正体がバレた殺し屋さん

HRが終わり大和さんの周りには人が集まった。その中には男子が多く、彼女とお近づきになりたいと下心を持った奴らである。彼らは大和さんにデレデレしており、誰でも下心を持っていることがわかるほどだ。


「大和さん、ちょっと……」

「葛城くんはどんな部活に入っているんですか?」

「俺は特に何も入ってないな」

「どうしてですか?」

「どうしてって言われてもな……京介と遊ぶためだからだ」


男子その1が大和さんに話しかけるも大和さんの目には主人公くんしか写っていない。どんまい男子その1、イケメンに美少女取られるととっても悲しくなるよな。まあ、俺はそんな経験ないけど。


「京介……って、品川くんのことですか? 彼とはどのような関係ですか?」

「……幼馴染だよ」

「へー、そうなんですね!」


主人公くんは気づいていないが、俺は見てしまった。


大和さんが主人公くんには見えないように机の下でメモ帳に超スピードで何かを書いていることに……!! きっと彼女は主人公くんのストーカーか何かなのだろう。罪な男である主人公くんはそんなこと気づかず大和さんと楽しくおしゃべりしている。


「品川くん……で良いんですよね?」

「なんすか」


次に大和さんは主人公くんから俺に対象を変えて話しかけてきた。


「葛城くんと一緒に帰っていたりしますか?」

「……いつも一緒に帰っているけどそれが?」

「あ……えっと、もしよろしければ、私も一緒に帰ってもいいですか?」

「俺は全然大丈夫だが……あっ!」

「きゅ、急に大きな声をだしてどうしたんですかっ!?」


もしかしてこれは……俺と帰ることで主人公くんともっと仲良くなって、最後には主人公くん宅に侵入を企てているのではないのだろうか!? 絶対面白くなりそうだから隠れて二人のことを見ていたいっ!!

というわけで……


「今日は俺は用事があるからしゅじん……じゃなかった、葛城と大和さん二人で帰れば?」

「えっ!!?」


用事なんてものないが、嘘をつき一緒に帰れないことを二人に伝えると主人公くんはかなり驚いていた。


「なんで……っ!?」

「うん、あとお前は友達が少ないからもう一人くらい居たほうが良いだろ?」

「俺はお前だけで………はぁ、用事なら仕方ないよな、大和さん」

「は、はい!!」

「今日一緒に帰ろうか」


主人公くんが大和さんに一緒に帰ることを伝えると頬を赤くしてとびっきりの笑顔で答えた。その後ろで俺はニヤニヤしていた。

今日の楽しみが増えたからか、今日の授業はなぜかやる気が湧き、いつもよりも時間が進むのが早かった。その間でも主人公くんと大和さんは交流を深めていた。


そして念願の放課後になり、俺は急いでバックに教科書やらを詰め込み、席から立ち上がり、バックを肩にかける。


「じゃ、俺は帰るわ。二人仲良くな」

「……おう、じゃあな」

「さようなら、品川くん」


俺は主人公くんと大和さんと別れを告げて教室から出る。出た瞬間、全力ダッシュで昇降口に向かい、素早く靴を履き替える。周りの人からは『何だアイツ』みたいな目で見られたがそんなこと気にしない。外に出て、正門近くの茂みに隠れながら二人が出てくるを待つ。10分くらいしてようやく二人は現れた。


「それで京介は……」


どうやら俺の話をしているようだった。大和さんも何故か俺についての話に食いついているようだった。

なるべく俺の話をするのはやめてほしい、次にストーカーするときに俺が狙われそうだから……


二人は正門を出て右に曲がった。そういえば、大和さんの家は俺と主人公くんの家の近くにあるって主人公くんが言ってたっけ……

朝に主人公くんから教えてもらったことを思い出していると気づいた。


「なんか俺、ストーカーみたいだな……」


朝に大和さんはストーカーかもしれないと考えていたが、今では俺のほうがストーカーみたいではないか。


二人の様子を観察するも特に変化もなく段々と主人公くんの家が近くなってくる。二人は相変わらず俺の話をしているので俺は段々と飽きてきた。しかし、帰ろうかと思った時に大和さんがアクションを起こす。


大和さんが主人公くんが見えないようにカバンから何かを取り出している。だが、様子しかわからないので何を出しているのかがわからない……そんなときには、なぜかバックに入っていた双眼鏡を使うことにした。


