殺し屋サポート始めました
なんやかんやありながらも家に帰ってきた。今日はとても濃い一日だった。
「転校生が来たり、その子が殺し屋だったりと……」
はあ……色々ありすぎて流石に疲れた。今日は早めに寝よう。玄関を開けると水色の髪を揺らしながらこちらにトテトテと走ってくる女の子がいた。
「お兄さんこんばんは〜!!」
「……なんでお前がここにいるんだよ」
「隣にお兄さんの家があるからだよ」
「その理論だと隣が俺の家じゃなくてもどこでも侵入しているってことになるぞ」
「そんなことしないよ!? お兄さんがいるお家にしか侵入……じゃなかった、お邪魔しないよ」
ガッツリと俺の家に侵入してきたのは主人公くんの妹である
葛城家の人々は全員容姿が整っており、雫もその恩恵をしっかりと受け継いでいる。
「それよりもなんか用か? 俺今日は疲れてるから寝たいんだけど……」
「とっても大事なことだよ!! 今日はお兄さんのお義母さんから頼まれているからね!!」
母さんという漢字が違う気がするが気にしたら負けだと思うので無視して、聞き返す。
「頼まれたこと?」
「うん、なんかまたどっかに行ったらしいよ。だから、お兄さんの未来の妻であるこの私がお兄さんのお世話をするの!」
「……またかよ」
また、と言えるのはこれまでに母さんが俺に何も伝えず外国に行く自由人だ。そのため、俺は家事が絶望的にできなく野垂れ死んでしまうので、幼馴染である雫に毎回母さんがお願いしているのだ。
「私はしばらくここに住むからよろしくね!」
「……はあ」
「ひっどーいッ!! こんな可愛い子と同棲できるっていうのに何が不満なのッ!?」
さて、ここで雫の残念ポイントを教えてあげよう。まず、一つ目が一緒に寝ないと駄々をこねるということだ。美少女と一緒に寝れるなら良いじゃんと思う人もいると思うが……雫は絶望的に寝相が悪い。朝起きるとヘッドシザースをされていたりと、まあひどいのだ。
という点でこいつと同棲はしたくない。他の残念ポイントはまた後で紹介しよう。
「とりあえず俺寝るから」
「じゃあ、私も〜……」
「一人で寝ろ」
「え――っ……一緒に寝たいのに……」
「お前寝相悪いからやだ」
俺がそう言うと雫はほっぺを膨らませて不機嫌になる。怒っている顔も可愛いので絵になるのだが、この状態の雫もまた面倒なのである。
「じゃあ、夜中に突入しちゃうもん!!」
「やめて?」
雫は堂々と夜中に侵入することを宣言した。
雫の性格は有言実行型なので言ったことは必ずやるのだ。今日はドアの前に机を置いて入ってこられないようにしないと……
そろそろ俺の疲れが限界に達しそうなので雫を無視して階段を登り、自分の部屋に入った。
「じゃあ、お休み」
「あ、待ってよ〜!」
色々とあった一日は終わりを迎える。
☆
と思っていました……
横から昼間に聞いた嫌な声で俺は目を覚ました。薄っすらと目を開けて横を見るとそこには黒い装束をまとった忍者みたいな人がいた。その忍者こそ自分を殺し屋だと言っていた大和さんであった。風が部屋の中に入ってきているので、窓から侵入したようだった。
「品川くん」
俺が起きたことに気づいた大和さんは真剣な顔をして俺の名前を呼ぶ。その顔を見てなんか面倒なことが起きる予感がした。なので、俺は布団を顔のところにまでかけて、寝るふりをし、適当な寝言みたいなことをつぶやく。
「……3.14159265359……」
「君なんで円周率言ってるの……??」
「……大和?」
「そうだよ、私だよ」
「大和……朝廷……?」
「品川くんふざけてる?」
「………ぐぅ」
声からして大和さんは少しイライラしている様子だった。そんな状態で俺が起きたら理不尽なこと言われそうなので、寝るフリを続ける。
すると横からゴソゴソと何かを取り出す音が聞こえた。そして……
「あ、手が滑った」
耳のすぐ近くでドスっっという何かが思いっきり地面に刺さる音がした。
「ごめんね〜? 起きないと……次は……」
不穏な声が聞こえてきたので本能的に起き上がる。大和さんの方を見るとすっごい笑顔だったが、目が笑っていなかった。
「……こんばんは、大和さん」
「うん、こんばんは。さて、品川くんには正体を知られた以上サポートしてもらうよ!」
俺はサポートするという約束はしていないと思っていたが、彼女はそう思っていない様子でふんす、とやる気満々である。
「俺断った気がするんだけど?」
「……胸を触らせたらやるって言ったよね?」
「………あれは冗談のつもりだったんだが」
「わ、私は覚悟はできてるよ、ほらっ!」
そう言ってお胸を俺の方に突き出してくる。なんだか昼間見たスイカよりも小さくなってりんごくらいの大きさになった気がする。パットでも入れていたのだろうか?
「……言っといてあれだけど、触らないぞ」
「そっ、そう……だけど、サポートはしてもらうよ!!」
「……それで? サポートって何すればいいの?」
ふっふっふ……ともったいぶるように笑う大和さん。そんな茶番はどうでもいいから早く内容を教えてほしい。こっちは
「言わないんならもう寝るけど?」
「ちょ、ちょっと待ってよ! 葛城くんの家に侵入して情報を引き出してきてほしいの!」
「情報って言ったって……なんの情報?」
「葛城くんの好きな食べ物……とか?」
そんなの本人に聞けや。その任務にとってその情報はさほど重要じゃねえだろ。とは大和さんには言えず……
「そんくらい俺が教えるよ……それ以外では?」
「特にないと思う……」
そこはもっと任務にとって重要な情報を質問しに来いよ。なんだよ、好きな食べ物教えろって初めての合コンか? まあ、俺は合コン行ったことないからそんなこと言うのか知らないけどな。
大和さんは教えてもらえると思ってワクワクしていたので主人公くんの好きな食べ物を教えた、それ以外にも誕生日とかもわからなかったらしくそれについても教えた。本当にターゲットを狙っている殺し屋なのかと疑ってしまう。
彼女は昼間のメモ帳を取り出し好きな食べ物、嫌いな食べ物、誕生日などをメモしている。
「それメモしてどうするんだ?」
「情報収集は大事ですよ? この情報は任務をする上では必要なことですからね」
「どこらへんが必要なの?」
好きな食べ物を用意しておき、その中に毒でもいれるのかな?
「……なんか奢ってくれそうじゃないですか」
「お前、見た目に反して中身は最低だな」
「そ、そんなことないよ!! 二人っきりになれる時間があるので、殺しやすいかなって!!」
つい雫を相手するように大和さんをお前って言っちゃったけど、大丈夫かな……
あっ、と何かを思い出したような大和さん。
「そういえば、今更なんだけど、私のことはさきりんって呼んでね」
「わかった、咲さん」
この人初対面(一応話したことはある人ではあるが)でニックネームで呼ばせるのは陽キャ過ぎる。
そして、俺がニックネームではなく普通に呼んだことに不満を抱いている様子の咲。
「さきりんっていってるじゃん、さん付けなんてしなくていいのに」
「今日会ったばかりの人にニックネームで呼ばせるのはちょっと違くない?」
「そうかな? じゃあ、私は品川くんのことをしなっちゃんって呼ぶからね!」
この殺し
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