ。」


「なるほど、助かります。こちらの仲間になっていただけませんか?この状況では、共に行動する方が得策だと思いますが…」アッシュが提案すると、男は少し考え込んだ。


「俺たちは戦いには慣れているが…共和国のために命を張るつもりはない。だが、街の守りについては協力しよう。」男はそう答え、アッシュたちと協力する意志を示した。


「ありがとう。それだけでも十分だ。」アッシュは微笑み、彼らと協力体制を築くことに成功した。


 街が見えるところまで進むと、アッシュたちは一度足を止めた。遠くに見える街の壁は堅牢で、その周囲には帝国の見張りがちらほらと配置されている。アッシュは慎重に雑魚兵を送り出し、街の結界に挑ませた。


「結界に触れたらどうなるか…試してみよう。」アッシュが静かに指示を出し、雑魚兵たちは慎重に街に向かって歩き始めた。結界が見えない壁のように立ちはだかり、雑魚兵が触れた瞬間、強烈な力で跳ね返された。


「くそ、結界か…」エリックが悔しげに唇をかんだ。


 その瞬間、帝国兵の見張りが雑魚兵に気づき、素早く弓を引いた。次の瞬間、雑魚兵が街に侵入しようとしたところを攻撃され、瞬時に消滅した。


「雑魚兵がやられた…見つかったか?」アッシュが焦りを隠せないまま呟いた。


 エリックは即座に弓を引き、鋭い矢を放った。その矢は的確に帝国兵の喉元を貫き、敵は即死した。雑魚兵の消失を見られる前に、見張りを片付けることができた。


「危なかったな。」エリックが矢をしまいながら言った。


「結界をどうにかしなければ、街への侵入は不可能だ。」アッシュは冷静に状況を分析しつつ、次の手を考えていた。


「街の住民に協力を頼むか…それとも、何か他に方法があるはずだ。」元老院の軍の一人が提案した。


「まずは情報を集めよう。ここで無駄に戦力を削るわけにはいかない。」アッシュが指示を出し、彼らは再び慎重に街への侵入方法を探ることにした。


 街を見張りつつ、次なる行動を模索するアッシュ・リードたち。結界という強固な防御を突破するには、さらに知恵と協力が必要だった。


あとがき

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