策士の召喚師

第23話 協力の要請

　村の広場はまだ朝の静けさに包まれていた。村人たちは日常の仕事に取り掛かり、活気が溢れている。市場では新鮮な野菜や肉が売買され、子供たちは元気に遊び、大人たちは作業に忙しい。しかし、この朝はいつもとは少し違っていた。行商人がもたらした情報に基づき、村は避難の準備を進めていた。

　行商人のカリムは広場の中央で興奮気味に話していた。「帝国軍がこの方向に進軍しているんだ。大急ぎで避難の準備をしないと！」

　村長マルコムは冷静に対応しようと努めながら、村人たちに指示を出していた。「皆、落ち着いて。避難する準備を始めよう。家族ごとに必要な物をまとめて、広場に集まってくれ。」

　村人たちは急いで家に戻り、貴重品や食料、水をまとめ始めた。広場には徐々に人々が集まり、荷物を抱えて不安そうな表情を浮かべている。

「アッシュ、エリック、カナ、君たちは準備が整ったらここに来てくれ。」マルコムは三人に声をかけた。

　アッシュは訓練を中断し、家に急いだ。「お母さん、大丈夫？」

　母親は微笑みながら答えた。「大丈夫よ、アッシュ。君がいてくれるから安心だわ。」

　エリックとカナもそれぞれの家族と共に準備を進め、広場に戻ってきた。

「みんな、集まったな。」マルコムは広場の中央に立ち、大きな声で話し始めた。「帝国軍が近づいているとの情報だ。避難が必要だが、ここに残って防衛する者も必要だ。志願者を募る。」

　数人の若者が一歩前に出て、決意を示した。「俺たちが残って戦います！」

　アッシュもその中にいた。「僕も残ります。村を守るために。」

　マルコムは頷き、「ありがとう、皆。君たちの勇気に感謝する。」と言った。

　広場は緊張感に包まれていたが、同時に団結と希望の兆しも見えた。避難の準備が進む中、アッシュたちは自らの役割を果たすための準備を整えていた。

　突然、広場に埃を上げながら早馬が駆け込んできた。村人たちは驚き、注目する。馬から降りた使者は汗をぬぐいながら村長マルコムに駆け寄った。

「マルコム村長、緊急の伝言です。」使者の声は焦燥感に満ちていた。

　マルコムは緊張した面持ちで使者を迎え、「何があったのですか？」と尋ねた。

　使者は深呼吸してから話し始めた。「元老院の指示です。精鋭部隊が向かいますが、村の協力が必要です。」

　マルコムは村人たちに向き直り、状況を説明した。「皆、帝国の侵攻が迫っています。元老院からの助けが来ますが、我々も協力しなければなりません。」

　村人たちは不安そうな表情を浮かべながらも、団結して対策を考え始めた。

　使者はふとアッシュたちが狩った魔物から取り出した魔石に目を留めた。「これは…素晴らしい魔石だ。君たちの実力は評価に値する。」

　アッシュが謙遜して答えた。「ありがとうございます。でも、まだまだです。」

　使者はさらにアッシュの召喚した雑魚兵を見て、最初はがっかりした表情を浮かべたが、雑魚兵の数が増えていくにつれ驚きと期待の表情に変わった。

「君の能力は…非常に有用だ。」使者はそう言って微笑んだ。

　使者はアッシュに向かって言った。「アッシュ、君の雑魚兵の数は驚異的だ。これを利用して、周囲の偵察を行ってほしい。」

　アッシュは力強く頷いた。「はい、わかりました。すぐに手配します。」

　村人たちはアッシュの決断を聞き、安心と期待の表情を浮かべた。

　アッシュはすぐに偵察の準備を進めた。雑魚兵を召喚し、それぞれに偵察の指示を出す。

「皆、慎重に行動してくれ。」アッシュは雑魚兵たちに声をかけた。

　カナは幻影魔法で村の周囲を隠し、偵察の安全を確保する。「これで敵には見えないはず。」

　エリックは村の防御策を強化し、万が一の侵入に備えた。「これで大丈夫だ。」

　アッシュの雑魚兵たちは迅速に各方向に散らばり、偵察を開始した。村人たちは偵察部隊を見送り、成功を祈った。

「無事に戻って来いよ。」エリックがつぶやいた。

　カナは手を振りながら見送った。「気をつけてね。」

　一方、帝国軍の野営地では、兵士たちが奇妙な報告を受けていた。帝国の指揮官は部下からの報告を聞いている。

「敵の偵察兵を発見しましたが、死体が見つかりません。まるで消えたかのようです。」

　指揮官は眉をひそめた。「何かおかしい。彼らは何か特殊な手段を持っているのかもしれない。」

　部下が提案した。「警戒を強化し、さらに偵察を行うべきです。」

　指揮官は考えた後、決断した。「いや、迅速に敵陣をたたく準備を進めよう。彼らに時間を与えるわけにはいかない。」

　帝国軍は急ピッチで攻撃の準備を進めた。

　村全体が緊張感に包まれていた。村人たちは防御策を強化し、戦闘に備えた。

　マルコムは村の若者たちに訓練を指導し、士気を高めた。「皆、しっかりと訓練を受けて準備を整えてくれ。」

　アッシュはエリックとカナと共に戦術を練り、次の行動を考えた。「敵の動きを予測して、こちらの防御を強化しよう。」

　偵察から戻った雑魚兵たちが情報を報告した。アッシュはその情報を元に、村の防御策を再度見直した。

「敵の進軍ルートが分かった。これを元に防御策を強化しよう。」アッシュは指示を出した。

　村人たちは新たな情報を元に、迅速に対応策を実行した。アッシュの雑魚兵たちは、やられることでアッシュにフィードバックを送り、敵の位置を正確に把握していた。しかし、その動きを悟った帝国軍もまた、村に対する警戒を強化し、迅速に攻撃の準備を進めていた。

　村の運命がかかったこの戦い、アッシュたちは果たして村を守ることができるのだろうか。次の一手が、すべてを決定する。

あとがき

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