俺も何故か双眼鏡が鞄の中に入っていることはなぜか知っていた。どうしてだろうね。まあそんなことはどうでもいい。

双眼鏡を使って大和さんが何を取り出そうとしているのかを見てみると……


「うん……? なんか銀色に光っている?」


銀色の物、それは切ることに特化した物であるナイフだった。


まさか本当に大和さんがストーカーだったとは……!! しかも、ヤバい系の。もしここで見捨てて主人公くんに何か起こったとしたらその後何か嫌なことが起きる予感がした。

俺は電柱から飛び出し、主人公くんを呼ぶ。


「葛城っ!!」

「……ん? 品川、どうしてここに? それよりも用事は??」

「そんなことはどうでもいいんだ、それよりも……っ!!」

「っ!?」


主人公くんはなぜここに俺がいるのかがわかっていないようだったそれもそうだろう、さっき用事があると言ってた俺が出てきたのだ。

そして問題の大和さんの方を睨むように見ると俺の視線に気づいたようでナイフを慌ててカバンにしまっていた。


「ごめん、ちょっと大和さんに用事があって、良いかな?」

「わ、私に……っ!!?」


俺は危険人物である大和さんの腕を掴み、主人公くんから引き離した。そして、主人公くんに話を聞かれないように角の方に連れていき彼女に質問尋問する。


「大和さん、どうしてナイフを!? もしかして君は……!!」

「そう……気づいてしまったようね、そう私は……」


「ストーカーだったとは!!」

「殺し屋だってことを!!」


「「ん?」」


俺は大和さんが何を言ったのか理解ができなかった。大和さんも理由がわからず、俺と同じくポカーンと口を開けている。

こ、殺し屋? え? 殺し屋ってなんだっけ、助けてGoo◯le!!


『すみません、よくわかりません』


クソっ! 使えないなこいつ!! 

俺はスマホを地面に叩きつけるように投げる。そうこうしている内に大和さんが正気に戻り、俺の方を見る。俺を見る目は人に向けてはいけない殺人の目をしている。


「品川くん……だよね??」

「は、はい、品川ですッ!!」


ああ……俺はここで秘密を知ったことで彼女にナイフで刺されて死ぬのか……まだやり残したことがたくさんあるのに、ここで死ぬのか……


「お願い! どうかこのことは葛城くんには秘密にしてほしいの!!」

「……ほぇ?」


とりあえず話を聞くことになった。



「……ということなの」

「へー」


長かったので簡潔に説明すると今まで訓練はしてきたのだが今回が初めての仕事だったのでスパッと主人公くんを殺すことができなかったということらしい。


「ちなみに依頼人とかって知ってるの?」

「それは……わからないんです。仕事内容を伝えられただけで高校に転校させられて」

「とりあえず、俺はどうなるの?」

「秘密を知られたので抹消されると思います」


わーお、俺死ぬんか。


「あ、でも、私のサポートをしてくれば多分抹消されないと思います」


サポートをすれば、殺されずに済むという。一般人なら美少女である彼女のサポートができると知ったらすぐに了承すると思う。だけど……


「嫌そうな顔していますね……」

「だってな……友達を殺すことに協力するのは気が引ける」

「……じゃあ、どうしたら手伝ってくれますか?」


大和さんはどうしたら手伝ってくれるという問を俺に投げかけた。俺は少し考えてみる。さっきから主人公くんを殺すのは駄目という謎の考えが俺に警告を出していたが、殺さないようにすればいいだけの話なので俺は適当に答えた。


「なんかしてくれるなら良いよ」

「そのなんかというのは……??」


女の子、しかも美少女にさせるものといえば……俺は主人公くんが言っていたことを思い出し口に出した。


「じゃあ、胸を揉ませてくれ」

「っっ!!!?? む、胸!!?」


俺がそう言うと大和さんは動揺し顔を赤らめて自分の身を抱きしめた。ちなみに大和さんの胸は結構デカく、手の間から溢れており、それはもう……とっても『良き』だと思います。


まあ俺も高校生だから性について興味あるからこんなこと頼んでもおかしなことないよね。

これで諦めてくれるだろうと思い、そんな冗談を言ってみたり……


「まあ、冗談……」

「わ、わかりましたッ!!」

「え」


今日会ったばかりの人に胸を揉ませるなんて……この子、実は痴女とかそっち系なのかな?


こうして俺と殺し大和咲のよくわからない関係は始まったのだ。

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